「プレイングマネジャー」に居場所はありません。Googleが嫌う、部下の成長を止める上司の特徴

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Googleで「圧倒的な成果」を実現させる行動力の後押しとは?Google日本法人の現場で長年マネジメントに携わってきた著者陣が、マネジャーがメンバーに対して行う手法の数々を提言する。※本稿は、元Googleマネジャーの中谷公三、諸橋峰雄、水野ジュンイチロ『Googleで学んだ 圧倒的成果を出し続けるマネジャーの最優先事項』(ディスカヴァー・トゥエンティワン)の一部を抜粋・編集したものです。

非常識な2桁成長を

求められる職場

 Googleにおける「圧倒的な成果」とは、具体的に何でしょうか?

 それは、常識の範囲をはるかに上回るような成果、これまでの延長線上にない成果を出すことです。たとえば、これまで5%だった売上成長率を20%にすることや、革新的サービスを一から立ち上げて大きなシェアを獲得することなどです。

 私が統括していたチームでも、市場が飽和するなか、常に2桁成長を求められていました。

 Googleで働いていると、社員は常にこうした規模の大きな成果を求められます。

 果たして、そんな成果を本当に現実のものにできるのでしょうか?

 これまでの積み重ねや計画的な行動だけでは、このレベルの成果を出すことはまず不可能でしょう。図2のように「連続的成長」にとどまってしまいます。「爆発的な成長」を実現するために、Googleの社内では戦略的に「自由なチャレンジを促す仕組み」を整え、「失敗を許す文化」を根づかせています。

 社内ではリスクを取りやすく、社員は常に失敗を恐れずに野心的な目標を掲げ、とにかく「まずやってみる」姿勢が高く評価されます。

 チームのそうした行動を後押しする原動力となっているのが「マネジャー」の存在です。

 そして、「圧倒的な成果を出す」ためには、マネジャーの存在が必要なのです。

同書より転載

「コピー人材」を生み出しやすい

時代遅れの「管理型マネジャー」

 みなさんは、「理想のマネジャー」と聞いて、どのような人を思い浮かべますか?

 部下を細かく管理し、目標達成に向けて的確に指示を出し、トラブルがあればすぐに対処してくれる。そんな頼れる管理職像を思い描く人も多いかもしれません。

 これこそが、昔からよくある「管理型マネジャー」の典型です。私は前職でコールセンターの管理業務を担当していた時期があります。当時は管理者として細かく日次や月次で進捗を確認し、数値結果に基づいてメンバーのパフォーマンスを徹底的に効率化することに取り組む日々でした。

 やることが明らかで、あとは実行するだけという仕事であれば、こうしたやり方でも機能するかもしれません。しかし、そのような環境では挑戦する姿勢や新しい発想が生まれにくく、異なる視点や個性はノイズとして扱われます。結果として、考え方も動き方も似たチームになってしまい、状況が変わったときに柔軟に対応できない組織になるリスクがあります。

 また、管理型マネジャーでよくあるのが、現場で自らも手を動かしながら部下をリードする「プレイングマネジャー」のスタイルです。一見理想的に見えますが、実際には自分と同じようなスタイルや考え方を持つ「コピー人材」を生み出しやすいという落とし穴があります。

 その結果、多様な発想や新しい価値観が生まれにくくなり、部下はマネジャーの思考の枠に閉じ込められてしまいます。さらに問題なのは、マネジャー自身が「プレイング」に時間を取られ、チームメンバーを見る余裕を失うことです。

 マネジャーが自分で作業をしてしまうと、確かに「仕事をした」という満足感は得られますが、作業量としては1人分に過ぎません。

 圧倒的成果を出すチームをつくるためには、マネジャーとしてメンバーそれぞれの作業環境を整え、パフォーマンスを引き出すことに最大限のエネルギーを注ぐべきなのです。

 それには、メンバー1人ひとりの思いや考え、行動を深く理解する必要があります。理想的には、マネジャーの仕事の大半が、部下とのコミュニケーションやチームづくりに費やされている状態が望ましいのです。

 管理型マネジメントは、変化が少なく、決まったやり方で成果を上げられた時代には有効でした。しかし、変化のスピードが加速する現代においては、柔軟に変化できる仕組みと体制こそが求められています。

組織や部下が求めているのは

柔軟な対応ができるマネジャー

 組織も部下も求めているのは、今日決めたことがうまくいかなかったら、現場で起きていることをリアルタイムで把握し、必要なアクションを取り、朝令暮改もいとわない――そんな柔軟な対応ができるマネジャーです。

 計画を守ることよりも、変化に対応できる柔軟さこそが組織の存続には不可欠です(図3参照)。だからこそ、マネジャーには「変化を起こし、組織を動かす力」が求められています。(編集部注/エンパワメント型マネジャーとは「指示する存在」ではなく、メンバーとともに議論を重ねながら一緒に進んでいく「伴走者」のような存在を意味する)

同書より転載

 予測不能な状況の中でも、現場で自ら考えて臨機応変に柔軟に動く。こうした柔軟な動きは、環境が整っていればこそ可能になります。たとえば、次のような工夫を続けます。

・1on1ミーティングでメンバーの壁打ち相手をしながら、彼らが1人で悩む時間を減らす

・指示するのではなく、メンバーが自分で言語化し、自分で考えて答えを出せるように問い続ける

・チームミーティングでアクションをクリアにして全員でフォローアップする機会をつくる

・アクションが滞っていたら、誰かがサポートに入るか、アクション自体を見直す

 また、理想のチームをつくるには、マネジャーが細かく指示を出すのではなく、思い切って裁量と責任を渡し、メンバーが主体的・自律的に動けるよう導く必要があります。

 私もこれまで何度も部下に対して、「絶対にやった方がいい」「こうすればうまくいくぞ」とアドバイスをしても、なかなか相手に伝わらず、こちらが思ったようには動かない。そのたびに何度もやきもきしたことがありました。

 考えてみれば当たり前のことです。なぜなら違う人間なのですから。違う人間であればまったく同じように判断はしないし、その人なりの解釈に応じて人は動くものです。

人は任されたときに

はじめて「本気」になる

 結局、経験から学んだことは、人は「任されている」と感じたときにこそ、本気になって物事に真剣に取り組む、ということでした。信頼されていると感じるからこそ、自分たちで考え、挑戦してみようと思えるのです。

 そういう環境だと、自由に新しいアイデアが生まれ、みんなのチャレンジがイノベーションにつながることで、画期的な成果が生まれます。マネジャーの頭では想像できない異なるアイデアが組み合わさっていくことで、組織全体としてアイデアの量と質が増えていくわけです。

 これがマネジャーの枠の範囲で収まらない「チームとしての動き方」であり、1人では成し得ない成果につながります。

 こうして、「自分の言葉で語り、自分の足で動く人たち」が創意工夫することで、圧倒的な成果を生み出すのです。

マネジャーの価値は

管理ではなく環境を整えること

「Empower your team. Don’t micromanage.」

(マイクロマネジメントをせず、チームをエンパワーしなさい)

 これは私がGoogleでマネジャーとして採用されたときに、マネジャー研修で最初に言われた言葉です。「マネジャーが部下の仕事に細かく口を出してはいけない」と、釘を刺されたのです。

 そのとき私は「部下の業務の詳細を管理しないで、どうやってチームを動かせばいいの?」と、かなり戸惑ったことを覚えています。

 正直、「それなら、マネジャーは必要ないんじゃないか」とさえ感じたほどです。

 しかし、その後に知ったのは、「マネジャーの価値は、いかに上手に管理しきるかではなく、チームがいかに力を発揮できる環境を整えられるか」という視点です。

 たとえば、社員が入社してから最初の1カ月を想像してみましょう。

 放置型のマネジャーであれば、必要な書類や情報をメールやチャットで渡して、「見ておいて」で終わり。何度もフォローアップすることもなく、質問があれば答えるだけの「受け身」の姿勢です。これでは新しく入った社員は情報を読むことはできますが、頭を整理することはかなり難しくなります。

 細かい管理型マネジャーであれば、一からチェックリストをつくって、最初から説明していくでしょう。質問も都度できるので、効率的に理解が深まります。しかし、それでも「受け身」の姿勢での情報インプットであることに変わりはありません。これでは積極的に状況を想像し、自分ごととして実際の業務をより素晴らしいものに変えていこうとするインセンティブが失われてしまいます。

戦略やゴールを共有し

「期待値」をクリアに伝える

 Googleでは、マネジャーが最初にビジネス戦略やチームの目標・ゴールだけを共有します。そしてメンバーに対して、「期待値」をあらかじめクリアに伝えます。

 そこから、具体的にどういう行動を取って、どのような成果を出すのかは、メンバー自身が自分で考えなければなりません。

 このとき、マネジャーはメンバーを放置するわけではなく、議論のパートナーとなり、絶えず伴走する存在になるのです。「伴走」という言葉は柔らかく聞こえますが、決してそれは「やさしい応援団」みたいなものではなく、どちらかというと「厳しいコーチ」というイメージの方が近いかもしれません。

『 Googleで学んだ 圧倒的成果を出し続けるマネジャーの最優先事項 』(中谷公三、諸橋峰雄、水野ジュンイチロ ディスカヴァー・トゥエンティワン)

 マネジャーである私自身も、この目標設定の作業に非常に苦労しました。生半可なプランでは、当時の上司は決して納得してくれないからです。「十分に挑戦的な目標」でなくては認められませんし、その目標を達成するのに必要十分と認められる具体的なアクションを設定しなければ納得してもらえないのです。

 慣れるまでは、マネジャーと何度も1on1ミーティングを行い、「何をやるのか」「なぜそのアクションを取れば達成できると言えるのか」と、しつこく壁打ちと議論を繰り返して、アクションプランを言語化していく必要がありました。

 当たり前だと感じて疑問を持たないことや、なんとなく理解したつもりになっていることについて、Googleのマネジャーは容赦なく、突っ込んだ質問をしてきます。曖昧さを残すようなことはありません。

 しかし、こうして徹底的に言語化していくことによって、メンバーの成長の機会を最大化し、ビジネスゴール達成の確率を高めていくことができるのです。