ジェット燃料高騰、トランプ氏側近が懸念

トランプ米大統領

米航空業界団体「エアラインズ・フォー・アメリカ(A4A)」のクリス・スヌヌ会長(前ニューハンプシャー州知事)は先日、スコット・ベッセント財務長官に対し、イランでの戦争が早期に終結しなければ、すでに高騰している航空運賃がさらに跳ね上がると警告した。

共和党員のスヌヌ氏は数週間にわたり、燃料高が経済に与える悪影響について政権高官に警鐘を鳴らし続けてきた。同氏は、状況が悪化する前に紛争を早期に終結させる必要があると主張している。

政権当局者らもこのメッセージを深刻に受け止めている。

複数の関係者によると、ドナルド・トランプ大統領のアドバイザーらは非公式の場で、燃料コストの上昇により共和党が政治的代償を払うことになるとの懸念を強めている。多くのアドバイザーは、11月の中間選挙前に価格を落ち着かせるため、早期の終戦を望んでいるという。

2月末の米・イスラエルによる攻撃の結果、海上交通の要衝であるホルムズ海峡の通航が滞り、原油、ガソリン、そしてジェット燃料の価格が急騰した。消費者は夏休みの旅行シーズンを前に、高額な旅費に直面している。

公共ラジオ局NPRと公共放送PBS、マリスト大学が実施した最新の世論調査によると、米国人の63%がガソリン価格の上昇はトランプ氏に大きな、または相応の責任があると考えている。また、8割以上の国民がガソリン代の負担が家計を圧迫していると回答した。

米航空業界団体「エアラインズ・フォー・アメリカ(A4A)」のスヌヌ会長は、高騰するジェット燃料価格についてトランプ政権に警告を発した

ジェット燃料価格は開戦後わずか数週間で約2倍に跳ね上がり、高止まりが続いている。航空各社は、今年の追加費用が数十億ドル規模に上り、利益率が圧迫されると述べている。政府のデータによると、米航空大手の3月の燃料支出は50億ドルを超え、前年同月比で30%増加した。

航空各社はコストを価格転嫁するため航空券の値上げを進めており、採算が取れない路線の減便も行っている。

旅行代理店が販売した航空券を処理するエアラインズ・リポーティング(ARC)によると、3月の米国内線エコノミー運賃(往復)の平均価格は前年同月比21%増の570ドル(約8万9000円)となった。これまでのところ、値上げによる予約への悪影響は見られないが、各社は年内を通じてさらなるコスト回収を目指している。

トランプ氏は今週初め、現在の原油価格について「精神を病んだ人々の手から核兵器を取り上げるためなら、安い代償だ」と述べた。マルコ・ルビオ国務長官も、イランが核兵器を保有すればさらに海峡封鎖を続けることが可能となり、「ガソリン価格は1ガロン=8ドルや9ドルになるだろう」と記者団に語った。

一方でトランプ氏は、戦争終結に向けた動きも見せている。5日夜、ホルムズ海峡で立ち往生している商船の護衛計画を一時停止し、イランと紛争終結に向けた合意が成立する可能性があるとの楽観的な見方を示した。

これを受け、6日の原油先物相場は1バレル=100ドルを割り込んだ。米国とイランが仲介者を通じて交渉再開に向けた1ページの枠組み文書を策定しているとの報道が材料視された。

スヌヌ氏は、政権側も経済への悪影響を自覚しているとした上で、「だからこそ、彼らは戦争をできるだけ早く終わらせようとしている」と述べた。しかし、価格が開戦前の水準に戻るには数カ月を要するとし、「海峡が再開されても航空運賃がすぐに下がるわけではない。秋までは高値が続くだろう」とくぎを刺した。

2月末の最初の米・イスラエルによる攻撃以来、スヌヌ氏はワシントンで国家経済会議(NEC)のケビン・ハセット委員長や運輸省幹部、ホワイトハウスの高官らと会談した。ホワイトハウス関係者は、ハセット氏とスヌヌ氏が、燃料価格上昇の航空業界への影響について協議したことを確認した。同関係者によると、会談では高騰するジェット燃料価格が消費者に与える影響を業界としてどう緩和できるかについても話し合われたという。

ホワイトハウスのテイラー・ロジャース報道官補は「大統領とエネルギーチーム全体は、『オペレーション・エピック・フューリー(壮絶な怒り作戦)』による世界のエネルギー市場への短期的な混乱を予測しており、この混乱を緩和するための計画を準備していた」と述べ、石油輸送コストの引き下げを目的として政権が1世紀前の海運法の適用を免除する決定を下したことを指摘した。ロジャース報道官補は、政権が業界幹部と協力して「懸念事項に対処し、取り得る措置を検討し、大統領の政策決定に情報を提供している」と述べた。

給油を受けるユナイテッド航空の旅客機( 今週、ウィスコンシン州ミルウォーキー )

財務省の報道官は、価格上昇にもかかわらず米国経済は堅調だとしたベッセント氏のFOXニュースでの最近のコメントを指摘した。同報道官は、財務省幹部が航空会社幹部と会談し、チケット予約が引き続き好調であることを確認したと述べた。

ベッセント氏は4日にFOXニュースで、「価格の短期的な上昇が米国民に影響を与えていることは認識しているが、この状況が落ち着けば、価格は非常に速やかに低下すると確信している」と語った。

この戦争では航空業界にすでに犠牲者が出ている。格安航空会社(LCC)のスピリット航空だ。同社幹部は、ジェット燃料価格の持続的な急騰により、連邦破産法第11条の適用から脱却する計画が頓挫し、事業閉鎖せざるを得なくなったと述べている。トランプ政権とスピリット航空は、連邦政府から最大5億ドルの財政支援を同社が受けることについて合意に至らなかった。

ショーン・ダフィー運輸長官は、イランとの戦争がスピリット航空破綻の原因ではないと主張し、同社の過去の財務難や、同業ジェットブルーとの合併にバイデン政権が異議を申し立てた決定を指摘した。

他のLCCも米・イスラエルによる攻撃以降、連邦政府に支援を求めている。LCCの団体「バリュー・エアラインズ協会」は先月、燃料コストの増加を相殺するために25億ドルの財政支援を求め、また別途、特定の航空券税の軽減を議員に求める書簡を送った。