「関関同立」の名付け親が新聞記者に語ったこと

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関西私大のトップブランドとして知られる「関関同立」。スポーツやビジネスなど多くの分野で人材を輩出してきたが、実は意外な弱点も指摘されてきた。それが司法試験の合格実績である。関東の有名大学に比べ苦戦が続く背景には何があるのか。改善に取り組む大学の動きも含め、その実態を探る。※本稿は、教育ジャーナリストの小林哲夫『関関同立――関西の四大私大事情』(筑摩書房)の一部を抜粋・編集したものです。

すっかり定着した「関関同立」

いつ頃生まれた言い方?

 関関同立――関西大、関西学院大、同志社大、立命館大。

 大学をひとくくりにする言い方としてすっかり定着した感がある。MARCH、日東駒専、大東亜帝国は具体的にどの大学か注釈を付けなければ読者はわからないが、関関同立にはその必要はない。字面からだいたい見当がつくからだ。すっかり市民権を得たのは、ゴロの良さ。読みやすさのおかげである。

 そして4校は同じような歴史、規模、学部構成なので、大学のグループとして語るのに、とても都合が良い。

 関関同立当事者もそう思っているフシがあり、4校の学長が集まって話し合うことはよくある。学生スポーツ系、文化系で情報交換している。

 そもそも関関同立という言い方はいつ頃生まれたのだろうか。

 MARCH、日東駒専、大東亜帝国は旺文社「螢雪時代」の編集者が命名した。関関同立も受験関係者が名付けており、受験生を教える立場にある人だ。とはいっても高校教師ではない。

 予備校経営者である。

 大阪市天王寺区に老舗の予備校がある。

 1952年創立の夕陽丘予備校だ。

 駿台予備学校、河合塾、代々木ゼミナールなど大手予備校の全国進出で関西には地元発祥の予備校はほとんどが消え去ってしまったなか、夕陽丘予備校は今日まで70年以上地元に愛され、がんばり続け、関関同立に多くの学生を送ってきた。

 夕陽丘予備校理事長を務めた白山桂三さんが関関同立の名付け親である。その経緯について、夕陽丘予備校の学校史で大阪新聞社記者の回顧談が掲載されている。

《白山先生の気さくな態度とあたたかい励ましが、どれほどありがたかったことか。いまもあのときの情景は、鮮明に蘇ってきます。「関学、関大、同志社、立命館、この4つの私立大が、関西では入試レベルも高く、人気もある大学なので、これを総称して“関関同立”と言うことにしようや。『大学へアタック』で、はやらせや」など、数え切れないほど多くの白山先生のアドバイスは教育面づくりにたずさわる私の血と肉になったのです》(『創立三十年 夕陽丘予備校史』1981年)

『大学へアタック』とは大阪新聞が連載する受験情報記事のタイトルである。

 こうして関関同立は誕生した。1970年秋のことである。

 関関同立が生まれて半世紀以上経った。

 関西のみならず西日本、そして関西の大学にあこがれる全国の受験生が関関同立というブランドに魅了されている。

 しかし、知られていないことがいくつかある。

司法試験合格者数は

東大・京大・早慶・中央に差をつけられる

 その存在価値は合格実績によって決まる。法科大学院のことだ。いくら優れた教員が集まり、面倒見のよい指導を行ったところで司法試験合格者数が奮わなければ、法科大学院として評価されることはない。それが現実である。

 しかし、司法試験合格者数、合格率ともに東京大、京都大、早稲田大、慶應義塾大、中央大に差を付けられている。2010年代関関同立いずれも合格率10%台の時代があったが、2020年代半ばに20~30%台を推移するようになった。40~50%台はほしいところだ。

 司法試験の合格者をまとめた(表8-5)。

同書より転載

関大が司法試験合格率を

回復させたプログラム

 関西大学は、司法試験合格実績でかなり厳しい年があった。2018年合格者6人、合格率6.3%だった。かなりの危険水域である。しかし、2022年になると15人、27.9%と盛り返した。めぐり合わせもあるだろう。現役組、浪人組の優秀な層が集まった年、その翌年と隔年現象が起こったと言える。

 大学は次のような認識のもと、新しい構想を打ち出した。

「本研究科の修了生の司法試験合格率は低く、しかも合格までに長年を要している。本研究科が取り組むべき課題は、法科大学院の2年ないし3年間で法曹としての専門的知識を確実に修得させ、短期間で司法試験に合格できるようにすることである」(「法科大学院の機能強化構想について」~令和6年度法科大学院公的支援見直し強化・加算プログラム審査結果~)

 そのため、(1)法学部に「法曹コース」を設置し法学部との体系的かつ一貫した教育システムを構築する。弱点である論理的な法律文書作成能力の弱さを克服するための教育を実施する。合格に要する期間の短縮を実現する。(2)大阪大学法科大学院との連携により、教育内容の改善と両校学生間の切磋琢磨を促進し、本学学生の学修意欲と学修能力の引き上げる――ことを掲げた。

 司法試験合格者、司法修習所修習生の進路は次のとおり(2008年~2023年)

 弁護士事務所261人、企業内弁護士30人、検察官4人、裁判官1人、裁判官事務官1人、法テラス2人、民間企業4人、学校法人1人

 2024年、法学部在学中、2年生のとき司法試験予備試験に合格、4年生になって本試験に受かった男子学生がいる。法科大学院からの合格者にはカウントされない。彼はこう振り返る。

「予備試験合格までは、試験直後を除きモチベーションが下がったことはあまりありませんでしたが、予備試験の論文式試験に合格するまでは基本的に勉強仲間を作らず1人で勉強をしていたため、SNSを利用し他の受験生・合格者の方の投稿を見ることにより、情報収集・モチベーション維持を行っていました。

 予備試験合格後は、燃え尽きたことにより司法試験へのモチベーションがかなり下がってしまいましたが、学部ゼミや同い年の他大学の予備試験合格者との自主ゼミにより、なんとか最低限のモチベーションを維持していました」(法学部ウェブサイト2024年11月18日)

 司法試験予備試験 受験46人 合格3人(2年生1、3年生1) 合格率6.5%(2024年)

関学大は「駅近」の西宮キャンパスを構え

学生のやる気もUP

 2019年、関西学院大学の法科大学院キャンパスは上ヶ原から阪急西宮北口に移転した。これまで最寄り駅からバスで20分かかっていたのが、阪急甲東園駅から徒歩1分となり、三宮駅、梅田駅からも乗り換えなしで通えるため、利便性が格段に良くなった。

 それが功を奏したのだろうか。司法試験合格率が2017年10.7%、2018年10.4%とどん底だったのが、2021年には29.4%まで回復し、以後、だいたい20%台をキープしている。

 2024年司法試験合格者の女性が語る。

「私が関学ロースクールに入学を決めたのは、奨学金制度が充実していたことと、阪急西宮北口駅から徒歩1分で学校に到着することが出来るという学校の立地が魅力的であったことにあります。(略)最近上ヶ原キャンパスから西宮北口キャンパスに移転したため、とても綺麗で新しい設備が整っています。

 1人に1つのキャレルとロッカーがあり、資料室で調べ物をしたり、ラウンジで休憩をすることもできます。また、関学ロースクールの周りには、西宮ガーデンズ等の商業施設がある点も施設が充実している点です。勉強で疲れた時には、商業施設を歩いて気分転換することもできますよ」(法科大学院ウェブサイト)

 ロケーションは大学が思っている以上に大切なのかもしれない。

 2024年は在学中の合格者が1人いる。

 司法試験予備試:受験40人 合格1人(3年1) 合格率2.5%(2024年)

同志社大法科大学院を出た

男性は狭き門のさらに奥へ

 2021年に同志社大学の法科大学院を修了した男性は、京都地方裁判所の刑事部で合議事件の進行管理や起案、身柄事件の処理や事務といった業務を担当している。

「現在任されている「左陪席裁判官」はキャリアの浅い裁判官が努めることが一般的ですが、裁判官の原則は「独立」であり、若手がベテラン裁判官におもねるような風潮はありません。立場にとらわれず自由に意見を言い合える点こそ、裁判官という仕事の特徴だと思います。

 (略)裁判官の業務は法律の知識がダイレクトに問われるので、法科大学院時代にしっかりと勉強したことが今に活きています。当時のノートを見返して、実務の判断材料にすることもあります」(大学ウェブサイト2024年1月当時)

 司法試験予備試験:受験91人、合格4人(3年1、4年3)、合格率4.4%(2024年)

 法科大学院発足からの司法試験累積合格者数は693人、累積合格率は49.3%となっている。

立命館大法科大学院を出た女性は

すぐさま弁護士事務所を設立

 2022年司法試験に合格した女性は32歳の時、立命館大学の法科大学院に入学した。それまで、経済的理由で法科大学院への進学を断念し営業職、パラリーガル、大手監査法人の会計士補助業務などを経験している。司法修習後、すぐに弁護士事務所を立ち上げた。こう振り返る。

『関関同立――関西の四大私大事情』 (小林哲夫 ちくま新書、筑摩書房)

「社会人としてのマナーが身についていること、実体験を通して社会の仕組みを理解していることなど、社会人としてのキャリアは弁護士にとって大きな武器。人間の心に深くふれる仕事だからこそ、これまでの経験が活きると日々感じています。

 依頼者の中には、感情的になったり、混乱して説明がうまくできない方もおられますが、どんな場合でも、落ち着いて、整理しながら話を聴けるのは、これまでの社会人経験のおかげです」(法科大学院ウェブサイト)

 法科大学院発足からの司法試験累積合格者数は618人。

 司法試験合格者(2006~2023年累計)の進路は、裁判官14、検事16、弁護士(事務所)488、弁護士(企業)20、弁護士(公務員)2、その他31となっている。

 司法試験予備試験:受験71 合格0(2024年)