ブラックホークの後継機はティルトローター…米陸軍が採用した「MV75」の全貌

制式採用が決まったベルV-280バロー, 「大きな飛躍」となる新型ティルトローター機の採用, 次世代の軍用ヘリコプター構想, 多目的垂直離着陸機の頭文字をとった「MV-75」, 「即応性と操作性の強化」を実現, 初配備は第101空挺師団になる予定, 太平洋での戦闘に備える

2022年に米陸軍の将来型長距離強襲機(FLRAA)に選定された「ベルV-280バロー(Valor)」。

  • アメリカ陸軍は、ベル社の「V-280バロー(Valor)」を次世代の空挺攻撃機(正式名は「MV-75」)として指定した。
  • このティルトローター機は、老朽化が進む軍用ヘリコプターの現代化を進める陸軍の計画の一角を占めるものだ。
  • 陸軍は2030年代までに、シコルスキー社の「UH-60ブラックホーク」をMV-75で置き換える計画だ。

ヘリコプターのような垂直離着陸に加え、飛行機のような巡航飛行が可能なティルトローター機「ベルV-280バロー(Valor)」を、アメリカ陸軍は次世代の航空強襲機として選定した。現行のロータークラフト(回転翼で飛ぶ飛行機)を、航続距離と速度で上回るべく設計されたこの航空機は、今後10年、アメリカ陸軍の戦闘の在り方を塗り替える可能性がある。

陸軍での正式名では「MV-75」と呼ばれることになった、ベル社製のこのティルトローター機に、陸軍は老朽化が著しい軍用ヘリコプターを現代化する期待をかけている。

アメリカ陸軍では50年近くにわたり、「UH-60ブラックホーク」が輸送任務の主力機として使われてきた。今後数年はブラックホークを運用する計画だが、2030年代には、新たなティルトローター機からなる部隊の展開を最優先で進める計画だという。

制式採用が決まったベルV-280バロー

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V-280は、テキサス州に本拠を構える航空機メーカー、ベル・テキストロンによって開発された。

テキサス州に本拠を構える航空機メーカー、ベル・テキストロン(Bell Textron)社によって開発されたV-280は、「速度、航続距離、操縦の可用性において、既存の概念を塗り替えるような進展を遂げる」よう設計されていると、米陸軍は2020年のプレスリリースでうたっている。

ロールス・ロイス社製のターボシャフト・エンジンを搭載するV-280は、ティルトローター機として設計されている。つまり、ヘリコプターのような垂直離着陸が可能で、しかも飛行時は通常の航空機のように飛行できる。これは、ベルとボーイング・バートル(当時)が開発し、1989年に初飛行した「MV-22 オスプレイ」と似た設計思想だ。

米陸軍の将来型長距離強襲機(FLRAA)の選定にあたっては、各社に対して、最速で時速322マイル(約518km)で巡航飛行ができる性能を持つことが要求された。これは、ブラックホークの巡航速度である時速174マイル(約280km)と比べて2倍近い速度だ。

また、FLRAAの候補となる航空機は、最高で14人のフル装備の乗員を搭載するか、最大で1万ポンド(約4500kg)の外部ペイロードを搭載可能な能力を備えることが要求された。

さらにFLRAAは、高度6000フィート(約1829m)において、最も高温の場合で華氏95度(摂氏35度)でも運用が可能で("high-hot"条件)、無給油で少なくとも1700海里(約3150km)を飛行できなくてはならないと定められていた。

「大きな飛躍」となる新型ティルトローター機の採用

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V-280は、強襲作戦にあたるフル装備の部隊を運べるよう設計されている。

米陸軍の参謀副総長を務めるジェームズ・ミンガス(James Mingus)大将は、MV-75を「技術と能力において大きな飛躍」になると評している。

ミンガス大将は、5月14日に開催された米陸軍航空協会(AAAA)のカンファレンスで、「MV-75で可能となる作戦可能領域は、我が軍が敵軍に接近する手法を塗り替えるものだ」と述べた。

「速度とペイロード、生存性において、これまで1機の航空機では決して手に入らなかった適切なバランスを実現している」

ここでベースになっている構想は、MV-75では1機あたり十数人のフル装備の兵士を強襲作戦に急送することが可能であり、これによって敵軍の不意を突くというものだ。

次世代の軍用ヘリコプター構想

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ベルV-280は、シコルスキー=ボーイング・チームの「デファイアントX」を抑えて、米陸軍の次世代軍用ヘリコプターに選定された。

ベルV-280バローは2022年、シコルスキーとボーイング(Sikorsky-Boeing)の「デファイアントX(Defiant X)」を抑えて、陸軍の将来型長距離強襲機(FLRAA)に選定された。FLRAAは、老朽化が進む軍用ヘリコプターの現代化を進める、陸軍の計画「将来型垂直離着陸機計画(FVL)」の一角を占めるものだ。

陸軍ではまた、将来型攻撃偵察機(FARA)という名称の、偵察用武装ヘリコプターの開発も計画していた。だが、こちらのプログラムは2024年2月、MV-75の配備を優先するために中止された。

陸軍では、「(MV-75の)プログラムに真摯に取り組むだけでなく、導入に向けてさらに迅速化を図るつもりだ」と、ミンガス大将は述べた。

多目的垂直離着陸機の頭文字をとった「MV-75」

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ベルのティルトローター機は、多目的性と垂直離着陸能力を持つことから、陸軍ではMV-75という正式名称で呼ばれることになった。

MV-75という正式名称の「M」は、この航空機の多目的性(multimission)の頭文字、「V」は垂直離着陸(VTOL)機能の頭文字をとったものだ。MV-75の設計はまだ最終決定されていないが、将来的に導入されるティルトローター機では、ベースモデルを設け、そこに特定の任務に適合する機能を導入していく計画だ。

ベルは、2024年にエンジニアリングおよび製造段階に入ったのち、MV-75の試作機6機を製造する契約を結んだ。ベルは、2026年に初飛行を完了し、2028年に小規模な製造を開始する計画だ。MV-75の陸軍への配備は、2030年前後になる予定だ。

「即応性と操作性の強化」を実現

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ベルV-280バローでは、ベースモデルが設けられ、特定の作戦任務に合わせて機能が構成される。

この次世代航空機は、垂直離着陸、空中機動作戦、海上阻止、医療救助、戦闘時の捜索救助、人道的救援、戦術的補給などの任務に就く予定だ。

初配備は第101空挺師団になる予定

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米陸軍の第101空挺師団が、MV-75が配備される最初の前線部隊となる予定だ。

MV-75が配備される最初の前線部隊は、アメリカ陸軍の中で唯一空中機動作戦に特化した第101空挺師団になる予定だ。

同師団の戦闘航空旅団は、60年近くにわたり、攻撃ヘリコプターの「AH-64Dアパッチ・ロングボウ」、多目的ヘリコプターの「U-60Mブラックホーク」、大型輸送ヘリコプターの「CH-47チヌーク」などの急襲用ヘリコプターを運用してきた。

「第101空挺師団は、現実世界の熾烈な戦いがある環境において、幅広い領域で飛行する。その際、固定型の支援インフラがない環境に置かれることも多い」とミンガス大将は語った。

「彼らは、スピードと耐久性、信頼性を必要としている」

太平洋での戦闘に備える

制式採用が決まったベルV-280バロー, 「大きな飛躍」となる新型ティルトローター機の採用, 次世代の軍用ヘリコプター構想, 多目的垂直離着陸機の頭文字をとった「MV-75」, 「即応性と操作性の強化」を実現, 初配備は第101空挺師団になる予定, 太平洋での戦闘に備える

米陸軍は、インド太平洋地域における紛争の可能性に備えて、航空機の現代化を最優先の課題としている。