中国と欧州の貿易摩擦がエスカレート:高まり続ける中国依存
中国の貿易黒字が初めて1兆ドルに達する

2009年以来世界最大の輸出国となっている中国は、2025年に新たなマイルストーンを達成した。中国税関が発表し、仏紙『レゼコー(Les Échos)』が報じたところによると、2025年1~11月の貿易黒字は1兆800億ドルに達したという。
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欧州向け輸出の増加

中国は、「トランプ関税」により米国市場への輸出がむずかしくなったことから、高い購買力がある4億5,000万人からなる欧州市場に大量の製品を送り始めた。前出のメディアによれば、11月の中国のEU向け輸出は前年同月比15%増となった一方、米国向けは29%減少したという。
欧州の対中赤字は3,000億ユーロ

欧州の2024年対中貿易赤字は3,000億ユーロに達した。欧州委員会によれば、EUの対中貿易赤字は2015年以降で取引量で4倍、取引額で2倍という大幅な増加を記録している。
品質が向上する中国製品

欧米諸国向けに安価なTシャツを大量生産する「世界の工場」という旧来のイメージとは異なり、中国の産業は急速に高付加価値化し、質の高い製品を輸出できるようになっている。
先端技術製品の輸出が増加

オランダの銀行INGは、中国の先端技術製品輸出は11月に6.6%の増加を記録し、全製品の平均を上回ったと指摘。半導体や自動車など、一部の分野では2桁成長も見られる。
高まる中国依存

さらに、欧州は技術製品の製造に不可欠な原材料(希土類、ゲルマニウム、リチウム)の輸入についても中国依存を高めていると、仏放送局「France 24」は指摘する。
中国によるレアアースの輸出制限

中国政府は今年、電気自動車ののモーターに不可欠な永久磁石(レアアースマグネット)の輸出規制を行い、各取引国はその大きな影響を受けることになった。
脆弱性が露呈するEU

さらに、原材料としての永久磁石だけではなくこうした高性能の磁石が0.1%以上含まれる完成品の取引についても、中国政府の承認が必要とされた。この結果、一部の自動車工場がほぼ停止状態に陥ったとフランスのテレビ局が指摘している。
技術移転で立場が逆転

中国は長年、西側諸国からの技術移転によりでレベルを上げてきており、いまや立場は逆転しつつある。昨年上海に開設されたルノーのイノベーションセンター、アンペア中国開発センター(Ampere China Development Center)はその最たる例だ。
中国人技術者を引き抜く

仏紙『ル・モンド』によれば、仏政府が15%出資するルノーは中国市場でほかの現地自動車メーカーから約150人の技術者を引き抜き、欧州で製造されるEVの設計を学ばせているという。
自動車産業の未来

「最高のイノベーターたちと緊密に連携し、謙虚に学び、強固なパートナーシップを築くことは、選択肢ではなく必要不可欠なことです。私たちは自動車産業の未来が形作られる場所にいるのです」と、ルノーの最高技術責任者(CTO)フィリップ・ブルネ氏は語る。
「いまや中国の方が先進国」

フランス公共投資銀行総裁ニコラ・デュフォルク氏も同様の見解を示している。AFP通信に対し、「なにもかもが逆転した。我々は新興国であり、あちらが先進国なのです」と語り、中国企業が欧州に投資する際には、合弁事業(外国企業と地元企業の提携)や技術移転を行うという、かつて欧州が中国で採った体制の踏襲を求めている。
欧州で進む産業の空洞化

エマニュエル・マクロン仏大統領は最近の中国訪問を通じ、「欧州にとって最大のリスクは脱工業化の加速であり、生産力を維持する必要があります。一方がつねに生産者で、他方が消費者であり続けることはできません」と『レゼコー』紙に語った。
欧州原材料センターの設立

フランス24によれば、中国依存を減らすため、欧州委員会は欧州原材料センターの設立を発表した。これは日本からヒントを得たもので、メーカーからのニーズを監視し、共同購入の調整を行い、原材料の戦略的備蓄を行うことを目指している。
その他の防衛策

欧州委員会は重要原材料の採掘、精製、リサイクルに向けた欧州プロジェクトへの資金拡充も計画している。その一方で、メーカーに対しては供給先の多様化を求めた。
中国側に配慮を求めるマクロン大統領

さらに、欧州諸国は中国製電気自動車の輸入に課税することで、対中国の巨額貿易赤字の是正を試みてきた。フランスのマクロン大統領は訪中を通じ、消費側に配慮した経済モデルへの転換が行わなければ追加関税も辞さないとの構えを示した。
分断される欧州

中国との貿易摩擦が高まる中、欧州は一枚岩になれるのだろうか。『レゼコー』によれば、ハンガリーを始めとする東欧諸国や、イタリア、スペイン、ギリシャといった南欧諸国は、中国製品に対して比較的柔軟な姿勢を示している。
カギを握るドイツ

こうした中、鍵を握るのはドイツといえるだろう。世界有数の輸出国で、中国のパートナーであり競争相手でもあるドイツもまた、かねて対中貿易赤字が高水準で推移している。これを受けて、EUの対中通商政策が見直される可能性が高まっている。