「子どもの反抗期」が30年で激減…変わったのは親だった【データで判明】

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近年、親と仲良しで反抗期を経験しないまま育つ若者が急増しているという。こうした事実からZ世代は気骨のない大人しい世代とも言われるが、30年前のデータと比較すると、変わったのは若者ではなくむしろ親世代という衝撃の事実が浮かび上がる。Z世代の子を持つ家族の実像に迫る。※本稿は博報堂のシンクタンク、博報堂生活総合研究所『Z家族 データが示す「若者と親」の近すぎる関係』(光文社)の一部を抜粋・編集したものです。

親子の価値観のギャップは

ここ30年で一気に埋まった

 かつては、子どもと親世代の間にはっきりとした価値観やライフスタイルの「断絶」がありました。前時代的な古い価値観を持つ親が、「こうしなさい」と押しつける。それに対して子どもは、「大人は何もわかっていない」と反発しながら自分なりの価値観を模索していく。

 極端にいえば、子どもサイドから見ると「大人たちが選ぶものは古くてダサい」、大人サイドから見ると「若いやつらが選ぶものは奇抜ではしたない」という埋めがたい対立構造があったわけです。ところが、今の親子は激しくぶつかり合うことなく平和に仲良く共存しています。

 その背景としておさえておきたいのが、ある時代までは世代や年齢によって分断されていた価値観や嗜好の違いが、目に見えて縮まってきているという現象です。つまり、親子間の「感覚のギャップ」がどんどん小さくなってきているのです。

 私たちはこの現象を、年「齢」が「消」える──「消齢化」と呼んでいます。生活総研が1992年から隔年で実施している「生活定点」の調査結果をもとに説明しましょう。

 1992年~2022年の30年間、聴取を続けている項目のうち、「年代による違いが小さくなっている」項目と「年代による違いが大きくなっている」項目がそれぞれ何項目あるのか比較してみました。

 すると、違いが小さくなった項目は70あるのに対し、違いが大きくなった項目は7つしかなかったのです。2002年~2022年の20年間の継続聴取に条件を緩めると対象となる項目が増えますが、そのなかで年代の違いが小さくなった項目数は172項目にものぼっています。一方、違いが大きくなった項目は27項目に留まり、その差は歴然です。

 具体例を挙げると、「夫婦はどんなことがあっても離婚しない方がいいと思う」「携帯電話やスマホは私の生活になくてはならないものだ」「将来に備えるより現在をエンジョイするタイプだ」などの設問において、かつてあった世代ごとの隔たりが急速に小さくなってきているのです。

「話の分かる」親に

反抗する理由がない

 ちなみに変化の傾向としては、次の3つに分類できます。

(1)各年代の回答率が減少しながら近づくもの(例:「夫婦はどんなことがあっても離婚しない方がいいと思う」「自分たちが年をとったら、子どもと同居したい」など)

(2)各年代の回答率が上昇しながら近づくもの(例:「携帯電話やスマホは私の生活になくてはならないものだ」「女性の上司のもとで働くことに抵抗はない」など)

(3)各年代の回答率が中央に寄っていくもの(例:「将来に備えるより現在をエンジョイするタイプだ」「キャリアアップのためには、会社を替わってもかまわない」など)

 いずれにしても各世代の意識差はどんどん狭くなっており、これは、親子間における価値観やライフスタイルの違いが減ってきていることを意味しています。

「大人が選ぶものは古くてダサい」「若者のカルチャーに入ってきてくれるな」といったかつての若者が抱いていたような感覚は薄れ、考え方の差異による衝突や「分かり合えない感じ」がどんどん少なくなっているのです。

 つまり、反抗期を経験する若者が減少したり、あるにしても軽度になったりした背景には、親が反抗すべき存在ではなくなり、価値観のそんなに変わらない「若者にとって話の分かる」存在になってきた、という事実があるのです。

カルチャーに理解のある

JJ・ポパイ世代の親たち

 では、「親と子でカルチャーが分断されている世代」と「分断されなくなった世代」の分岐点はどこにあるのでしょうか。「生活定点」のデータをより深く分析してみると、「JJ・ポパイ世代」といわれる1952~1960年生まれの人たち以降の世代で、旧来の価値観からの変容が起こっていることが分かりました。この世代は2025年時点で65~73歳に位置します。

 JJ・ポパイ世代は、名前の通り雑誌文化の中で育ち、欧米的で自由な生活スタイルを取り入れた最初の世代です。それまでの日本社会的な全体主義・集団主義ではなく、個人主義的な性格が色濃くなっていく社会変化の影響をダイレクトに受けています。

 大きくいえば、日本人はこのJJ・ポパイ世代を起点として、みんなで新しい時代の「同じ物語」を共有しているのです。

 さらに、団塊ジュニア(1971~74年生まれ)などZ世代の親にあたる世代はいわゆる「ファミコン戦士」でもあります。ファミリーコンピュータ(ファミコン)が登場したのは、団塊ジュニア世代が小学生だった1983年。ここから家庭用ゲーム機の時代が始まったわけですから、まさに「世代」の人たちです。

 このときスタートしたゲームカルチャーはハード面、ソフト面ともに大きな進化を重ねながら、今の若者のライフスタイルにもしっかりと根付いています。

 ほかにも、この世代はポケベルやカラオケ、クラブといったカルチャーにリアルタイムで触れてきましたが、こうしたコミュニケーション手段や娯楽も、形を変えつつ現在の若者に受け継がれています。要は、Z世代とその親世代は趣味やコンテンツの話も非常に合うわけです(年表参照)。

同書より転載

反抗期が減った真の理由は

親世代が変わったから

 反抗期がなくなってきた要因として、Z世代とその親は社会の価値観や通ってきたカルチャーが似通っており、ベースとなる「分かり合える感覚」があることは確かです。反発の機会は減り、親子間の距離感もぐっと近いものになっていると分析できます。

 さらに反抗期が減ってきている理由に踏み込むと、コアZ世代(2024年の時点で19~22歳)が幼少期のころには、子ども本人の意思や気持ちを尊重する「自己肯定感を育む子育て」が広まりつつあったことも無視できません。

 実際に、「子ども調査」(編集部注/1997年、2007年、2017年に、生活総研が行なった10~14歳の男女に向けたアンケート調査)では1997年から2017年の20年間で、「お父さん、お母さんは自分の話をよく聞いてくれる」という項目の値が上昇しています。

 これに関して、親子インタビューに応じてくれたあるお母さんが、次のように語ってくれました。

「自分の親世代は学校での悩みを話しても、『先生に言われた通りにしろ』だけでした。でも今は、学校や先生も絶対的な存在ではなくなっています。常に子ども側の立場に寄り添ってアドバイスしたり必要ならサポートしたりしているから、信頼して何でも話してくれるんだと思います」

『 Z家族 データが示す「若者と親」の近すぎる関係 』(博報堂生活総合研究所、光文社)

 このお母さんについて、娘さんは「身近で安心できる、強い存在。ヨロイのような安心感」と表現していました。かたい信頼で結ばれていることが伝わってきます。

 反抗期は、本来「上からの支配」に対する反発として生じる、いわば作用・反作用の関係にあります。親が頭ごなしに叩いたり叱ったりしてこないうえに、同じ興味・関心を共有できる「理解ある存在」となり、さらに子どもを尊重して肯定の姿勢で話をじっくり聞いてくれる。そんな親であれば、そもそもの「作用」が生まれません。

 これらの背景を踏まえると、反抗期の減少を若者の気骨がなくなったから、軟弱になったからだと考えるのは、正しい捉え方ではなさそうです。

「子どもたちが反抗しなくなった」というよりも、実態としては「反抗すべき親が減った」のです。もちろんこれも、気骨のない親が増えてけしからんな、というような話ではありません。教育方針も含めた個人を尊重する価値観や、親子が共有できる文脈やカルチャーが大幅に増加した結果として起こっていることなのです。