「AGIは到来する」──松尾豊教授が「年間100社の大学発AIスタートアップ輩出が理想」と語った真意

4月28日に開催された「SusHi Tech Tokyo 2026」の2日目には、松尾豊教授らが登壇するセッションが開催された。

ChatGPTが登場してわずか3年。AIは仕事の現場を急速に塗り替えたが、その先には汎用人工知能(AGI)の時代が控えている。AIからAGIへ変動するこの10年で、大学や大学発スタートアップはどんな役割を担えばいいのか。

東京大学大学院工学系研究科技術経営戦略学専攻の松尾豊教授は、4月28日に開催された「SusHi Tech Tokyo 2026」2日目のセッション『AI時代の「知」はどう守られ、創られ、活用されるのか~大学発スタートアップが目指す姿~』に登壇してこう述べた。

「AIバブルという話もある。だが、結局のところAGIは遅かれ早かれ普及する。人間ができることはすべてAGIによってできるようになる。社会へのインパクトは巨大であり、経済を成長させ、社会のために役立つ形で使わなければならない」(松尾教授)

その上で松尾教授は、日本の勝機として2つの方向性を示した。

1つは金融、医療、製造、教育など各産業にAIを深く組み込む「バーティカルAI」、もう1つは日本が強みを持つ産業用ロボットやロボティクスにAIを統合する「フィジカルAI」だ。「AI能力で統合すれば、非常に強い産業ができあがる」と松尾教授は語る。

そして、それらのAIの開発や実装の担い手として松尾教授が期待を寄せるのが、大学発スタートアップだ。

理想は「年100社のスタートアップ輩出」

東京大学大学院工学系研究科技術経営戦略学専攻の松尾豊教授。

松尾教授の研究室からはこれまでに42社のスタートアップが誕生し、うち2社がIPO、3社がM&Aを経験。輩出した企業の合計時価総額は20億ドルを超えている。同研究室のAI教育プログラムには、世界中から2万6000人以上の学生が参加しているという。

それでも、松尾教授は十分だとは言わなかった。

理想的には、年間100社のスタートアップが研究室から誕生して欲しい。日本には大規模な産業が多く、AIが必要とされる場所もたくさんある。学生には自分のAIスタートアップを作って、伝統的な日本の企業にもパワーを与えて欲しい」(松尾教授)

松尾・岩澤研究室(松尾研)が輩出した企業の一覧(2026年3月時点)。

さらに、松尾教授は研究室の学生たちについて「AI全盛」の前後で大きく変わったことを明かす。

「学生はプログラムを書かなくなった。アイデアを生成AIに入れてコーディングさせ、結果を見て少し修正を加えて提出する。最近では、アイデアそのものまでAIが出してしまうこともある。文献レビューや、漠然とした目的をAIに渡すだけで、いくつものアイデアが出て、それを改善していく」(松尾教授)