【移住したい都道府県ランキング20年連続1位】なぜ長野県は選ばれ続けるのか? 専門家と県担当者が理由を解説

20年連続で移住したい都道府県ランキング1位に選ばれてきた長野県。なぜ、これほど長く支持され続けているのか。その理由を、 2500 組以上の移住にかかわってきた移住プランナー・仲西康至さんと、長野県の移住政策の最前線に立つ信州暮らし推進センター長・伊東笑子さんの対話からひもといていく。

掲載:2026年3月号

長野県が選ばれ続ける理由と移住支援の取り組み, 「ここなら選べる」安心感がある, まずは試してみる、という移住のしかた, 暮らしと仕事を、切り離さない, 「住む前に関われる」仕組みがある, 本文中に登場した主な制度・取り組み

【移住したい都道府県ランキング20年連続1位】なぜ長野県は選ばれ続けるのか? 専門家と県担当者が理由を解説

仲西康至さん

移住専門ファイナンシャル・プランナーとして18年間にわたって地方移住に関わる。大阪出身で自らも北海道と

鹿児島に移住。全国の地方移住の動向に詳しく、空き家と移住者のマッチング事業にも取り組んでいる。

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伊東笑子さん

長野県信州暮らし推進センター、センター長。長野県の移住施策の推進役として、県内各市町村等と連携しながら、移住や二地域居住などの促進に取り組む。

長野県が選ばれ続ける理由と移住支援の取り組み

「ここなら選べる」安心感がある

仲西「選択肢が多い県ほど、移住は現実的になります」

仲西 20年間にわたり、おめでとうございます。皆さんのご努力の賜物です。そのうえで長野県が選ばれ続ける理由をあげるなら、まず、77市町村という自治体数の多さです。77通りの魅力と選択肢があるわけですから。北と南では気候風土もまったく違いますしね。また、8つの県に囲まれて外に出

やすく、他県ナンバーの車もたくさん走っています。閉塞感を感じず、移住してもよそ者扱いされないイメージがあります。

伊東 ありがとうございます。県では20年前に〝田舎暮らし「楽園信州」推進協議会〟を市町村や民間企業などと組織して以降、「オール信州」でタッグを組み、地域それぞれの個性をアピールしてきました。長野県は地域ごとに個性豊かで、さまざまなライフスタイルに合う場所を見つけられます。住

民の4割が移住者という村もあり、移住された地域で活躍している方も多くいらっしゃいます。

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仲西 移住後の生活が描きやすく、移住の不安が少ないですね。

伊東 伊那市では、ゴミの出し方や地域行事など、地域独自のルールを見える化する地域の教科書(※1)を全地区で作成しています。県では、移住される方が安心して暮らせるよう、このような地域の自主的な取組が広がっていくことを後押ししています。

仲西 移住後のアフターフォローも大切です。移住者の会があると、そこを接点に地域の人たちともつながりやすいんです。

伊東 おっしゃるとおり、移住後も大事ですね。長野県では信州暮らしパートナー(※2)として、現在27人の先輩移住者さんが移住前後の相談に応じています。また、移住者交流会(※3)を県内の4エリアごとに毎年開いています。

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地域の教科書(伊那市)

地域のルールや行事を可視化し、移住後の不安を減らす取り組み。

まずは試してみる、という移住のしかた

仲西「二拠点生活は移住の入り口。長野県は〝その先〟まで見据えています」

仲西 最近は二拠点生活の相談も増えています。長野県は三大都市圏からのアクセスがよく、二拠点生活している方も多いのではないでしょうか。

伊東 はい、東京、名古屋、大阪と県庁にある移住相談窓口では、専門相談員の「信州暮らし案内人」が相談に応じていますが、こちらでも二拠点生活の相談は増えている印象です。長野県では一昨年、二拠点生活を促進するための広域的地域活性化基盤整備計画(※4)を全国に先駆けて策定しました。先進的に進めている塩尻市、白馬村、小布施町を重点地域に指定したほか、専用サイトニブンノナガノ(※5)で二拠点生活に関する情報発信を強化しているところです。

仲西 住まいも重要です。特に空き家のマッチング。二拠点生活でも、賃貸ではなく空き家を購入する人が多くなりました。自分好みにリフォームを加えて、購入時よりも高く売却したという例も出ています。また、空き家を所有して住民票を移せば、地域行事への参加や回覧板を通じて、より深くコ

ミュニティに溶け込めます。

伊東 空き家を担当する地域おこし協力隊も増えています。県では昨年度から、地域おこし協力隊などを対象に、家主との信頼関係を築きながら空き家の利活用を促す「空き家専門人材」を育成する研修事業も始めました。空き家所有者の中には、知らない相手に貸すことへ不安を感じる方もいます。ですが、丁寧なマッチングを通じて信頼関係ができ、安心して貸し借りが進んだ事例も増えています。こうした取り組みを今後も広げて

いきたいと考えています。

暮らしと仕事を、切り離さない

伊東「仕事を理由に移住を諦めなくていい仕組みがあります」

仲西 インターネットなどで地方の求人情報も得られるうえ、リモートワークで従来の仕事を継続したまま移住できる環境も整って、移住における仕事面での不安は減りつつあります。

伊東 そうですね。県では銀座にあるアンテナショップ銀座NAGANO(※6)で、移住相談のほか、長野労働局と連携しハローワークの職員が職業紹介もしています。ワンフロアに都道府県が運営する移住相談窓口とハローワークが併設されているのは全国でも長野県だけです。また、長野県には移住者の方と一緒に働いていこう、活躍してもらおうという企業がたくさんあり、定期的に仕事の相談会も行っています。そのほか、長野県には100カ所以上のコワーキング拠点(※7)があり、ビジネスの創出を支えるコミュニティ形成も活発です。起業を考える方(※8)には長野市と松本市に相談拠点があります。長野県には、仕事探しや働き方を応援する仕組みが整っているんです。

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銀座NAGANO

移住相談と仕事探しをワンストップで行える、長野県のアンテナショップ。

「住む前に関われる」仕組みがある

伊東「移住は関係づくりの結果です」

仲西 長野県は教育の面でも注力されていますね。山村留学が多いのも特徴です。

伊東 長野県は山村留学の発祥の地なんです。山村留学は子どもたちが親元を離れて共同の宿泊施設で生活したり、地域の農家などにホームステイするほか、親子で留学するスタイルもあります。県では信州自然留学(※9)として推進しています。ほかにも松本市の、住民票を移さずに通うことができる松本デュアルスクール(※10)など、さまざまな形でお子様とのお試し移住が可能です。長野県ではこのほか、豊かな自然のなかで子どもを育てる信州やまほいく(※11)や、公立の小中学校等でもウェルビーイング実践校TOCOーTON(トコトン)(※11)の取り組みがあり、子どもたち一人ひとりがのびのびと学べる環境づくりを進めています。

仲西 体験のためのお試し住宅も早くから整備されていますね。

伊東 はい。県内市町村には多くの移住体験住宅があります。また、体験という点では、今年度から県内の10の市町村と連携し、信 州ワーキングホリデー(※13)を開始しました。実際に信州の仕事と暮らしを1週間体験するプログラムですが、非常に好評で参加された方のなかには、地域の人と一緒に働いた体験をSNSで発信したり、その経験をきっかけに次回の訪問を約束して帰る方もいます。さらには、地域とのつながりを深めることで、後にその地域で就職するケースもあります。まずは、長野県に足を運んで、体験してみていただきたいです。それぞれの移住の夢をかなえる場所は、きっと見つかると思います。

長野県が選ばれ続ける理由と移住支援の取り組み, 「ここなら選べる」安心感がある, まずは試してみる、という移住のしかた, 暮らしと仕事を、切り離さない, 「住む前に関われる」仕組みがある, 本文中に登場した主な制度・取り組み

山村留学

地域の学校に通い、自然の中で暮らし学ぶ体験。移住の入り口にもなる。

長野県が選ばれ続ける理由と移住支援の取り組み, 「ここなら選べる」安心感がある, まずは試してみる、という移住のしかた, 暮らしと仕事を、切り離さない, 「住む前に関われる」仕組みがある, 本文中に登場した主な制度・取り組み

信州ワーキングホリデー

地域で働きながら暮らしを体験できる制度。関係づくりから移住へとつながる。

本文中に登場した主な制度・取り組み

※1 地域の教科書

地域の魅力や暮らしのルール、地域行事など、地域によって異なる暮らしの情報をまとめたもので、地域の住民が話し合いながら区や町内会ごとに作成する。

※2 信州暮らしパートナー

先輩移住者が県から委嘱を受け、自身の経験を生かして移住前後の相談に応じる制度。

https://www.rakuen-shinsyu.jp/modules/partner/

3 移住者交流会

県主催の4エリア交流会のほか、各市町村でも多数開催。詳細は「楽園信州」WEBサイトのイベントページで「移住者交流会」と検索。

※4 広域的地域活性化基盤整備計画

2024年施行の「二地域居住促進法(通称)」に基づき策定。県はこの計画を通じて市町村や民間の連携を促し、市町村は具体的な二地域居住像や環境整備を計画する。

※5 ニブンノナガノ

二拠点生活に関する情報を発信する長野県の特設ポータルサイト。

https://nibunno-nagano.jp/

※6 銀座NAGANO

銀座にある長野県のアンテナショップ。移住相談員とハローワーク担当者が常駐し、移住・仕事の相談をワンストップで行える。

https://www.ginza-nagano.jp/

※7 信州リゾートテレワーク

信州ならではの魅力あふれる地域に滞在して仕事をする新たな働き方。拠点や宿泊施設も掲載。

https://shinshu-resorttelework.com/

※8 信州スタートアップステーション

長野市・松本市にある創業支援拠点。起業・創業に関する相談を受け付けている。

https://shinki-shinshu.jp/sss/

※9 信州自然留学

全国的には「山村留学」と呼ばれる取り組み。信州の豊かな自然環境を活かした活動を広く発信するため、「信州自然留学」と名付け、推進している。

https://sansonryugaku.nagano.jp/

※10 松本デュアルスクール

住所地に住民票を置いたまま、松本市の小中学校に就学することができる制度。学籍を移動し、就学期間が出席日数として認められる。

※11 信州やまほいく

長野県の自然環境や地域資源を積極的に取り入れた「信

州型自然保育」。県内の認定園は316園にのぼる。

https://www.shizenhoiku.jp/

※12 ウェルビーイング実践校 TOCO-TON(トコトン)

子どもたち一人ひとりが学び方等を選び、自己実現できる学校を目指して“とことん” 取り組む実践校を、長野県教育委員会が指定。令和8年度は、令和7年度の70校に新たな実践校を加えた全144校で学校の仕組み改革を進める。

https://www.instagram.com/nagano_manabino_official/

https://www.facebook.com/edu.naganopref/

※13 信州ワーキングホリデー

移住・二拠点生活の促進を目的に、「旅をするように、地域の暮らしとシゴトを体験する」短期滞在型の地域体験プログラム。観光施設や地域活動のお手伝いを通して、地元の人との交流を深めながら、信州ならではの暮らしをリアルに味わうことができる。

文/新田穂高 写真提供/長野県、伊那市、富士見 森のオフィス

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