ローム【6963】12年ぶり最終赤字、株価7割下落の今後は反発の兆し? 復活をかけた構造改革の行方に迫る

長期下落から反発局面 日経平均に採用, パワー半導体の大手、主要顧客は自動車 SiCデバイスに注力, 最終赤字500億円、産機・自動車で需要が急減 AIブームに乗れず, 構造改革プラン始動 リストラ・投資抑制で360億円コスト改善

ローム【6963】12年ぶり最終赤字、株価7割下落の今後は反発の兆し? 復活をかけた構造改革の行方に迫る

長期下落から反発局面 日経平均に採用

ロームの株価は下落トレンドからの反発が見られます。

下落トレンドは、およそ1年9カ月続きました。2023年7月の高値3563.75円から、トランプ関税に伴う25年4月の安値1069円まで、株価は約70%も下落します。25年3月期は12年ぶりの最終赤字であり、業績悪化への懸念が株価に反映されたと考えられます。

その後、関税への懸念の後退に伴い株価は反発します。また、25年5月にAIサーバー向け製品を開発したことを公表すると、期待感から株価は前日比プラス7.5%と急騰しました。さらに6月には日経平均株価への新規採用が発表され、ファンドの組み入れ需要の思惑から買いが集まります。株価は1800円付近まで上昇し、5年前と同水準まで回復しました。

【ロームの株価チャート(過去5年間)】

・株価:1799.5円(2025年6月25日終値)

長期下落から反発局面 日経平均に採用, パワー半導体の大手、主要顧客は自動車 SiCデバイスに注力, 最終赤字500億円、産機・自動車で需要が急減 AIブームに乗れず, 構造改革プラン始動 リストラ・投資抑制で360億円コスト改善

出所:Tradingview

足元で株価が上昇しているとはいえ、PBR(株価純資産倍率)は0.78倍と、純資産から見ると割安感もあります。ロームのPBRは1倍を超えていましたが、株価の下落に伴い23年度末から1倍割れの状況です。現在の純資産で考えたとき、再びPBR 1倍を回復するには、株価は28%上昇する必要があります。

【ロームのPBR(2025年6月25日終値)】

・1株あたり純資産:2303.25円

・PBR:0.78倍

・(参考)東証プライムPBR:1.4倍(2025年5月)

※純資産は2025年3月末

※東証プライムPBRは加重平均

出所:ローム 決算短信、日本取引所グループ その他統計資料

ロームの株価は今後、どのように推移するのでしょうか。同社が苦戦している理由と、今期から取り組む構造改革から探ってみましょう。

パワー半導体の大手、主要顧客は自動車 SiCデバイスに注力

まずは概要を解説します。

ロームは電子部品メーカーの大手です。1954年に抵抗器(レジスター)の開発・販売で京都に創業し、1969年にIC(集積回路)の開発に乗り出しました。現在の主力製品は、主に電気の制御を担うパワー半導体素子およびアナログICです。社名は、創業製品である抵抗器(レジスター)の頭文字「R」と、抵抗値の単位「オーム」の組み合わせに由来します。

電子部品はさまざまな製品に用いられますが、ロームの場合、用途別では自動車向けが中心です。ガソリン車や電気自動車向けに、電気の変換器やLEDなどを生産します。地域別では、国内およびアジアが大半を占めています。自動車業界、特に国内や中国といったアジアの影響が強いということです。

【用途別の売上高比率(2025年3月期)】

・自動車(車載システムなど):49.9%

・産機(工場自動化機器、発電装置など):12.8%

・民生(AV機器、家電など):20.8%

・通信(スマホ、基地局など):4.4%

・コンピューター&ストレージ(パソコン、サーバーなど):12.1%

【地域別の売上高比率(2025年3月期)】

・国内:29.3%

・アジア:57.0%

・アメリカ:5.9%

・ヨーロッパ:7.7%

出所:ローム ファクトブック、決算短信

ロームの特徴は垂直統合生産体制(IDM)にあります。設計に特化し製造部門を持たないファブレスや、製造を受託するファウンドリと異なり、ロームは設計から製造まで自社で行います。在庫リスクの懸念はあるものの、品質や粗利益の向上に期待できる戦略です。

もう1つの特徴がSiC(炭化ケイ素)です。パワー半導体は従来、ウェハー材料にSi(シリコン、ケイ素)が使われてきました。近年は、省電力機能の高さからSiCも使われるようになっています。ロームは2000年から研究開発、10年からSiC半導体の量産を開始しました。09年に独サイクリスタル社を買収してからは、SiCウェハーメーカーとしての顔も持ちます。SiC事業は投資が先行しており赤字ですが、28年3月期には単月での黒字化を目指しています。

事業セグメントは主に3つです。売り上げは主に「LSI」および「半導体素子」で構成されます。なお、これら2セグメントは直近の25年3月期に苦戦し、赤字に転落しました。詳細は後述します。

【セグメント情報(2025年3月期)】

長期下落から反発局面 日経平均に採用, パワー半導体の大手、主要顧客は自動車 SiCデバイスに注力, 最終赤字500億円、産機・自動車で需要が急減 AIブームに乗れず, 構造改革プラン始動 リストラ・投資抑制で360億円コスト改善

※LSI…大規模集積回路。IC(集積回路)の1つ

出所:ローム 決算短信

最終赤字500億円、産機・自動車で需要が急減 AIブームに乗れず

次に業績を確認します。

23年3月期までは好調でした。自動車および産業機器向けで売り上げが伸長し、売上高は過去最高を更新します。3期連続の増収増益となり、営業利益は923億円に達しました。

苦戦は24年3月期に始まります。売り上げがFA機器(工場自動化機器)やエネルギーといった産業機械向けで急減し、25年3月期からは自動車向けでも減少しました。収益低下に伴う在庫評価損および減損損失も発生し、各段階利益はいずれも赤字となりました。自動車向けは電気自動車で成長が鈍化しており、ロームには逆風となっています。

長期下落から反発局面 日経平均に採用, パワー半導体の大手、主要顧客は自動車 SiCデバイスに注力, 最終赤字500億円、産機・自動車で需要が急減 AIブームに乗れず, 構造改革プラン始動 リストラ・投資抑制で360億円コスト改善

出所:ローム 決算短信より著者作成

半導体業界は好調というニュースをよく目にします。なぜロームは苦戦しているのでしょうか。

実は、半導体の好調は主にロジック(CPUなど)とメモリがけん引しています。背景にはAI需要の高まりがあります。一方、アナログICのほか、半導体素子といったIC以外の半導体は横ばいの傾向です。ロームは主力製品の市場が停滞していることが苦戦の原因となっています。

長期下落から反発局面 日経平均に採用, パワー半導体の大手、主要顧客は自動車 SiCデバイスに注力, 最終赤字500億円、産機・自動車で需要が急減 AIブームに乗れず, 構造改革プラン始動 リストラ・投資抑制で360億円コスト改善

出所:世界半導体市場統計(WSTS)より著者作成

今期(26年3月期)は黒字に復帰する計画ですが、利益は低水準にとどまる見通しです。主力の自動車は関税の影響が懸念されるほか、産業機器も回復に時間を要するとの認識であり、厳しい環境が続くと予想します。なお、業績見通しに関税影響は織り込んでいません。直接的な影響は小さいとしつつも、為替や市況への影響は不透明と説明しています。

【ロームの業績予想(2026年3月期)】

・売上高:4400億円(-1.9%)

・営業利益:40億円(前期は401億円の赤字)

・純利益:70億円(前期は501億円の赤字)

※()は前期比

※2025年3月期時点における同社の予想

出所:ローム 決算短信

構造改革プラン始動 リストラ・投資抑制で360億円コスト改善

赤字転落を受け、ロームは今期(26年3月期)からの3カ年を構造改革期間と位置づけました。主に次の4つの施策を通じ、29年3月期時点で360億円以上の利益改善効果を目指します。

【収益改善策による利益改善寄与額の見通し】

・生産拠点の再編(垂直統合生産体制からの一部脱却):100億円以上

・設備投資の圧縮:200億円

・人員数の適正化:20億円

・価格の適正化:40億円

※金額は29年3月期時点における25年3月期比の値

出所:ローム 決算説明会資料

生産拠点の再編は、SiC(炭化ケイ素)を除く国内外の13拠点で進めます。稼働状況の悪い拠点を対象に国内は集約、海外は移設または外注へ置き換える計画です。なお、SiCは再編の対象外としつつも、新たな装置の導入や稼働開始は延期します。

生産拠点の再編により、同社の特徴である垂直統合生産方式からは、一部脱却が進むこととなります。ただし、新しい製造ラインについて顧客から承認を得る必要があることから、移行には時間を要するとしています。

一方、設備投資の圧縮は今期から効果が発現する見込みです。対象はSiCが中心で、今期は全社ベースで850億円まで減少させます(前期は同1330億円)。設備投資の抑制は償却費の減少につながり、利益の増加が期待できます。

さらに、償却費は償却方法の変更でも削減させます。今期から定率法から定額法へ変更しており、償却費は今期に143億円減少する見込みです。

ロームは今期を最終年度とする中期経営計画の進捗中ですが、環境の悪化を受け財務目標の多くは未達に終わる見込みです。同社は上記のコスト削減策に取り組み、売上高5000億円および営業利益率20%の早期達成を目指します。達成に向けた具体的な内容は、今秋に公表する新しい中期経営計画で明らかにする予定です。

文/若山卓也(わかやまFPサービス)

若山 卓也/金融ライター/証券外務員1種

証券会社で個人向け営業を経験し、その後ファイナンシャルプランナーとして独立。金融商品仲介業(IFA)および保険募集人に登録し、金融商品の販売も行う。2017年から金融系ライターとして活動。AFP、証券外務員一種、プライベートバンキング・コーディネーター。