たった6年で全損扱い…最新機A220の解体理由 “経済的廃棄” とは

エア・バルティック エアバスA220-300型機

ヨーロッパ・バルト三国のうちのひとつ、ラトビアを代表するフラッグキャリア「エア・バルティック」は、第4四半期の決算でエアバスA220-300型機「機体記号:YL-AAO」が退役したことを明らかにしました。

A220-300はボンバルディアCシリーズとして開発され、2013年に初飛行。CS300型機として納入が進められましたが、2018年からは提携したエアバス社のラインアップに組み込まれ、A220-300と型式を改めました。今回退役した「YL-AAO」は、カナダ・モントリオールのエアバス社工場(旧ボンバルディア工場)で落成。2019年3月3日に初飛行し、3月26日にエア・バルティックへデリバリーされました。モントリールからラトビア・リガ国際空港までフェリー後、同月28日から商業運航に投入されています。

その後は、エア・バルティックのフライトのみならず、ウェットリース“ACMI”(リース契約の一種として、乗務員や整備、保険など込みで貸し出す)として、ルフトハンザドイツ航空、スイスインターナショナルエアラインズ、ユーロウイングス、スカンジナビア航空のフライトを担当。最後の商業飛行は、2024年9月30日のセルビア・ベオグラードから同社のハブ空港でもあるラトビア・リガまでのエア・バルティック便で、わずか5年半の活躍期間になりました。

© FlyTeam PASSENGERさんミュンヘン・フランツヨーゼフシュトラウス空港 2019年8月8日撮影 YL-AAO エアバスA220-300 (BD-500-1A11) エア・バルティック

運航を停止した原因は、A220が搭載するプラット・アンド・ホイットニー社製エンジンの世界的な不具合に起因しており、修理部品の供給不足および修理スロット不足のための計画的なものでした。搭載するPW1000GのGTF(ギヤード・ターボファン)エンジンを修理繰りのため取り外すなど、リガ国際空港で長期間駐機されていました。

2025年6月14日、長期保管中の航空機に対する定期的な整備および、運用復帰に向けた整備の一環として、機体尾部に搭載されている補助動力装置(APU)の始動テストを実施した際にトラブルが発生。大気中のオゾンを濾過する役割を果たすオゾンフィルターを原因とする、極度の熱損傷が機体胴体部および主翼根元部に生じました。機体製造者であるエアバス社は同年12月、当該箇所の修理は経済的に不合理であると結論付け、機体は運用復帰が不可能に。その後エア・バルティックは、機体を廃棄することを決定しました。結果、620万ユーロの損出を計上していますが、一方で事故補償として3,340万米ドルの保険金支払いを受けています。

“修理は経済的に不合理”とは航空業界では良く浸透した考え方で、「Beyond Economical Repair (BER)」と呼ばれています。今回のように航空機全体である場合や、ひとつの部品に対しても同様の措置が取られることがあります。例えば、ひとつのエンジンに20枚取り付けられているファンブレードのうち、1枚に傷が発見されました。この1枚をエンジンから取り外し、修理工場で研磨やそれに伴う非破壊検査など様々な修復措置を実施しましたが、人件費や材料費などを含めた修理代の合計に650万円を要しました。しかし、中古品のファンブレード1枚をアメリカから購入すると500万円で手に入れられる場合、これを購入し付け替えた方がトータルのコストは安く済みます。そして傷が入った1枚を廃棄、もしくは加工して航空愛好家らへ販売するなどで増収を画策する方が妥当と判断できます。同様に今回も、熱損傷を受けた機体胴体部や主翼根元部を修理するために必要な費用を考えると、廃棄するのが妥当と判断されました。保険の契約内容にもよりますが、損傷を受けいていない箇所の部品などは再利用して、同社が保有する55機のA220シリーズへ活用されていることも考えられます。

A220-300は初飛行から13年しか経過していない比較的新しい型式の航空機ですが、実は廃棄=解体された機体はこれが初めてではありません。2019年10月にエジプト航空へ納入された「SU-GFA」は、2年8か月後の2022年6月にコロナ禍の影響などもあり運用を停止。その後2024年にリースや再利用を行う「AZORRA」社が機体を取得し、2025年に部品販売を行う「デルタ・マテリアル・サービス」へ売却後に解体され、デルタ航空が所有する83機のA220シリーズ向けなどに部品供給が行われています。

© FlyTeam dave_0402さんロサンゼルス国際空港 2023年10月29日撮影 N304DU エアバスA220-300 (BD-500-1A11) デルタ航空

航空機の安全な運用には、整備・部品管理・人員配置など多岐にわたる分野で多額のコストが発生します。そのため航空会社は、安全性を最優先としつつも、費用対効果を踏まえた合理的な意思決定が求められます。今回の事例は、そうした運航と経営のバランスの中で下された判断の一例といえます。

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