万博の負の遺産「墓場」に並ぶEVバス 補助金40億円投入したのにムダに…浮かぶ「業者選定の不透明さ」

 昨年の大阪・関西万博に合わせて大阪メトロが調達し、来場者を運ぶなどした190台の電気自動車(EV)バスが「負の遺産」となっている。閉幕後は路線バスに転用する予定だったが、安全性に問題があるとして大阪メトロが断念し、販売企業に代金の返還を求める事態になっている。(森本智之)

◆3台に1台の割合で不具合を抱えていることが判明

 EVバスは、北九州市のEVモーターズ・ジャパンから2022~24年度に購入。190台のうち150台は万博会場へのシャトルバスなどに使い、40台はオンデマンド運行した。

◆3台に1台の割合で不具合を抱えていることが判明, ◆「なぜEVモーターズ社から購入することになったのか」, ◆「大臣当時、日本企業製のバス導入を奨励」した西村康稔氏, ◆「万博の話でもあり、大阪府、市にも管理監督の責任はある」

大阪・関西万博後、留置されたままのEVバス。「EVバスの墓場」と呼ばれている=大阪市城東区の大阪メトロの検車場で(加藤久美子氏提供)

 EV社のバスは万博会場で事故を起こし、全国の納入先でも車両トラブルが多発。昨年9月、国土交通省が同社に点検を指示すると、3台に1台の割合で不具合を抱えていることが判明し、安全性や品質管理が問題視された。同社は昨年11月、ブレーキ関連部品に問題があるとして、一部リコールを国交省に届け出た。

 こうした事態を受け、万博閉幕後のバスは大阪市の大阪メトロの検車場で放置されたまま。ネットでは「EVバスの墓場」などと呼ばれる。3月末、大阪メトロは「当社が求める安全性を確保することは困難と判断した」と路線バスなどへの転用中止を発表した。

◆「なぜEVモーターズ社から購入することになったのか」

 大阪メトロは大阪市が100%出資する。万博で使用した150台分の購入費用は約75億円とされる。このうち40億円余は国、大阪府、市の補助金を充てていた。大阪メトロは今月14日、市に対し、EV社に購入代金の返還を求めていること、補助金を国などに返還する考えを明らかにした。

◆3台に1台の割合で不具合を抱えていることが判明, ◆「なぜEVモーターズ社から購入することになったのか」, ◆「大臣当時、日本企業製のバス導入を奨励」した西村康稔氏, ◆「万博の話でもあり、大阪府、市にも管理監督の責任はある」

大阪市役所(資料写真)

 一方のEV社は同日、資金繰り悪化の懸念から民事再生法の適用を申請したと発表した。同社は公表文で「スポンサー支援による事業再生を実現すべく、早急に選定する」としている。

 この問題を市議会で追及してきた杉田忠裕市議(公明)は「なぜEVモーターズ社から購入することになったのか。その経緯が不透明だ」と指摘する。

◆「大臣当時、日本企業製のバス導入を奨励」した西村康稔氏

 EV社は2019年創業。杉田氏の調査によると、大阪メトロが購入を決めた当時、赤字決算で実績も乏しかった。このため、バス運行を担う子会社の大阪シティバスの取締役会は「国内で実績のある中国・比亜迪(BYD)製がベターだ」とメトロに提案したが、最終的にEV社となった。

◆3台に1台の割合で不具合を抱えていることが判明, ◆「なぜEVモーターズ社から購入することになったのか」, ◆「大臣当時、日本企業製のバス導入を奨励」した西村康稔氏, ◆「万博の話でもあり、大阪府、市にも管理監督の責任はある」

西村康稔元経産相=2020年撮影

 自動車生活ジャーナリストの加藤久美子氏も「業者選定はBYDでほぼ決まりかけていた」と説明する。だが、「(発注側は)万博は日本の技術をアピールする場だからということで日本のメーカーにこだわった。万博のバス購入を検討していた2021年ごろ、日本の企業ではEV社くらいしか選択肢がなかった」という。

 万博開幕直後の昨年4月、西村康稔元経産相はX(旧ツイッター)にこう投稿した。「大臣当時、大阪のバス会社が中国製EVバスの導入を進めていたことに危機感を持ち、日本企業製のバスの導入を奨励した」

◆「万博の話でもあり、大阪府、市にも管理監督の責任はある」

 だが、EV社は中国メーカーに製造を委託している。加藤氏は「中国で製造しているのだから国産ではない。全車点検で3割に不具合が見つかったというのは異常な割合で、普通のメーカーならあり得ない。BYDならトラブルは起きていなかっただろう。経営再建も不透明だ」とみる。

 「こちら特報部」の取材に大阪メトロは「BYDは候補には挙がったが一度でも決定した事実はない」などと回答した。

 業者選定に問題があったことは間違いない。杉田氏は「万博の話でもあり、大阪府、市にも管理監督の責任はある。きちんと明らかにする必要がある」と話す。

◆3台に1台の割合で不具合を抱えていることが判明, ◆「なぜEVモーターズ社から購入することになったのか」, ◆「大臣当時、日本企業製のバス導入を奨励」した西村康稔氏, ◆「万博の話でもあり、大阪府、市にも管理監督の責任はある」

大阪・関西万博後、留置されたままのEVバス=大阪市城東区の大阪メトロの検車場で(加藤久美子氏提供)

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