レアアース生産施設、中国以外で続々建設

ブラジルにあるアクララのパイロットプラントで作業員を指導する技師
【ゴイアニア(ブラジル)】ブラジルのサバンナ地帯の奥深くにある倉庫で、機械が赤土を処理し、電気自動車(EV)やスマートフォン、ミサイルの製造に不可欠な金属を含む白い岩石を生産している。
だが、これらの鉱物について特に重要な点はその出荷先で、中国向けではなく米国向けとなっているのだ。
中国では、世界のレアアース(希土類:民生・軍事技術に必要な磁石の主原料となる17種類の金属元素)の約70%が採掘されている。しかし、レアアースの供給確保に取り組む他の国々にとって、世界中で採掘されるレアアースの精製の90%を中国が占めていることが大きな懸念材料となっている。
「中国は手ごわい競争相手だ」。カナダのアクララ・リソーシズのラモン・バルア最高経営責任者(CEO)はそう話す。同社は米国に建設予定の精製工場向けにレアアース鉱山を開設する。レアアース鉱石を個々の元素に分離する工場を米国のどこに建設するかを、8月までに決める予定だという。
買い手も決まっている。アクララは昨年、ドイツ企業VACにレアアースを供給する契約を締結した。米自動車大手ゼネラル・モーターズ(GM)などの顧客向けに磁石を製造するため、VACは米国防総省から9400万ドル(約136億円)の資金を得てサウスカロライナ州に工場を建設中だ。
「需要の津波が押し寄せている」とバルア氏は話す。

アクララはブラジルとチリの工場で軽・重レアアースを抽出・加工することを目指している
地政学的な緊張により、ブラジルの鉱物への関心が高まっている。米国が4月に新たな対中関税を課すと、中国はレアアース材料の輸出規制を強化した。これを受け、EV大手テスラなどの米製造業企業が懸念を強め、中国以外の調達先を探す動きを加速させた。一部企業向けのレアアース輸出は5月に再開された。
テスラのイーロン・マスクCEOは4月の決算説明会で、「レアアース磁石の使用ライセンスが得られるよう願っている」と述べた。
米地質調査所(USGS)によると、ブラジルは中国に次ぐ世界第2位のレアアース埋蔵量(約2100万トン)を誇る。これは世界の確認埋蔵量の5分の1超を占め、米国の10倍超に相当する。
ブラジルには、ジスプロシウムやテルビウムなど、より希少な重レアアースも豊富にある。ジスプロシウムとテルビウムは銀白色の金属元素で、高温時に磁石が磁力低下するのを抑制する。EVではモーターが加熱しても磁石で動力を得られるため、これらの重要性は高い。
埋蔵量が巨大であるにもかかわらず、ブラジルはレアアース市場で存在感が小さかった。複雑な採掘規制に加え、中国の先行競合企業に立ち向かおうとする企業があまりおらず、資金調達が難しいことが原因だ。
ブラジルのレアアース採掘・加工コストは中国の約3倍と推定されるため、欧米のバイヤーはブラジル産鉱物に大幅な割増料金を支払う可能性が高い。中国以外でレアアース加工を習得している企業はわずかな上、その習熟は容易ではない。

アクララは価格で中国と競争できないものの、より環境に優しい採掘方法を売り込んでいる

ブラジルは中国に次ぐ世界第2位のレアアース埋蔵量を誇る
ブラジルのアレシャンドレ・シルベイラ鉱業・エネルギー相によると、同国は潜在的なレアアース鉱床の調査を進めており、他の鉱山の廃棄物からレアアースの痕跡を探している。「これ(鉱床が眠っている可能性)は大きなチャンスだ」
ブラジル初の大規模レアアース鉱山が昨年、アクララが生産を計画しているノーバ・ローマから西に約90マイル(約145キロメートル)の場所で操業を開始した。米プライベートエクイティ(PE)投資会社デナム・キャピタルが支援するこのプロジェクトは、高性能磁石の製造に使用されるジスプロシウム、テルビウム、ネオジム、プラセオジムをアジア以外で生産する数少ない施設の一つだ。しかし、生産量の大半は中国向けに出荷される契約となっている。
米国は過去5年間、中国の市場支配が続いた数十年の間に閉鎖されたレアアース加工工場や磁石工場の再生に数億ドルを投じてきた。
ドナルド・トランプ米大統領は2020年、レアアースをはじめとする重要鉱物の対外依存について国家非常事態を宣言し、大統領に返り咲いた後もこの分野を優先課題としている。
欧州は中国への依存度低減に取り組んでいる。欧州連合(EU)は、必要な重要原材料の40%を域内で加工することを目指しており、レアアースなどの指定材料について域外の単一国からの供給を年間域内消費量の65%以内に抑えることで合意した。
アクララは、精製工程を完成させるためのパイロットプラントをゴイアニア近郊に開設した後、約6億ドルを投資し、ノーバ・ローマの鉱山に隣接する大規模プラントの建設を完了させる計画だ。2028年の本格生産開始を目指している。
このプラントではレアアースを部分的に加工し、レアアース炭酸塩を生産する。これは、米国で個々の元素に分離される全元素を含む白い岩石だ。

米国で磁石工場を建設中のドイツ企業が、アクララからレアアースを購入することで合意した
アクララは価格で中国と競争できないものの、より環境に優しい採掘方法を売り込んでいる。
ブラジルの採掘実績は心もとない。2019年に起きた同国の資源大手ヴァーレの尾鉱ダム決壊事故では、272人が死亡した。その4年前には、同社がオーストラリアの資源大手BHPグループと共同所有していた別のダムが決壊している。
それでもブラジルの規制は中国より厳格だ。アクララの採掘工程もリスクが相対的に低いとアナリストらは指摘する。
中国は通常、粘土層に穴を開け、一般的な肥料である硫酸アンモニウム溶液でレアアースを洗い流して採掘する。この工程は比較的安価だが、周辺の土壌や水源を汚染するリスクがある。
アクララはこの方法を採用せず、深さ約30メートルまでの粘土層を掘削し、プラントまで運んで処理する計画だ。
「(レアアースが付着する)粘土層は地表近くにあるため、深く掘る必要がない」。アクララからレアアースを購入する予定のVACのエリック・エッシェンCEOはそう語る。

アクララのプラント内で、レアアース精鉱への加工を待つ粘土が入った袋
残った粘土は洗浄して地中に戻され、尾鉱ダムは不要となる。通常1トン当たり3ポンド(約1.36キロ)未満のレアアースしか含まない土を大量にトラックで運ぶのは高コストだが、採掘現場の汚染は抑えられる。
アクララのパイロットプラントと鉱山を最近視察したレアアース専門家のジョン・ハイカウィ氏は、「環境不安に配慮するということが、アクララのブラジル計画と中国の現状との最大の違いだ」と述べた。