【独自】万博EVバス販売社に「不具合隠しのお礼に接待」疑惑…市役所&バス会社との内部資料入手

〈大阪・関西万博に導入されたEVバスを販売する『EVモーターズ・ジャパン』で、ブレーキ不良やハンドルが操縦不能になるなどのトラブルが続出している。そんな中、同社の一連の問題を追及している自動車生活ジャーナリスト・加藤久美子氏が“新たな疑惑”について踏み込む〉

違和感を覚えた「回答」, EVMJが開いた「食事会」の中身, 「担当者他担当部署の皆様で留めて頂いており」, 「食事会はしております」

万博に導入されたEVモーターズ・ジャパンのEVバス。同社を巡ってはさまざまな問題が指摘されている

「『EVバスの不具合は絶対に社外の人間には口外するな! 取材などもってのほか』と運行管理者から厳しく言われています。乗務員はみな故障だらけのバスが嫌いで、使用を止めてほしいと願っていますが、運行管理者は完全に無視です。マスコミからの問い合わせが来るたびに『うちのEVバスに不具合はない。順調に走っている』と答えています」

そう話すのは、首都圏のバス会社で『EVモーターズ・ジャパン(以下:EVMJ)』のバスに乗務するバス乗務歴20年以上のベテラン運転士だ。同社は福岡県北九州市に本社を置き、中国の3メーカー(ウィズダム、恒天、愛中和)から輸入したEVバスを日本で販売している。’22年から日本での販売を始めており、これまで大阪・関西万博関連の190台を含む320台以上が全国のバス会社や自治体の交通局などに納車された。

筆者はこれまで100人以上の関係者(EVMJの現社員、元社員、導入したバス会社、乗務員、大阪万博関係者など)に取材してきた。FRIDAYデジタルでは昨年10月13日に〈大阪万博で大量購入された中国製バスで続出する「操縦不能トラブル」の実態〉と題した記事を公開。運転手が必死にハンドルを操作するも、車体が制御不能に陥り中央分離帯に激突するという驚くべき事故を、ドラレコ映像とともに報じた。

そのような状況下で、EVMJに新たな疑義が浮上した。それが、冒頭の運転手が明かした「口止め」疑惑だ。

違和感を覚えた「回答」

実際、筆者がEVMJのバスを導入した事業者に取材をかけても、ほぼ断られるか、「順調に運行している」といった趣旨の回答しか得られなかった。’23年4月にEVMJが販売した『ウィズダム大型10.5m』にて相次いで発生した、ブレーキチャンバー(大型トラックやバスに搭載されるエアブレーキシステムの重要部品)が走行中に脱落するという事故についても同様だ。導入していた沖縄県のバス会社・那覇バスは筆者の取材に、

「現在は問題なく運行している。ブレーキチャンバーの脱落についてはうちでは答えられない。EVMJに聞いてください」

と答えるにとどまった。

那覇バスは県内で路線バスや観光用の貸切バスの運営を行う大手だ。入手した資料では、’22年3月〜’23年3月にかけてEVMJのバスを3台購入している。しかしこのたび、筆者は同社に対する「口止めのお礼」ともとれる趣旨が記されたEVMJの内部資料を入手した。

違和感を覚えた「回答」, EVMJが開いた「食事会」の中身, 「担当者他担当部署の皆様で留めて頂いており」, 「食事会はしております」

加藤氏が入手した、EVMJの経費申請書の一部。文中の「EVM」は同社を指し、伏せた部分にはEVMJの担当者名が入っている。目的欄の中では「不利になるようなコメントをするな!と行(言)って頂いている」などの文言が記されている

EVMJが開いた「食事会」の中身

筆者が入手したのはEVMJ内の経費申請書だ。そこには今年1月22日にEVMJの社員が那覇バスの担当者と食事会を開催するため、5500円×5人分、合計2万7500円を申請したことが書かれている。注目すべきは申請書に書かれた「目的」だ。そこには以下のように記されていた。(以下、誤字は原文ママ)

〈那覇バス様については、これまで何度も一連の総点検やリコールについてのアンケートや取材等で、不具合の発生はなく(少なく)安全運行を続けているとお答えいただいております。これは一会に、第一交通産業グループ 田中社長様からのトップダウンで、社外への対応についてはEVMが不利になるようなコメントをするな!と行って頂いているからだとお聞きしております。小職も鹿毛副社長をはじめ、小川社長様、営業所所長様、ご担当者様へ感謝の気持ちが強くございます〉

ここで書かれている「総点検」とは、昨年9月に国土交通省から出された総点検命令を指し、「リコール」とは同11月にEVMJが国土交通省に届け出たブレーキホースに関するリコールを指す。また、那覇バスは第一交通産業の子会社となっている。

交通事故問題などに詳しいSINTO法律事務所の鈴木秀二弁護士は「この資料だけでは断定はできないが……」と前置きし、これら内部資料の記載内容が事実であると仮定した場合、いくつかの法的問題が考えられると指摘する。

「本来は安全性の確保や適切な情報開示を行うべき立場にありながら、バスの運行停止など自社に不利益が及ぶことを避けるために、不具合を十分に外部に出さない対応をしていたと評価される可能性があります。こうした行為は、自社の安全性や信用を犠牲にして取引先との関係維持を優先するものであり、結果として会社に損害のリスクを負わせる一方で取引先に利益を与えることになります。そのため、第一交通産業や那覇バスの役職員については、自社に対する背任罪に該当する可能性があります。また、リコール届への虚偽回答となれば、道路運送車両法に抵触する可能性もあります。事実であれば、人命にも関わる許されない行為です。

EVMJも欠陥の内容や程度を認識しながら納車・取引を継続していた場合には、説明内容によっては詐欺罪が問題となる余地もありますが、その場合には欺罔行為や因果関係の立証が必要となり、相手方の認識状況にもよるため成立は容易ではありません。導入していた那覇バス内で実際に働きかけはあったのか、あったとしたらどのような働きかけがあったのか。調査されなければならない案件だと思います」

違和感を覚えた「回答」, EVMJが開いた「食事会」の中身, 「担当者他担当部署の皆様で留めて頂いており」, 「食事会はしております」

福岡県北九州市にあるEVMJの本社。約10億円をかけて建てられたとされ、ほかにも巨大な工場やテストコースには合計で約100億円の建設費が投じられている(昨年9月から工事は中断)

「担当者他担当部署の皆様で留めて頂いており」

筆者は沖縄県名護市役所の公共交通課の課長や係長ら4人の名前が書かれた会食の経費申請書も入手した。名護市ではこれまで、コミュニティバス『なご丸』用にウィズダム小型6台を購入。現在も5台が運行している。申請書によると食事会は「会費制」であり、不足分をEVMJが支払うという形で、5500円×6人分、合計3万3000円が申請されていた。目的欄には、以下のように書かれている。(以下、原文ママ)

〈昨年から今年にかけても、3度目のモーター不具合による車両運行停止やエアコンのヒューズが飛んで、数日運行停止が発生するなど、苦言をたくさんいただいております。議会や市民の皆様から、故障で運行停止が多いので筑後市のように車両を返して、お金を戻してもらってディーゼルバスの導入を本気で考えて欲しいというお声も上がっていると聞いております。現時点では、担当者他担当部署の皆様で留めて頂いており。お詫びとはならないものの、今後の関係性の向上と親睦を図り、会食を実施いたします〉

「筑後市のように」とは、福岡県筑後市で起きたスクールバス返納を指す。同市は昨年4月、EVMJから4台のスクールバス(恒天製)を導入したものの問題が相次ぎ、導入からわずか2週間で全台が使用停止になり、従来のディーゼルバスに変更されるというトラブルが起きていた。

「こちらも申請書の内容によると、形式的には会費制ですが、実際には不足分を企業側が負担していますよね。形式上は会費制であっても、不足分を企業側が負担することが予定され、かつそれが事前に経費として申請されている点からすれば、実質的には接待と評価され得ます。

さらに、不具合や市民からの苦言といった本来外部に説明されるべき事項について『担当部署で留めてもらっている』と読める記載があることからすると、利益供与と職務上の対応との間に対価関係を推認させる事情が認められる。申請書通りの事実であれば、職務の対価として接待を受けたと疑われるため、刑法上の贈収賄罪の構成要件該当性が強く問題となる事案といえるでしょう。

時期についても、前年の11月末にリコールがあって、1月にこの会食が行われているわけです。リコールの後にもかかわらずこの流れになると、より強く贈収賄を疑われても仕方ないのではないかな、と思います。なお、仮に刑事責任に至らない場合でも、利害関係者との関係性のあり方として地方公務員としての信用失墜行為に該当する可能性は否定できません」

違和感を覚えた「回答」, EVMJが開いた「食事会」の中身, 「担当者他担当部署の皆様で留めて頂いており」, 「食事会はしております」

万博に導入されたバスたちは今、大阪市中央区森ノ宮にある大阪メトロ所有地に集積されている。ナンバープレートが取り外されており、今後は廃棄もしくはEVMJに返品される可能性が高いという

「食事会はしております」

本当にこうした食事会は行われていたのか--。EVMJに質問状を送ると、期日までに以下のような回答があった。

名護市役所に対する食事会、および資料に記された「不具合情報の担当部署内での留め置き」の事実関係を問うと、「名護市様と担当者の交代に伴う引き継ぎを兼ねて会食をした事実はございます」と食事会の存在は認めた上で、こう回答した。

「会食の費用については、会費制で名護市様も負担されています。また、事故や故障等については名護市様を含めお客様への原因説明を行っているだけではなく、弊社のホームページをご覧いただければお分かりの通り、必要な公表も行っており、事故や故障等を隠蔽している事実はございません」

名護市側は食事会については認めた上で、「会費制の会食であり、不足分の負担等の認識は無し」と回答。EVMJの支払いの有無については「認識はない」とした。さらに問題を起こしたバスについては、

「モーター不具合やエアコンの不調などは発生事実ありだが、その都度、対応していただいている。議会や市民からの他市の事例のようなクレーム等は無い」

とし、「議会へ報告する案件でもなく、市民説明も必要ない。(中略)現状、不具合は発生していない状況であり、通常運行を行っている」との見解を示した。

回答書の最後には「今回のEVMJ社内部資料の内容について、市といたしましても、記載のとおり処理されていたことは、誠に遺憾であります」と太文字で記載されていた。

また、那覇バスとの食事会についても、EVMJは開催を認めた上でこのように回答した。

「担当者の交代に伴う引き継ぎを兼ねて会食はしております(中略)。お尋ねいただいたような隠蔽を求めるような目的での会食をしたという記録はございませんし、重大な欠陥を隠蔽して運行を継続させているという事実もございません」

那覇バス側も食事会の開催は認めたものの、担当変更に伴う顔合わせであり、支払い内訳は回答を控えるとした。その上で、リコールや総点検、過去の筆者取材などに虚偽の報告をしたかについては、

「当社が直接、国交省からご指摘のような総点検命令やリコールの調査を受けた事実はございません。また、メディアからの取材や問い合わせについてもございません。虚偽の申告を行った事実はございませんのでお礼としての会食の事実もございません」

と答えた。現在運行している車両について「現時点において不具合は発生しておりません」とし、車両導入の経緯については「当時入手可能な情報等を踏まえ、総合的に判断しております」と答えた。

また、第一交通産業は、田中社長から那覇バスに対して実際に指示があったのかという質問に対して「ご指摘のような内容の指示や通達等が当社内で行われた事実は一切ございません」と答えた。

食事会は実在していたものの、「口止め疑惑」については各社とも否定した。しかし、EVMJ関係者は「担当者の顔合わせ以外にも、こういった食事会は行われてきた」と明かす。

「経費申請書に記されている通り、接待しているわけです。取引先の元に行って、食事を奢って関係を築いていくのがやり方です。実際、1月に行われた会食はこの2件だけじゃありません。数回にわたって複数のバス会社や自治体に対して食事会が開催されていると聞きますから」

徹底した事実究明が求められる。