33歳「龍一くん」の頭を9歳下の「璃来ちゃん」がなでる…ペア結成に導いたコーチ、フリーは「魔法のようだった」

 日本のスケート史に輝く金字塔を打ち立てた。フィギュアスケートのペアで、日本勢初のメダルとなる「金」を獲得した三浦 璃来(りく) (24)と木原龍一(33)両選手。結成7年目で相性抜群の「りくりゅう」ペアが、世界の頂点に上り詰めた。(塚本康平)

フリーの演技を終え、抱きあう三浦璃来、木原龍一組(16日)=星皓昭撮影

 フリーの演技を終えると、2人はリンク上にひざまずいて抱き合った。会場のスタンディングオベーションを浴びながら、木原選手は泣き、三浦選手がその頭を優しくなでた。2人で手を握り、緊張の面持ちで結果を待つ。モニターに映し出された数字は、フリー世界歴代最高得点の158・13点。前日のショートプログラム(SP)との合計点を231・24点に伸ばし、再び抱擁を交わした。

6年前の夏、愛知で運命的な出会い

 全ては、運命的な出会いから始まった。2019年夏、愛知県内のアイスリンク。それぞれ次のペア相手を考えていた時期に、世界的指導者のブルーノ・マルコットさんから「2人を組ませてみたい」と打診があった。

 滑り始めてすぐ、2人は驚いた。声をかけずともスピード感が合う。木原選手が三浦選手を頭上に投げ上げると、滞空時間、高さとも申し分なく、クルクルと回転してきれいに技が決まった。三浦選手を受け止めた木原選手は、今までペアを組んできた人との高さの違いに、雷に打たれたような衝撃を受けたという。

金メダルを獲得した三浦璃来、木原龍一組のフリーの演技(16日)=星皓昭撮影

 手応えを感じ取ったのは2人だけではなかった。滑りを見たマルコットさんは興奮を隠さずにこう言った。

 「君たちなら世界で戦える」

 幼少期に三浦選手を指導し、その場に立ち会っていた元五輪選手の本田武史さん(44)は「ものすごい高さだった。ブルーノはすぐに『この組で決定だ』と確信していた」と振り返る。

 ペアを結成した2人は、マルコットさんが拠点とするカナダに渡った。2人では初出場となった22年北京五輪は日本勢過去最高の7位に入り、団体戦初の「銀」にも貢献。翌22~23年シーズンはグランプリファイナルと四大陸選手権、世界選手権で、いずれも日本史上初の優勝を果たし、「年間グランドスラム」に輝いた。2人の歩みは、そのまま日本ペアの歴史になった。

試合前にはゲームで気持ち盛り上げ

 ただ、ミラノ・コルティナ五輪に向けて全てが順調だったわけではない。23~24年シーズン以降は、木原選手の腰椎分離症や三浦選手の肩の脱臼などの故障が相次ぎ、欠場した大会も多かった。それでも「お互いを支え合う経験をして、それも大きな成長になった」(木原選手)と力に変えた。

金メダルを獲得し、笑顔を見せる三浦璃来、木原龍一組(16日、伊ミラノ郊外で)=上甲鉄撮影

 2人は9歳の年齢差があるが、敬語は使わず、互いに「龍一くん」「璃来ちゃん」と呼び合う。試合前には「マリオカート」や「桃太郎電鉄」などのゲームで対戦しながら気分を盛り上げていくのが、「りくりゅう流」だ。

 ある大会後のインタビューでゲームが話題に上り、木原選手が「璃来ちゃんが勝てるように、うまいこと調節してたよ」と打ち明けると、三浦選手は「負け惜しみだ!」と反論。2人の絆は漫才のような掛け合いにも表れていた。

SP5位も三浦「まだ終わってない」

 今大会のSPは、ミスが出てまさかの5位に沈んだ。眠れぬ夜を過ごし、朝から涙が止まらない木原選手に、三浦選手が「まだ終わってない。積み重ねてきたものがあるから絶対できる」と伝えた。気持ちを切り替えて臨んだフリーでは完璧な演技を見せた。その演技に感極まったマルコットさんは「彼らは心を込めて滑った。本当につながりが感じられて、魔法のようだった」とたたえた。

 最終組の演技が終わり、大逆転での金メダルを決めた2人は、静かに泣いた。表彰台の真ん中に立った木原選手は「璃来ちゃんとじゃなければ成し遂げられなかった」と感謝し、三浦選手も「自分で言うのも何ですけど、最高のチームだなと思います」と笑った。