1500万枚売れた「ボンボンドロップシール」開発者を直撃、ヒットの裏にあった「技術的こだわり」の正体

株式会社クーリア開発部デザイナーの山崎菜央さん(左)と社長室室長の倉掛誠一さん(右)
今、日本を熱狂に巻き込んでいるのはなんとシール。大阪にあるファンシー文具メーカー「クーリア」が生み出した『ボンボンドロップシール』(ボンドロとも言われる)は人気が出すぎて買えないのが今や当たり前。子どもだけでなく、かつての「平成女児」たちをも巻き込んだブームの裏側には何があるのか。開発した山崎氏と広報を担当する倉掛氏に話を聞いた。(フリーライター 大北栄人)
このかわいさはシール文化の「全部盛り」
――ボンボンドロップシールは山崎さんが考案された?
山崎菜央さん(以下、山崎。なお、「崎」の正式な表記は「たつさき」、以下同) そうです。でも、チームで開発してるので。ボンボンドロップという名前もチームで持ち寄って多数決で決まりましたね。あめ玉みたいにツヤツヤぷっくりしてるんで、キャンディを連想させるような言葉を並べてるんです。
倉掛誠一さん(以下、倉掛) 開発部はいわゆる管理職やリーダーもいなくて、みんなでフラットに意見を出し合うんです。山崎が案を出してチームで肉付けしていった形ですね。
――私を含めてシール文化を知らなかった男性は多いと思うんです。クーリアさんは元々シールを作っていたんですか?
倉掛 いわゆるファンシー文具と呼ばれる、小学校の低学年くらいまでをターゲットにした文房具などを作る会社でした。その中にシールというジャンルがずっとあるんです。
最初の弊社のヒット作、着せ替えシールは合計1000万枚売れましたけど、今ボンボンドロップシールが12月末時点で1500万枚。12月は1カ月200万枚販売してるんですが、それでも需要に追いつかない。150種類ぐらいあるシートは随時新しいものが増えていってまして、今シールチームだけではなくて会社を挙げてデザイナーたちが集結して開発してます。
――売れるとスクランブル体制に…!そんなボンボンドロップシールは出す前から特別な商品だったんでしょうか?
山崎 今までの商品と同じように自信を持って毎月出しているシールの中の1つなんですけど、できたときに「目新しくできたね」ってすごく盛り上がりましたね。

画像:シール

画像:シール
――目新しいというのはどの辺りが?
山崎 たとえばここまで細かく表面に凹凸がついたものは初めてなんです。パッと見のキラキラした感じがあって、見たときにみんなで「かわいい~!」ってなったんですよね。小さいマスコット感とか、おもちゃ感がありますよね。
――ほんとだ、今までの商品と並べると細かさが際立ちますね。根付とかね、日本人はミニチュア好きだっていいますし。その要素がありますね。
山崎 ボンボンはいろんな仕様の積み重ねなんです。表面に凹凸がついて、2層印刷(底面と表面)、中に樹脂が入っている。新しさでいうと、仕様の要素が全部あるそういった商品は当時初めてだと思うんです。
――そうすると我々は知らないところで育まれたシール技術の集大成みたいなものに熱狂してるんですね。題材はどういう基準で決まるんですか?
山崎 その時のトレンドと今まで出してないものとかで決めますね。いろんなパターンがあるんですけど、はちみつの質感がボンボンに合うんじゃないかってことで、黄色をモチーフに決めたり。
例えばそれ(下記画像参照)は、はちみつを絡めとる食器(ハニーディッパー)ですけど、はちみつの近くにないと意味わかんないですよね(笑)。このシートにしか入ってないパーツとかあるんですよ。

画像:シール
――ははは、はちみつでしか見ないですね!急速に楽しさがわかってきました。「何があるんだろう?」って見比べたらシートの内容も差があって面白いですね。

画像:株式会社クーリア開発部デザイナーの山崎菜央さん
「平成女児ブーム」SNS時代ならではの熱狂とは
――『たまごっち』人気が再燃したり、平成女児ブームだから売れているとも聞きます。山崎さんは平成女児の世代ですか?
山崎 そうだと思います。でもチームの世代は20代から40代まで幅広いので、平成女児世代だけで作ってるわけではないんですよ。
倉掛 発売した頃は全くそんな話はなかったんです。昔から変わらず小学校低学年ぐらいの層を狙って開発はしてるんですけど。
――平成女児だった世代がお母さんになって親子で買われてるんですか?
山崎 そういう方もいらっしゃいますけど、大人になって当時かわいかったものを買い集める方が多いんじゃないですかね。平成女児ブームで全体的にシールブームではあります。
――流行ったと思ったのはどのタイミング?
倉掛 初速も小売店での評判もよかったんですが、2024年末に有名キャラクターの商品を発売して、ファン層が拡大したのはありますね。そこからSNSでもよく取り上げていただくようになって、25年5月にヒット商品として日経トレンディに掲載されて以降、メディアにもよく取り上げていただくようになりました。
去年の夏休み前ぐらいまでは店頭でも手には入ったんですけど、それ以降ですね。もう全く手に入らなくなって「幻のシール」という状態まで一気になってしまった。
――10月くらいに存在を知りました。なくなったタイミングで話題になるんですね。
倉掛 全く弊社の意図してるところではないので増産かけていってるんですけど、作っても作っても全然追いつかない。安易に増やしていくと物のクオリティは落ちてくる。
――そうすると転売も行われたり?
倉掛 いわゆるプレミア値がつくこともあると聞いてますね。転売防止のために抽選販売や受注生産をご要望される声もあるんですが……この業界、問屋さん経由での小売が基本なのでなかなか難しい。「わざと欠品させてるのでは?」という声がSNSで見受けられたりもしますが、決してそんな…。
――(笑)。勘繰りが盛んなSNS時代の流行ですね。

着せ替えシールは当時の平成女児たちにウケて大ヒットした商品
進化して大人になったシール文化
――シール帳というのがあって貼ったり剥がしたりできるそうですね。交換して遊ぶとなると、貨幣みたいになってくるんですかね?
倉掛 レートがあるとしても個人の感覚らしいんですよ。「これは私のお気に入りだから何枚と交換」みたいなね。こだわりが相手のニーズとどうフィットするか。その辺が面白いみたいですね。
――レートが個人にしかないというのはおもしろいですね。シール交換カフェやシールバーもあるとか。
※シール交換カフェ『しぇあぷく』は25年12月に原宿に、2月に大阪と神戸に誕生。大阪にはシール交換バーも。
倉掛 どの年齢層の方が買われているのかはわからない部分もあるんですけど、大半は大人の方ではないかと考えてますね。

画像:株式会社クーリア開発部デザイナーの山崎菜央さん(左)と社長室室長の倉掛誠一さん(右)
――なるほど、ミニ四駆やポケモンカードみたいな、大人がやる遊びとしてのシール文化ができつつあるんですね。
倉掛 そうですね。シールカフェやシールバーでシール帳を持ってきて、お酒飲みながらそういうやりとりを大人の方がされて。もちろんお子さんもされてるし、親子で集められてる方もいらっしゃるのでしょうけど。
――うちの70代の母親がシールを見せてくれました。シール好きは女性が多いんですかね?
倉掛 男性よりも圧倒的に女性の方が多いでしょうね。今後お父さんが参戦してくることもありそうですが。古くはビックリマンシールがあったり、コレクションと考えるとトレカとかもありますしね。
今の子どもたちは感触を求めている?
――紫とか水色、今っぽい色を多く発売してますね。
山崎 発売した24年の初め頃ぐらいに「水色界隈」という言葉が出てきたんです。でも今はまたピンクが復権して上位に来たり。かなり細かく変わっていきますね。
――今の子どもは昔と比べてどうですか?
山崎 色味がおしゃれです。昔自分たちが集めていた頃は原色みたいなはっきりした色味でしたから。平成女児ブームでそういうのが再来してるんですけど。当時は目力が強いというか…全体的に印象が強いですよね。比べたら今のは淡くてきれい。洗練されてますよ。

右側が目に訴えかける力の強い平成的なデザイン。左側のおはじきシールも昔からある商品
――ほんとだ、テーマカラーが真っ黒なシートもありますね!
山崎 プリキュアとかでも黒いテーマカラーの子がいたり、マリクワとかも流行ってきてるんで(※)。そういう白黒のガーリーさがちょっと流行ってきてるんです。
※マリークワント…ファッションブランド、商品にはランドセルなどもある
――今後はどういった方向に進むんでしょうか?
山崎 新しく見えるようにボンボンドロップシールを進化させていきたいのと、並行して新しいシール作りも。これは「もちもち素材」を使った「スペシャルもっちもちシール」。今はいろんなアイテムにおしりがついてるものが人気で、シールにもつけてみたらかわいいんじゃないかと。これももう人気が出てますね。
――おしりが人気…現代のかわいいはそんなことに。スクイーズ(握ると「もちもち」「ふわふわ」とした独特の感触が楽しめるもの)という流行も近年ありましたしね。
山崎 今の子どもたちは質感にこだわってる気もしますね。ボンボンドロップシールも硬いところがいいと言ってくれたり、スクイーズ自体もまた人気が上がってきてる。なので、こういった手触りみたいなのも大事にしてますね。
――物理的な魅力はスマホやSNSの反動ですかね…いや、こんなものは大人の勝手な決めつけでしかないですね。流行の理由がよくわかりました、ありがとうございました!