「鉄道部門は5000万円超の赤字」――かつて東証二部上場の西武系私鉄、100周年で利用増も続く単体赤字と夜間24分間隔への見直しの行方
開業100周年と収支改善の現状
伊豆箱根鉄道(静岡県三島市)の大雄山線は2025年10月に開業100周年を迎えた。同社は西武ホールディングス傘下の非上場企業だが、公式サイトで金融商品取引法に基づく有価証券報告書や半期報告書(2024年3月期までは四半期報告書)を公表している。2026年2月14日時点の最新資料は、2025年4月1日から9月30日までの中間期に関する半期報告書だ。
【画像】「えぇぇぇぇぇ!」 これが36年前の「三島駅」です!(8枚)
同報告書によれば、この中間期における鉄道事業の営業収益は13億3150万円で、前年同期比1.1%増となった。営業損益は、収益の増加に加えて費用の見直しを進めたことにより前年同期より改善したが、5167万円の営業損失だった。前年同期の営業損失は5649万円であり、赤字幅は縮小している。
定期利用については、駿豆線・大雄山線ともに沿線人口の減少が続くなか、通勤・通学利用者数は前年同期とほぼ同水準にとどまった。
定期外利用では、大雄山線の開業100周年を記念し、地域企業と連携したラッピング車両を運行するなど利用促進策を展開した。その結果、大雄山線の利用者数は前年同期を上回った。一方、駿豆線では2024年12月に始めたクレジットカードなどのタッチ決済による乗車サービスの利用は堅調だったが、定期外利用者数全体では前年同期を下回った。
2025年4月1日から2026年3月31日までの通期実績は現時点では明らかでない。ただし半期ベースでは、大雄山線で開業100周年にともなう需要押し上げの動きが数字に表れた形となっている。
二路線体制と事業多角化の歩み

大雄山線の終点・大雄山駅(画像:菅原康晴)
伊豆箱根鉄道は、静岡県で三島~修善寺間19.8kmを結ぶ駿豆線と、神奈川県で小田原~大雄山間9.6kmを結ぶ大雄山線の2路線を運営するほか、バス、タクシー、レジャー・不動産事業を展開する地域企業である。両路線はもともと別会社として発足したが、いずれも戦前に箱根土地(現西武グループ)の傘下に入り合併した。1961(昭和36)年から2004(平成16)年までは東証二部に上場していた。
駿豆線は沿線に伊豆長岡温泉や修善寺温泉を抱え、国鉄時代から直通特急が乗り入れてきたこともあり、観光路線としての色合いが強い。一方の大雄山線は、大雄山最乗寺への参詣路線として開業した経緯を持つが、沿線には工場が多く、日常の移動を支える路線としての性格が濃い。
半期報告書によると、当中間期の連結営業収益は52億7038万円、営業利益は4億1631万円だった。鉄道事業は営業損失を計上しているが、バス、タクシー、レジャー・不動産の各事業が補い、連結では黒字を確保している。
有価証券報告書によれば、2025年3月期の通期連結営業収益は102億1042万円、営業利益は5億1310万円となった。2021年3月期から2023年3月期まではコロナ禍の影響で赤字が続いたが、2024年3月期以降は黒字に転じている。足元でも黒字基調は維持しているものの、鉄道の赤字を他事業で補う収益構造は変わっていない。
増収を支えた決済拡充と運賃改定

大雄山線の車内(画像:菅原康晴)
鉄道事業はなお赤字が続くが、改善の動きも出ている。
2025年3月期の通期では、2024年12月から駿豆線全駅でクレジットカードやデビットカードのタッチ決済による乗車サービスを開始した。あわせて各種企画乗車券の発売や、沿線自治体や企業・団体と連携したイベント開催に取り組み、利用促進を図った。その結果、駿豆線・大雄山線ともに利用者数は前期を上回った。さらに大雄山線では、2024年3月の運賃改定が寄与し、売上高は大きく伸びた。鉄道事業の営業収益は26億4105万円で、前期比6.5%増となった。
一方で営業損益は、人件費や運転動力費などの増加が重く、費用抑制に取り組んだものの、2億3611万円の営業損失を計上した。
売上は増えたが、収益を圧迫しているのはコストの増加である。
そこで注目されるのが、最新の半期報告書と2025年3月期の有価証券報告書の双方に記載された
「不要不急コストの削減に努めた」
との説明だ。2025年3月期は、営業面での取り組みと運賃改定が増収につながったとの整理になっている。一方、直近の半期報告書では、増収に加え、不要不急コストの削減が増益要因とされている。収益改善の背景として、売上の伸びと費用圧縮の双方を挙げる構図だ。
減便によるコスト圧縮の実態

大雄山線の起点・小田原駅(画像:菅原康晴)
では、最新の半期報告書にある「不要不急コストの削減に努めた」とは何を指すのか。
中心となるのは運転本数の削減である。
同社は2025年3月のダイヤ改正で、駿豆線・大雄山線ともに利用状況に合わせた運行本数の見直しを実施した。大雄山線では土休日ダイヤも新設している。
駿豆線では、平日の19時から最終列車までで8本を減便した。土休日は基本的に平日と同じ時刻体系としつつ、6時から9時までで10本を減らした。
大雄山線では、平日の9時から21時までを15分間隔、21時から最終までは24分間隔に改め、16本を減便した。新設した土休日ダイヤでは、始発から20時までを15分間隔、20時から最終までは24分間隔とし、26本を減らしている。
全体としては、夜間や利用の少ない時間帯、土休日を中心に本数を絞った内容だ。
本数の削減は人件費や運転動力費の圧縮につながる。人手不足が続くなかでの対応という側面もある。
もっとも、15分間隔や24分間隔は、地方路線としてはなお一定の本数を維持している水準だ。これが30分間隔や1時間間隔まで縮小すれば、利用者離れを招く可能性が高い。2025年3月の改正は、利用者にとって大きな不便とまではいえない範囲に収めた形だ。
ただし、収益改善の主な要因が運賃改定と減便にあるとすれば、持続性には課題が残る。これまで取り組んできた利用促進策の積み重ねが、今後の収支にどう反映されるかが問われる。