チームみらい、なぜ躍進?有権者の心をつかんだのは、消費減税反対の独自路線と安野氏のあるメッセージ

候補者の当選が決まり喜ぶチームみらいの安野貴博党首=2026年2月8日、東京都港区

 先の衆院選で11人が当選した「チームみらい」。初議席を得た昨年の参院選に続き急伸した理由は何か。一つは、各党がこぞって訴えた消費税減税に唯一反対したことだ。消費税減税を掲げた他の政党を無責任と感じた有権者の心をがっちりつかんだ。安野貴博党首(35)は消費税減税を超党派で議論する「国民会議」への参加を前向きに検討しており、批判一辺倒でない姿勢はさらに存在感を高める可能性がある。安野氏が選挙期間中に繰り返し発信したあるメッセージも支持獲得の一助となった。その中身とは―。(共同通信=恩田信吾、川嶋大介、高木亜紗恵、

赤羽柚美)

国会に初登院したチームみらいの古川あおい氏=18日午前8時20分

 ▽AIエンジニア出身、小説家の顔も

 「いよいよ国会が始まるということでわくわくしている。今日から議員バッジを着けて仕事ができる。いただいた身分の重さをしっかりかみしめて仕事をしていきたい」。特別国会が召集された18日、初当選したみらいの古川あおい氏(34)=比例九州=は議事堂を背に笑顔でこう語った。巨大与党とどう対峙するかとの質問には「もともと他の党とも協力できることはしていくという立場でやっている。自民党さんとも協力できることはし、違うと思うところは議論していく」と強調した。

 元IT会社役員の峰島侑也氏(35)=比例東京=も「おのおのの政策について是々非々で臨んでいきたい」と抱負を語った。

 党首の安野氏はもともと人工知能(AI)エンジニアだった。小説家の顔も持ち、SF作品を出版したこともある。石丸伸二氏や蓮舫氏も出馬した2024年の東京都知事選に無所属で立候補し、得票5位と健闘したことで注目されるようになった。昨年5月にみらいを設立し、直後の参院選で比例代表の1議席を得て安野氏が初当選。得票率で政党要件を満たした。テクノロジーを使って政治の透明化や民意の反映を進める「デジタル民主主義」が政策の柱だ。

 安野氏は参院選後に早速、国会のデジタルトランスフォーメーション(DX)推進などを議論する超党派の勉強会を発足させ、代表に就任。政治資金の収支が項目ごとに一目で分かるツールを開発し、他党の議員も利用できるようにした。

東京都知事選に立候補した安野貴博氏と「AI候補者」の画面=2024年6月、東京都中央区

 ▽自民・中道は「無責任」、地方の演説でも声援

 衆院選では、消費税率は維持し社会保険料を引き下げると主張。子どもの数に応じた子育て減税、AIや自動運転といった成長産業への投資、デジタルを活用した政治資金の透明化を公約に掲げた。

 立候補した14人は東大卒など高学歴が多く、エンジニアやコンサルタントといった経歴が目立つ。最大の特徴は若さで「平均年齢は30代」とアピールした。

 衆院選の街頭演説では30~40代の聴衆が目立った。東京都世田谷区の男性会社員(33)は、自民や中道改革連合が掲げた消費税減税について「助かるが、財源には限りがある」と苦言。手取りを増やすには社会保険料の引き下げを優先すべきだとするみらいの主張を「明確で、説明も丁寧だった」と振り返った。

 30代の娘がいる札幌市の主婦(59)も、消費税減税を公約に掲げた自民、中道を「財源をどうするの、と思う。無責任だ」と一刀両断。高齢者医療の窓口負担を引き上げると率直に語った安野氏の姿勢を高く評価した。

 地方での演説にも現役世代が多く駆け付けた。

 飲食店を営む鹿児島市の男性(29)は「消費税ゼロはありがたいが、将来のことを考えるとゼロという政党は信用できない」とばっさり。結党から日が浅く「未知数だが、スピード感があるし、地方にも目を向けている。こうした党にかけてみたいと思う」と語った。公務員の30代女性は「民間に比べて行政はアナログで遅れを感じる。チームみらいの新しい価値観に共感する」と話した。名古屋市のJR名古屋駅前での演説にも若者を中心に約200人が集まり「チームみらい頑張れ」などの声援が飛んだ。

多くの有権者が集まったチームみらいの街頭演説=2月2日、名古屋市

 ▽ぎすぎすした雰囲気に疲れた人が支持

 安野氏が選挙戦で繰り返し訴えたのが「相手をおとしめない。分断をあおらない」というフレーズだ。このメッセージが受けた。「日本人ファースト」を旗印に参院選で議席を大きく増やした参政党とは対照的で、東京都八王子市の会社員の女性(48)は「極端な主張が増え、社会がぎすぎすしている。その雰囲気に疲れた人たちの支持が集まっていると感じる」と感想を語った。

 都知事選以来、安野氏の「推し活」をしているという東京都江東区の40代男性会社員は「個別の政策にはあまり興味はなく、分断をあおらないという大きな方針に魅力を感じている」と話した。

 意思決定や資金の流れを全てオープンにするとのポリシーを支持する声も。一家でみらいを応援しているという世田谷区の主婦(43)は、自民の派閥裏金事件などを踏まえ「政治活動や政策議論の透明性が高まれば有権者の不満も減るし、みんなで解決策を考えることもできる」と語った。

国会に初登院するチームみらいの衆院議員=18日午前8時12分

 ▽鍵は地方、首長ポストで実績残せ

 初めて挑んだ衆院選で11議席を獲得。自民以外が埋没する中、存在感を示した。

 投開票日の夜、東京都内に設けた開票センターで結果を見守った安野氏は躍進の要因を「消費税減税は必要ないと思っている人もいる。その受け皿になった側面もある」と分析した。参院選で国政政党になったことによる知名度向上も挙げ「1人政党から脱皮して本当のチームとして活動ができることがうれしい。引き続き注目していただきたい」と力を込めた。

 さらなる党勢拡大に向けて必要なものは何か―。関西大の坂本治也教授(政治学)は、党首がエンジニア出身という真新しさに有権者は魅力を感じているとしつつ「デジタル政策は高齢層には分かりにくい。現状では支持は都市部が中心で、年齢層も偏っている」と指摘。より幅広い支持を集めるには「首長ポストを獲得し、実際に行政サービスの効率化を進めるなど実績を重ねていくことが欠かせない」と述べた。