金融株に信用不安の影、2000年代後半の危機想起ー中東より問題との声

(ブルームバーグ): 米国とイスラエルによるイランへの軍事攻撃を機に、グローバル株式が混乱に陥る中で最も深刻な打撃を受けた一つが日本の金融株だ。景気の先行き不安に加え、ファンドが企業に直接融資するプライベートクレジット市場を巡る懸念が投資家に2000年代後半の世界金融危機の再来を想起させている。

  イランへの攻撃が開始された2月28日以降、日本株市場の業種別下落率で上位に並ぶのが銀行業や証券・商品先物取引業などの金融セクター。直近4営業日で銀行は8%、証券は11%下げ、東証株価指数(TOPIX)の下落率6%よりも大きい。

  金融セクターは、日本経済のデフレ脱却や日本銀行の利上げ観測を背景に、半導体関連や商社株と共に23年以降の日本株の上昇をけん引してきた。しかし、足元では中東リスクの高まりもあり、早期の追加利上げに懐疑的な見方が浮上。さらに、海外でプライベートクレジット市場を巡る懸念も台頭し、金融株の急失速を招いている。

  リブラ・インベストメンツの佐久間康郎代表は、イランでの軍事衝突以上に「金融面での不安の方が市場にとってより本質的な問題の可能性がある」と警鐘を鳴らす。

  英住宅金融会社マーケット・フィナンシャル・ソリューションズ(MFS)は2月下旬、金融不正疑惑の中で破綻した。既に三井住友フィナンシャルグループが約210億円、英バークレイズが1050億円など国内外の大手金融機関がMFS向けのエクスポージャーを抱えていることが明らかになっている。

プライベートクレジット懸念が金融株に打撃 | 主要東証業種別株価指数の下落率

  昨年9月に米自動車部品ファースト・ブランズ・グループが破綻した際にも、子会社を通じたエクスポージャーに関連し、日本で農林中央金庫や三井物産系列のJA三井リースが損失を計上した経緯がある。

  ピクテ・ジャパンの大槻奈那シニアフェローによると、「市場が気にしているのはこうした事例が次々と出てくるのかどうかだ」という。

  プライベートクレジット市場は日本を含む世界の投資家から資金が流入し、ここ数年で急拡大してきたものの、最近は一転して資金引き揚げの動きが出始めている。背景には、人工知能(AI)の進化が既存のビジネスモデルを陳腐化し、ソフトウエアなどの企業の債務不履行(デフォルト)率が高まることへの警戒感がある。

プライベートクレジット懸念が米資産運用会社株に圧力

  07ー08年にかけての世界的な金融危機を知る市場関係者の間では、当時と現状の姿を重ね合わせる向きもある。

  住宅バブルが崩壊した米国でサブプライムローンと呼ばれる低所得者向け住宅ローン債権の損失が膨らみ、07年に米大手証券のベアー・スターンズが運営するヘッジファンドが破綻。仏大手銀行のBNPパリバが傘下のファンドを凍結したことでショックが拡大し、最終的に米大手投資銀行のリーマン・ブラザーズの破綻を招き、世界の株式も大きく売り込まれた。

  リブラの佐久間代表は、現時点で最終的な姿を見通すことはできないが、「リーマンショック前のサブプライム危機の初期を想起する市場関係者もいるだろう」と指摘。株価が高値圏にあることを考えれば、「激しい売りが出てもやむを得ない」と警戒感を隠さない。

  足元のプライベートクレジット市場には07ー08年当時のような緊迫感はまだなく、デフレやマイナス金利の状況を脱した日本経済や金融機関の経営環境も、当時と比べれば決して悪くない。

2007-08年金融危機と株価

  とはいえ、グローバル金融機関が関与するローン市場でいったん疑心暗鬼が強まると、加速度的に信用不安が増幅していくのは約20年前にも見た光景だ。さらに直近では、米国・イスラエルとイランの軍事衝突という極めて不確実性の高いリスクも加わった。

  松井証券の窪田朋一郎シニアマーケットアナリストは「プライベートクレジット市場は相対的に高い利回りを提供するとの前提で資金を集めてきた」と指摘。しかし、原油価格の高騰を受けて金利が上昇すれば、「長い目で見て、プライベートクレジット市場への追加的な圧力となりかねない」と懸念を示している。

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