【台湾】TSMC、3ナノ供給増急ぐ[IT] 台・米・日で新たに量産計画

TSMCはAIの普及による先端半導体の強い需要に対応するため、台湾と日米両国で前工程と後工程の生産拠点増強を進めている=高雄市楠梓区(NNA撮影)
半導体受託生産(ファウンドリー)世界最大手、台湾積体電路製造(TSMC)は、先端製造プロセスのうち、3ナノメートル(1ナノは10億分の1)の生産体制増強を急ぐ。人工知能(AI)用半導体として最も需要が強く、供給不足が続いているためだ。2027年上半期(1~6月)から28年にかけて、台湾、米国、日本の3拠点で相次ぎ新たな3ナノ工場での量産を始め、世界の顧客企業への供給量を底上げする。
同社が16日に開いた今年第1四半期(1~3月)の業績説明会で、魏哲家会長兼最高経営責任者(CEO)が明らかにした。
魏氏によれば、台南市の南部科学園区(南科)で現在建設中の3ナノ工場が27年上半期(1~6月)に量産に入るのに続き、27年下半期(7~12月)には米アリゾナ第2工場で、28年には着工したばかりの日本の熊本第2工場で相次ぎ3ナノの量産を始める計画。
台湾にある5ナノの生産工場については一部を3ナノ工場に変更し、顧客からの引き合いに対応する。
同社は今年の設備投資額を520億~560億米ドル(約8兆2,690億~8兆9,050億円)とする方針を年初に公表している。このうち、70~80%を先端製造プロセス技術の開発・製造に充てる計画だ。
■先端封止もネックに
同社は先端製造プロセスの量産体制確立と同時に、後工程に当たる先端の封止・検査工程の能力増強も進める方針だ。
中央通信社などによれば、TSMCは北部の新竹科学園区(竹科)など複数拠点にある8インチウエハーの生産工場を先端封止工場に転換し、AIおよびハイパフォーマンスコンピューティング(HPC)向けに活用される「CoWoS(コワース)」や「InFO(インフォ、2.5次元封止技術)」といった先端封止能力を強化する方針。米アリゾナ工場でも初の封止工場の建設を進めており、28年にコワースとインフォによる半導体チップの供給体制を整える計画だ。

TSMCは米国での生産体制の強化を進めているが、前工程の先端製造プロセスで製造した半導体を各製品向けにパッケージングする封止・検査能力の不足が供給拡大のネックになり始めており、同社と協力関係にある後工程を専門とする米半導体アムコー・テクノロジーも米国で能力の強化を急いでいる。

■純利益が過去最高、中東影響なし
TSMCが発表した26年第1四半期の台湾元建ての連結決算は、売上高が前年同期比35.1%増の1兆1,341億300万台湾元(約5兆7,120億円)、純利益が58.3%増の5,724億8,000万元で、いずれも四半期の過去最高を更新した。増収増益は9四半期連続。
第2四半期(4~6月)の売上高は約390億~402億米ドル、粗利率は65.5~67.5%と予想した。
黄仁昭最高財務責任者(CFO)は、2ナノ製造プロセスでの量産が今年下半期(7~12月)に始まることが通年の粗利率を2~3%押し下げるほか、海外での生産増強も2~4%の低下をもたらすと説明。また中東紛争によって一部の化学品やガスのコストが上昇するとの見通しを示した。
先端半導体の生産では不良品を除く歩留まり率が安定するまでに一定の時間がかかり、それまでは売り上げに結びつかない製品が増えるため、粗利率が下がるのが通常とされる。
一方でヘリウムや水素など生産に必要な特殊ガスは十分な在庫を確保している上、調達先を分散していると指摘。液化天然ガス(LNG)も政府が元売り最大手の台湾中油(中油、CPC)を通じて確保し、かつ調達先を分散しているため短期的には運営への影響はなく、生産停止になることはないと強調した。
■先端プロセスは1ポイント上昇
製造プロセスの精密度を示す回路線幅別に第1四半期の売上高を見ると、3ナノの比率は25%で、前四半期から3ポイント縮小した。5ナノは36%で1ポイント上昇。7ナノは13%で1ポイント縮小した。
先端製造プロセス(7ナノ以下)の売上高が全体に占める割合は78%と、前四半期から1ポイント上昇した。
第1四半期の用途別の売上高比率は、HPCが61%で、前四半期から6ポイント拡大。スマートフォンは26%で6ポイント縮小した。モノのインターネット(IoT)は6%で1ポイント拡大、車載電子は4%で1ポイント縮小した。コンシューマー・エレクトロニクスは1%で横ばいだった。
用途別売上高の前四半期比での増減率は、コンシューマー・エレクトロニクスが28%増、HPCが20%増、IoTが12%増だった。スマホは11%減、車載電子は7%減だった。
