モンベル「1万円台ランドセル」ラン活市場に一石

2025年モデルから3サイズで展開する, 一般的なランドセルより数百グラム軽い, きっかけは立山町長の依頼から, 徳島県鳴門市も申請者には無償配布, 高額なランドセルの良さも, ランドセルの再活用も

モンベル 品川店に置かれた「わんパック」(筆者撮影)

来年4月に入学する小学1年生向けのランドセル商戦がスタートしている。

【写真を見る】「わんパック」は色とりどり3サイズを展開している

「ラン活」という言葉が定着したように、各家庭がランドセル購入を検討する時期は早まった。平均購入価格も年々高くなり、最新の調査結果では6万円を超えてきた(「ランドセル購入に関する調査2025年」一般社団法人日本鞄協会ランドセル工業会調べ)。

そうした高騰化した流れに一石を投じたのが、アウトドア用品のモンベルが販売する “リュック型ランドセル”だ(一般商品名は「わんパック」)。価格は1万円台と安価で、自治体がまとめて購入するケースも増えた。

発売して4年後の状況はどうか? モンベルの広報担当とまとめ買いをする自治体の責任者に取材した。

2025年モデルから3サイズで展開する

まずはモンベルに現在の販売状況を聞いてみた。

「『わんパック』は、全国のモンベルストア(直営店)とオンラインショップで販売しています。2024年(2025年モデル)からサイズ展開が3種類に増えました。

それまでは容量14リットルだけでしたが、15リットルと16リットルを追加し、現在『わんパック14』『わんパック15』『わんパック16』の3サイズで展開しています」

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赤は「わんパック14」、茶は「同15」、青は「同16」のサイズ。各色14~16サイズがある(筆者撮影)

広報部の宮畑周平氏はこう説明する。

容量を増やしたラインナップを加えた理由は何か。

「お子さんの成長や、中に入れる荷物の増加や大型化もありますが、理由はさまざまです。例えば『給食袋を外付けではなく安全面から中に入れたい』という声もありました。外付け用のフックではなく中に入れる場合は、その分、荷物幅を取るようになります」(宮畑氏)

当初は「わんパック14」が1万4850円(税込、以下同)だった。現在は同商品が1万6000円。「わんパック15」は1万7000円、「わんパック16」が1万8000円だ。

「原材料の高騰もあり、少し価格改定をさせていただきました。当社はビジネスコンセプトに『いいモノを安く、親切に提供する』を掲げており、その姿勢は変わりません」

一般には大人用のイメージが強いモンベルだが、実は子ども用商品も多いという。

「ほぼすべての商品で子ども用があります。アウトドアを始めるきっかけは、大人に連れられて行くことが多いため、大人用と同等の品質にこだわり、中には寝袋もあります」

一般的なランドセルより数百グラム軽い

商品特徴は同社の公式サイトでも紹介している。例えば「ワンアクション開閉」(テープを持って引くだけ)や「PC・タブレット用ポケット」「反射テープ」(2カ所)、「背面パッド」(荷物の背中への当たりをやわらげる)といった機能だ。実際に持ってみると軽い。

2025年モデルから3サイズで展開する, 一般的なランドセルより数百グラム軽い, きっかけは立山町長の依頼から, 徳島県鳴門市も申請者には無償配布, 高額なランドセルの良さも, ランドセルの再活用も

このように引いて開ける(筆者撮影)

「重量は『わんパック14』が約930グラムで、『わんパック16』が約960グラムです。どちらも一般的なランドセルよりも数百グラムは軽いと思います。中に入れる荷物の重さやお子さんの身体への負担を考え、バッグ本体はできるだけ軽くしています」

モデル身長は「わんパック14」が120センチ、「同16」では155センチとなっている。

個人差はあるが、小学1年から小学6年にかけて、平均して約30センチ身長が伸びるといわれ、体型も変わってくる。サイズ違いはそうした利用者(小学生)の変化に対応した結果もある。最近は別の使い方をするケースも増えた。

「塾に行く際のセカンドバッグとして利用されることも多いようです。みなさん、それぞれの使い方をされています」

塾や習い事に通う小学生も多く、学校以外の場所でも使われるようだ。

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「わんパック14」を背負った子ども①(写真:モンベル)

きっかけは立山町長の依頼から

そもそも「リュック型ランドセル」の開発は、どんな経緯で始まったのか。

「富山県立山町の舟橋貴之町長に商品開発の依頼を受けたのです。当社は2017年10月から立山町と包括連携協定(自治体が抱える多様な課題の解決に向けて連携し、包括的かつ継続的に取り組む協定)を結んでいます。

2020年12月、ランドセルの高額化と重さの問題を懸念した舟橋町長から、当社代表の辰野(モンベル創業者の辰野勇会長)に『安価で軽くて丈夫な通学カバンを作れないか』と話があり、これに辰野が応じて試作開発がスタートしました」

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「わんパック14」を背負った子ども②(写真:モンベル)

その後、同町は「1個1万円(税込)以下」「耐久性・防水性の確保」「軽量化」などの厳しい条件を示し、地方自治体としての客観性を担保するため「公募」を実施した。

設定条件の厳しさもあったのか、公募に応じたのはモンベルだけだった。審査を経て委託先として選定。同社商品が納入された(直販なので価格は店舗販売とは異なる)。

包括連携協定を結んだ立山町は、日本を代表する山岳エリア「立山黒部アルペンルート」の玄関口でもある。アウトドア用品メーカーとして特別な存在だったのか。

「当社は全国各地に地域との交流を行うフレンドエリアやフレンドタウンがあり、立山町もその1つです。ご要望が『わんパック』商品開発に結実し、当社が掲げる7つのミッションのうち、『子どもたちが生き抜いていく力の育成』にも沿う活動となりました」

同町が購入し、2023年度以降の新1年生で希望する家庭に無償配布されている。各自で購入した通常のランドセルで通学もできるが、モンベル製リュックを選ぶ家庭は多い。

徳島県鳴門市も申請者には無償配布

「モンベル製リュック」を導入する自治体も増えてきた。そのひとつが徳島県鳴門市だ。

鳴門市では令和5(2023)年度から始まった(2024年4月入学の児童が対象)。近年の新入学児童数は300人強(男女比はほぼ変わらない)だという。どんな取り組みなのか。

「『新1年生ランドセル無償化』は、令和4年度から本市が展開している『なるとまるごと子育て応援パッケージ事業』の1つとして開始したものです」

同市の川上久美子課長(鳴門市 こども未来創造部 子育て支援課)はこう話す。

「導入の経緯は、ランドセルの高価格化、教科書や教材の大型化、またタブレットの携帯など、持ち運ぶ荷物の重さがありました。『現物支給ではなく購入補助がいいのでは』という声もありましたが、検討の末、より軽量なリュックサックの現物支給としたのです」(川上氏)

現在、3年目の支給(2026年4月入学の児童が対象)を行っており、前年度の申請率は93.8%という高さだ。反響はどうなのか。

「『雨の日や学校行事の日などランドセルと使い分けている』(ランドセルとリュックサックの併用が可能なため)、『物価高騰の中、家計が大変助かる。浮いた費用で他の学用品を揃えられる』『子どもも気に入って使用している』などの意見がありました」

これ以外に保護者からの意見では「軽量で低学年の児童にとって背負いやすい」「ランドセルより密着が少ないため、夏場は涼しくて快適」という声がある一方、「チャックが開けづらい」「黄色い安全カバーを取り付けられない」という改善を求める声もあった。

ちなみに色は、青(ブルーグリーン)・茶(ブラウン)・赤(ワインレッド)の3色から選べるが、一番人気は茶(ブラウン)だという。

高額なランドセルの良さも

モンベルと自治体の事例を紹介したが、「ランドセル製作」「消費者意識」にも触れたい。

筆者が最初に子ども用ランドセルを取材したのは8年前の2018年で、あるメディアに「7万円ランドセルの価値」という記事を書いた。

当時も今も高額なランドセルは、熟練職人の手による工房系ブランドが中心だ。実際に作業風景を見せてもらったこともあるが、細かい手作業工程が多い。近年は原材料となる本革だけでなく芯材や金具などの素材コストの上昇もあり、物流費も高騰している。

そうした状況も反映した価格だが、中には6年間の修理保証をつけるなどサービスも充実させる。昨年もランドセルの展示会場を見たが、児童も保護者も真剣に検討していた。

2018年の取材でも「ラン活」に触れていたので紹介したい。「10年ほど前まで(2008年頃)、ランドセルの購買需要は入学3カ月前の年明けから動き出すのが普通でした。2013年頃から前年の8月頃に早まり、現在は入学1年前の4月からとなっています。それに合わせて製作スケジュールを前倒ししているのです」という説明だった。

少子化で児童数が減る中、新入学の機会にお気に入りのランドセルを買ってあげたいという保護者(主に両親や双方の祖父母)の思いもあり、児童本人の希望もある。メーカーもそうした需要に合わせて取り組んでいるのだ。

2025年モデルから3サイズで展開する, 一般的なランドセルより数百グラム軽い, きっかけは立山町長の依頼から, 徳島県鳴門市も申請者には無償配布, 高額なランドセルの良さも, ランドセルの再活用も

工房系ブランドのランドセル(2018年、筆者撮影)

ランドセルの再活用も

だが、両親や双方の祖父母が揃う家庭ばかりではない。近年はシングルマザーの子育て世帯も多く、もともとランドセル文化になじみがない外国人の世帯も増えた。

こうした実情に対応した事例もあり、例えば鳥取県で地域密着サービスに取り組む会社は、自治体と連携して2020年から「ランドセルの再活用」を2025年まで行った。

子どもが卒業して使わなくなった「家庭に眠るランドセル」を回収し、必要としている人に渡して使ってもらう取り組みだ。スタッフがメンテナンスをし、寄贈者からのメッセージタグも付けて配布していた。

自治体の取り組みも企業の取り組みも「社会課題の解決」を目指したものだ。

「導入前は『ランドセル以外のリュックを背負う子どもが何か言われるのでは』という懸念の声も上がりましたが、現在、そうした声は聞こえてきません」(モンベルの宮畑氏)

小学校入学での必需品には体操服や上履き、文房具などもある。通学用のバッグに何を持つかを選べるのなら「ランドセル機能を備えたバッグ」は多様化時代の選択肢のひとつだろう。