トランプ大統領の一般教書演説、ノーベル賞経済学者とビジネスリーダーの反応は?

ドナルド・トランプ大統領は、史上最長となった一般教書演説で、関税の強化や物価の引き下げ、そして新しい退職金貯蓄制度の創設を自画自賛した。
- トランプ大統領は、2026年2月24日に行われた一般教書演説で、関税、インフレ、そしてAIのエネルギーコストの問題について述べた。
- 経済学者やビジネスリーダーたちの間では、インフレや関税に関するトランプ大統領の主張を巡って意見が分かれている。
- ビル・アックマンは、トランプの退職金貯蓄案を支持したが、ポール・クルーグマンはこの演説を「誤解を招くもの」だと指摘している。
ドナルド・トランプ(Donald Trump)大統領は2026年2月24日、連邦議会で一般教書演説を行った。これは、アメリカの歴史上で最も長い一般教書演説となった。
2時間にわたって行われたこの演説は、新しい政策の内容には乏しかったが、関税、消費者物価の引き下げ、移民問題といった馴染みのあるテーマを重視するものだった。
トランプ大統領はまた、AI(人工知能)のデータセンターが公共料金を押し上げる可能性があると言及し、テック企業は自社が必要とする電力を自ら賄うべきだと述べた。
トランプ大統領が何を語り、そして何を語らなかったのかについて、経済学者やビジネスリーダーたちがどう述べているのか、その反応を紹介しよう。
ノーベル賞経済学者、ポール・クルーグマン

ポール・クルーグマン。
ポール・クルーグマン(Paul Krugman)はトランプ大統領の一般教書演説を、「歴史的に長く、歪曲に満ちたもの」と位置付けた。また、「多くの世帯がいまだに生活費の負担を感じているにもかかわらず、トランプ大統領は過度に楽観的な状況を描こうとした」と述べた。
クルーグマンは、「類を見ない一般教書演説」とタイトルをつけたサブスタック(Substack)への投稿で、この演説のことを「真実はほとんどなく、時間はとても長い」と説明した。
彼は、「国民の間に広がる悲観論の根源である物価高騰の問題にトランプ大統領は真正面から向き合っていない」と批判した。それどころか、物価上昇の圧力をさらに強めることになる関税政策を、トランプが「一段と強化」する姿勢を見せたと指摘している。
クルーグマンは、「アメリカ国民を退屈な演説で屈服させて従わせることで、世論を好転させる計画だったのだろうか」と問いかけている。
ユーラシア・グループ社長、イアン・ブレマー

イアン・ブレマー。
イアン・ブレマー(Ian Bremmer)は政策的な新しさよりも議場の雰囲気に焦点を当て、国家の分極化が以前よりも強まっていると強調した。
「完全に分断された議場は、完全に分断されたアメリカを映し出している」とイアン・ブレマーはXに投稿した。
その内容に何か新しいものがあったかと問われたブレマーは、「斬新さがあるかと言えば、ほとんどない。状況が悪化しているかと言えば、まったくその通りだ」と述べた。
パーシング・スクエア創設者、ビル・アックマン

ビル・アックマン。
ビル・アックマン(Bill Ackman)はトランプ大統領の一般教書演説の中の「退職金貯蓄案」を称賛した。この案は連邦政府による公務員や軍人向けの確定拠出年金「スリフト・セービング・プラン(Thrift Savings Plan)」をモデルとしており、政府が年間最大1000ドル(約15万5000円)を上限に拠出額を上乗せする(マッチング拠出)。アックマンはこれをトランプ大統領の演説の中で最も重要な政策の一つだと指摘した。
アックマンは、働くアメリカ人のうち4600万人が401k(確定拠出年金)や企業年金などの退職を準備する手段を持っていないと指摘した。もし「マッチング拠出」が導入されれば、家計の資産形成を後押しでき、将来的には国民が生活保護などの公的扶助に頼らなくて済むようになるという。
アックマンは、このマッチング拠出の拡大が、党派を超えて合意を得られる稀な成功事例になると予測した。彼は「これはアメリカにとって素晴らしい取り組みだ」と記している。
ユーロ・パシフィック・アセット・マネジメント チーフエコノミスト、ペーター・シフ

ピーター・シフ。
ピーター・シフ(Peter Schiff)は、トランプ大統領の就任1年目のインフレ抑制実績について、前大統領のジョー・バイデン(Joe Biden)と比較し、「大きな違いはない」と述べた。さらに、今後は物価上昇がさらに悪化する可能性があると予測している
「大統領は代わったかもしれないが、インフレの状況は変わっていない」とシフはXに投稿した。トランプ大統領の就任1年目における消費者物価指数(CPI)の上昇率が2.7%であったのに対し、ジョー・バイデン(Joe Biden)の最終年が2.9%であったことをその投稿の中で指摘している。
シフは、トランプ大統領の就任2年目には、消費者物価指数(CPI)が「おそらく3%を超えて上昇するだろう」と述べた。
エバーコア創設者兼シニア・チェアマン、ロジャー・アルトマン

ロジャー・アルトマン。
ロジャー・アルトマン(Roger Altman)は、大統領は「トランプらしさ」を全開にして「ショーを披露した」と表現した。その一方で、「大統領の経済政策の支持率の低さを改善させるような演説ではなかった」との見解を示している。
彼は2月25日のCNBCの番組「Squawk Box」に出演した際、トランプ大統領はアメリカ経済を「絶好調で、これ以上ないほど素晴らしい」と表現したが、多くのアメリカ人、特に低所得世帯が「家計のやりくりに苦労している」ことから、そこには「食い違い」があると述べた。
それでもアルトマンは、ファンダメンタルズについて、楽観的な見方を示している。彼は2.5~2.75%の成長とインフレの鈍化、そしてインフレがFRBの2%目標に近づくにつれて実質賃金が上昇すると予測した。
貿易に関しては「関税が今後も継続される可能性がある」と警鐘を鳴らし、税収があまりに巨額であるため、与野党のどちらにとっても、それを手放すことは「困難」だとの考えを示した。