「こりゃ初期の日産GT-Rだ…」マツダCX-60の“攻めすぎた”クルマづくりが酷評された残念なワケ【開発者インタビュー】

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フェルディナント・ヤマグチの走りながら考える

今から約5年前、本連載がダイヤモンド・オンラインにやってくるより前の話です。2022年6月に『マツダのラージ戦略、これが「はじめの一歩」』というタイトルで掲載された、マツダの「CX-60」試乗記。その記事の中でフェルさんは「日本のクルマもここまで来たか」「いや……凄いっス……」とCX-60を絶賛したのですが、その後このクルマが発売されると、「ゴツゴツする」「バタバタする」「尻が跳ねる」とオーナーからの評判は散々だったのだそう。同じクルマなのに、片や大絶賛、片や批判の嵐……なぜそんなことが起きたのか?CX-80のインタビューの途中ですが、今回はCX-60の足回り問題に斬り込みます。(コラムニスト フェルディナント・ヤマグチ)

ゴールデンウィーク、宮崎で満喫中です

 みなさまごきげんよう。

 フェルディナント・ヤマグチでございます。

 今週も明るく楽しくヨタ話からまいりましょう。

 GWは宮崎で過ごしております。不肖フェルの勤務する会社は夢のような優良企業でありまして、有給休暇を1日取れば、何と11連休が実現してしまう。こちらでたっぷりと波乗りを楽しんでおります。

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空港へ迎えに来てくださったのは、宮崎の家の改装工事を請け負ってくれている GARDEN WORKS 代表の北原渉くん。ビッグウェーバーでもある彼には公私ともにお世話になっています。ああ軽トラ最強 Photo by Ferdinand Yamaguchi

 宮崎の拠点として昨年5月に購入した「宮崎の家」。今年2月頃から改装工事を始め、連休前の完成を目指していました。しかし宮崎の建築業界もご多分に漏れず「人が足りない」「物が来ない」の二重苦状態で、腕のいい職人さんは取り合いになっているとのこと。休み返上で、突貫工事を続けていただいています。ありがたや。

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突貫工事が続きます。現場のみなさま、ありがとうございます Photo by F.Y.

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大きな椰子の木も入り、庭もイイ感じに。完成が楽しみです Photo by F.Y.

 海では毎日First Trip Surf & Vintageの赤田夫妻にお世話になっております。一向に上達しない不肖フェルに根気強くご指導いただき恐縮至極。がんばります……。

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First Trip Surf & Vintageの赤田夫妻。一向に上達しないフェルに若干キレ気味…… Photo by F.Y.

 夜は宮崎の繁華街に繰り出して、飲めや歌えやの大騒ぎ。お馴染み釜揚げうどんの名店、「戸隠」の猪野夫妻。いつもありがとうございます。

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宮崎滞在中に誕生日を迎えました。ありがとうございました Photo by F.Y.

 ということで本編へとまいりましょう。マツダのラージ商品群、日本のフラッグシップSUV「CX-80」開発者インタビュー第3弾であります。

「CX-60」の足回り問題

 マツダのラージ商品群の記事を書くに当たって、どうしても触れておかなければならない事がある。クルマに詳しい方なら、あるいはマツダ周辺の方ならご存じだろう。ラージ車の嚆矢として放たれた、「CX-60」の「足回り問題」である。

 マツダはブランド価値の向上と収益性の改善を目指して、車格が高く値段も高い「ラージ群」なる商品を展開している。高級車の証であるFRベースのプラットフォームを開発し、直列6気筒エンジンやPHEVなど、プレミアム市場を意識したパワーユニットを搭載した意欲的な商品群だ。その「はじめの一歩」となったのがCX-60である。

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マツダ「CX-60」(広報写真)

 実はCX-60には特別な思い出がある。5年ほど前だったか、後部座席にたくさんの計測機器が積まれたままの、発売直前のシェイクダウンを行うクルマに試乗する機会を得たのだ。

 走り出して間もなく、松田聖子さん風に言えばビビビと来た。メルセデスにもBMWにも引けを取らないドライバビリティ。どんなに飛ばしても怖くないスタビリティ。SUVなのにスポーツカーのようなクイックさも持っていた。「日本のクルマもここまで来たか」と感嘆したものだった。助手席に座る操縦安定性能エンジニア、ムッシー虫谷氏から感想を聞かれた際、「いや……凄いっス……」としか言えない己が語彙力の低さに恥じ入るばかりだった。当時の試乗記事ではそのナチュラルな運転感覚を「歩くように走る」と表現し、マツダの広報部から「あの言葉を拝借できないか?」と打診があり、快諾したことを覚えている。テストコースで乗ったCX-60は、それほどスゴかったのだ。

 しかし、市場の反応は宜しくなかった。特に足回りに関しては「ゴツゴツする」「バタバタする」「尻が跳ねる」と散々なものだった。「走る歓び」を追求するあまりに、「ドライバーズカー」を目指すばかりに、サスペンションを締め過ぎてしまい、一般ユーザーが求める「快適性」から遠くかけ離れてしまったのだ。

 こうした背景があることをご理解いただいたうえで、以下のインタビューを聞いてほしい。

CX-60の足回り問題、CX-80にどう影響?

フェルディナント・ヤマグチ(以下、F):CX-80の背景について、たくさん伺いました。マツダのラージ商品群を語るうえで、どうしても外せない話があります。マツダにとっては、ちょっと嫌な話になると思うのですが、あえて伺います。他ならぬ足回りの話です。嚆矢となったCX-60は、発売当初「硬いし跳ねるしバタバタする」と散々な言われようでした。この問題はCX-80にどのように反映されているのですか?

マツダ 商品開発本部 主査 柴田浩平さん(以下、柴):その前に一つお伝えしておきます。CX-60も市場の声をフィードバックして、発売後から改良しています。CX-80は、それを踏まえた上でセッティングしています。

F:端的に言うと、柔らかくした?

柴:端的と言うか、うんと乱暴に一言でまとめてしまえばそうなります。もちろんそんな単純な話ではないのですが……バネを使ってしっかり段差を吸収させた上で、減衰力を上げてそれを持続させないようにするという、まあセオリー通りと言えばセオリー通りですが。

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マツダ 商品開発本部 主査 柴田浩平さん Photo by AD Takahashi

 説明しよう!(ヤッターマン調)

 自動車のサスペンションはバネとダンパーで構成されている。他にもアーム類やリンク類、スタビライザー等の部品があるのだが、ここへ踏み込むとそれだけで連載5週分くらいの文量になってしまうので、うんと単純化してお話する。

 バネは主にタイヤから来る衝撃を受け止め、吸収する役割で、ダンパーはバネの動きを減衰(ダンピング)させる役割だ。ダンパーがないと、バネがブルンブルンと振動し続けてしまう。

バネとダンパーの関係

 バネとダンパー、両者の関係をざっくり表すと、以下のようになる。

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F:具体的に教えてください。いまおっしゃったのは、バネを柔らかくしたということですか?

柴:そうです。バネを柔らかくして、ダンパーの減衰力を高くした。つまり、ダンパーは硬くした。

F:バネを柔らかくして、ダンパーを硬くした。先に出たCX-60も途中からそのように変えているのですか?

柴:この部分はとても重要なので、丁寧に説明します。CX-60の初期からすれば、かなり時間が経過しています。我々はその間もずっとラージの開発を進めています。時間が経った分熟成していく「進化」の部分と、「硬過ぎないか、これ」という市場からの声に対する「反省」の部分があります。

F:改良点も自分で進化する部分と、フィードバックを生かす部分の二つがある。

柴:その通りです。そしてCX-80は60に比べると、より後席の方を“もてなす”側面が強いクルマです。だから60と同じではダメなんです。60よりも、より乗員に対して「優しさ」のある乗り心地でなければいけません。60よりさらに快適でなければいけません。

F:なるほど。80は単に大きな60ではない、と。

柴:そう。そして60の初期は、滑らかな路面をキビキビ運転する分にはものすごく良かったと今でも思っています。

F:そうですよね。私も発売直前の「ほぼ最終形」というクルマに三次試験場で乗せていただいて、「エラいクルマができたものだ」と感激しましたもの。乗っている最中も、運転後の感想も「スゲー」を連発して、後でテープ起こしの原稿を見ると「フェル:スゲー:以下繰り返し」とか書かれていて、記事化するのに苦労した記憶があります(笑)。

突き上げを感じなかった理由は?

柴:ですが大きな段差の入力が入ったりした時に結構キツめに突き上げがあった。これは事実として間違いなくあった。

F:そういう印象はあまりありませんでしたけど。

広報茂木:フェルさんが乗ったのは規定のコースでした。周回路と連絡路。そこを指示に従い走っただけ……。

F:や、そうか。段差や継ぎ目のない道路。テストコースには欧州を模した石畳や砂利道もあるけれども、そこは走っていない。

柴:結果として、初期のCX-60は段差があると入力がキツめで、その後の収まりも悪いという印象を持たれてしまった。バネをしっかり効かせて、踏ん張って走らせるという考え方が、逆に災いしてしまった……。

F:私は良い道しか乗っていないから、突き上げを感じる機会がありませんでした。でも開発陣のみなさんは、発売前に散々乗っておられるわけですよね。市場から指摘された“突き上げ感”なるものも、イヤというほど味わっているわけですよね。それなのになぜ硬いままで出したのですか? 何を狙っての事ですか? プロ中のプロであるみなさんなら、当然市場の反応も予測できたわけで。

柴:滑らかな路面で本当に自然に「人馬一体」に走れるというところを突き詰めすぎた、と言っていいと思います。

サーキットでの人馬一体感を突き詰めすぎた

F:鏡面道路での人馬一体感を突き詰めすぎてしまった。滑らかなところでは最高だった。つまりは初期のR35 GT-Rのような。

柴:初期のGT-R。そうかもしれません。

F:あれも散々言われました。富士スピードウェイのようなサーキットでは良いけれども、一般道では跳ねる。ストリートでは怖くて飛ばせない、と。

柴:人馬一体。今思えば、そこを突き詰めようとする思いが強過ぎたのかもしれません。

F:人馬一体はマツダの命。

柴:やはりそこがこのクルマのポイントであることは間違いない。だから足回りのセッティングを変えたからと言って、決して「考え方をガラッと変えました」とか、「もう人馬一体はやめました」という意味ではないんです。そこはご理解ください。

F:初期型から比べるとバネを柔らかくしてダンパーを硬くした。それにより跳ねが収まり、乗り心地が良くなった。実にめでたい事なのですが、一方で失ったものもあるはずです。失ったことは何でしょう。

柴:厳密に言うと、ロールは大きくなりますね。

F:物理的にそうなりますよね。バネを柔らかくすれば絶対にロール量は増える。当たり前ですよね。要はそれに乗る客がどう感じるのか。

柴:そうですね。シャープさという点では、ロールが抑えられている分、前の方がシャープだったと感じられる方もいなくはないです。

F:「前の方が良かった」、という声はありませんか? 前のほうがクイックで気持ちよかったという客もいるでしょう。

柴:おられます。もちろん一部のお客様からはそういう声もあるし、私もそれはそれであっていいと思っています。本当に初期型がいいと思ってくださっているお客様は間違いなく一定数おられますし、その方々の感覚は決して間違っていないと思います。初期型には初期型の良さがあるので。

やっぱりクルマは新しいほうがよくできている

F:例えばサーキットに持ち込んで競争させたらどちらが速いのですか? 発売直後のCX-60と、今の60が戦ったら、どちらが速いのでしょう。

柴:実際に競争させたことが無いので、何とも申し上げようがありませんが……。(コーナリングでステアリングを切った際に)アタマが入るスピードとか、いわゆる“気持ちの良さ”では初期型の方が良いと思うのですが、全体の質を高めている分、サーキットで走っても現行型が初期型に負けることはないんじゃないかと思います。限界領域での安定性もありますので。新しい方はそれらも高めていますので。

F:ステアリングをこね回したりとか、自分で「何かやってる感」は初期型のほうが強いかも知れないけれど……。

柴:そういう感覚はあるかもしれません。ですが新しくして「スピード毀損」というのは非常に特殊なケースだと思います。

F:これを言ってしまうと身も蓋もないのだけれど、フィーリングの好き嫌いを抜きにすれば、やっぱりクルマって新しい方が良いんですね。同じモデルならばなおのこと。

柴:そうですね。「工業製品は常にそう」と言えると思います。

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Photo by A.T.

F:(CX-)80のお話を伺いに来たのに、60の話ばかりになって申し訳ありませんが、もう一つ。60は初期型から現行までに、「市場の反応」に合わせて小変更を繰り返しているのですか?現行になってバーンと大きく変えたのか、それともチョコチョコと何度も変えているのか。

柴:「足回りのみ」ということで言うと、フェルさんが1.0と言われる初期型からは変えられていませんね。現行の2.0で一気にバーンと変えた。と言うのも、ブレーキの回生の制御とか、そちらの領域に入ってくるので認可の問題が出てくるからです。開発の期間というマツダ社内の問題もありますし、行政からの認可に関するやりとりという大きなことも関わってくる。ですから「小変更を繰り返す」ことは明確にノーです。

 今回で何とか終わりにしようと思ったのですが、テープ起こしの原稿を見ると、まだまだお伝えしなければいけない“オイシイ部分”がたくさん残っています。ラージ商品群の話は次号に続きます。

(フェルディナント・ヤマグチ)

ゴルフを始めたら、今までと違うことが気になるようになってきた

 こんにちは、AD高橋です。

 4月の中旬にゴルフに行ってきました。

 何を思ったか1年ほど前に急にゴルフをやりたくなって、インドアスタジオに入会。途中、何度も心が折れそうになりながらも練習し、やっとの思いでコースデビュー。スタジオにあるマットの上で打つのとコースで打つのとでは感覚が全く異なり、記念すべきファーストショットはそのまま池に……。パー5のコースでは1打目からミスをしてそのまま立ち直れず、なんと16打も叩く始末……。私を連れて行ってくれた人たちがカートから憐れみの表情でこちらを見ている。あの光景は一生忘れません(笑)。

 他にも連続で池ポチャしたり、深いバンカーからなかなか出せずに苦労したりで、結果は135とボロボロでしたが、やっぱりインドアと違ってコースに出るのは楽しいですね。これから精進していきます。

 ゴルフを始めてみると俄然気になるのが、ゴルフバッグなどをどのように積めるのかということです。これまでも企画に必要な時は実際にゴルフバッグを用意して積載性チェックをしていましたが、自分が始めると、いきなり「当事者」として真剣に考えるようになりました。

CX-80ならゴルフバッグを4つ積める

 マツダの公式YouTubeチャンネルを見ると、CX-80は3列目席を使用した状態でも9.5インチのゴルフバッグが横向きに積めて、3列目席を格納すれば縦に4つ積むことができます。これはいいですね!

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CX-80は、3列目シートを倒せばゴルフバッグを4つ搭載可能。ちなみにスーツケースも4つ載せられる(マツダ公式動画よりキャプチャ)

 荷室が狭いと荷物を積む際にあれこれ考えたり、もともと積んでいたものを下ろしたりしないといけません。これはかなり面倒。私はさまざまな事情で12年ほどコンパクトカーを乗り継いでいるので、キャンプに行くときにかなり四苦八苦していました。何も考えずに荷物を積めるのは、それだけでストレスから解放されます。

 今乗っているクルマはフィアット500C。リアシートを格納すればなんとかゴルフバッグを2つ積むことができますが、荷室の開口部が超絶に狭いので、積むのにかなり苦労します。最悪、ルーフを開けて上から積まなくてはなりません。

 日本では昔からゴルフバッグが4つ積めることがクルマを開発するうえでの重要な指標になっています(参考記事)。お客さんがディーラーで「4つ積める?」と聞いてきて、無理ですというとそれだけで帰ってしまうのだそうです。Lサイズのミニバンは6人でゴルフ場に向かうことがあるので、ゴルフバッグを6個積めることが絶対条件に。

ゴルフバッグを何個積めるか問題は(日本では)非常に重要

 実は現行型エルグランドは、デビュー時に6個のゴルフバッグが積めなかったため、多くのお客さんがアルファードに流れたと言われています。慌てた日産はマイナーチェンジで3列目シートに240mmのロングスライド機構を追加し、ゴルフバッグを6個積めるように改良したほど。

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3列目シートを格納した状態。シートバック裏にあるヒモを引っ張るだけで、簡単に荷室を広げられます(広報写真)

 ミニバンと違い、3列シートのSUVでは6人でゴルフに行く機会はないでしょうから、4つ積めれば十分。そしてパワーバックドアも備わっているので、楽に荷物の積み下ろしができます。

 環境が変わると、同じクルマでもこれまでとは違う目線で見られるようになる。たとえば結婚したり、子どもが生まれたりしたときなども同じです。さまざまな使い方を想定しながら開発するメーカーの人たちの苦労を改めて感じました。

(AD高橋)