インド「EV人気」急落、内燃車回帰54%の衝撃! ロシア原油がゲームチェンジャー? デロイト調査が示す消費者の本音とは

成長鈍化に悩むEV市場

 電気自動車(EV)導入に陰りが見え始めている。インドでは、電動車への関心がやや後退し、内燃機関(ICE)車の人気が再び高まっている。

【画像】「マジかぁぁぁぁ!」 これが自衛官の「年収」です! グラフで見る(計7枚)

 インド自動車市場で中心的な存在を占めるのはタタモーターズだ。同社はEVの普及に積極的であり、2023年にはインド国内でEV市場のシェア60%を占めていた。EVメーカーとしてのブランド転換も進んでいる。そのタタモーターズをもってしても、今、電動化の流れに陰が差しつつある。

 国際コンサルティング会社デロイトの調査によると、インドの消費者はEVに対し、

・価格の高さ

・航続距離への不安

・充電インフラの未整備

といった課題を理由に、関心を低下させているという。

 調査では、バッテリー式電気自動車(BEV)を購入の選択肢に挙げた消費者は8%にとどまった。2024年調査の10%から後退している。ハイブリッド車(HV)やプラグインハイブリッド車(PHV)を含めたカテゴリー全体でも、支持率は46%から41%へと縮小した。一方で、ICE車を次の購入候補に挙げた層は、2024年の49%から今回54%へと上昇した。

 ただし、EV販売台数そのものは微増傾向にある。2024年度の販売台数は9万1607台で、翌2024~2025年度には10万7000台に拡大した。普及率も2.3%から2.6%へとわずかに上昇している。

 とはいえ、今後さらにEVへの関心が薄れれば、普及率が再び下降に転じる可能性も否定できない。

スズキ現地法人役員「EVはサブカー」

成長鈍化に悩むEV市場, スズキ現地法人役員「EVはサブカー」, EV後退局面の成長加速, 44%依存のロシア原油輸入構造

インド(画像:Pexels)

 もちろん、タタモーターズがEV普及の手を緩めたわけではない。2024年2月、同社は国内のEV用充電スポットを2027年までに40万か所へ拡大する計画を発表した。また、人気スポーツタイプ多目的車(SUV)「ハリアー」の電動モデルである「ハリアーEV」の年内発売も控えており、購入を検討する消費者の注目を集めている。タタモーターズに限らず、

・マルチ・スズキ・インディア

・ヒュンダイ・モーター・インディア

・マヒンドラ&マヒンドラ

・JSW MGモーター・インディア

といった他の主要メーカーも、相次いで新型EVの投入を予定している。

 メーカー各社はEVの普及に向けて計画的な展開を進めているが、業界の専門家からは依然として慎重な見方が示されている。

 マルチ・スズキ・インディアのマーケティング・セールス担当上級執行役員であるパルト・バネルジー氏は、4月1日の記者会見で、消費者の多くがEVを“サブカー”として捉えていると指摘した。

「現在販売されているEVはメインカーではなく、サブカーです。航続距離、充電インフラ、そして販売後のアフターサービスに関する顧客の懸念を解決できなければ、購入者は信頼を寄せてくれないでしょう」(バネルジー氏)

 前述のとおり、デロイトの調査でも、消費者が懸念しているのは、充電にかかる時間や公共インフラの整備状況、さらには自宅での充電環境の不備であることが明らかになっている。

EV後退局面の成長加速

成長鈍化に悩むEV市場, スズキ現地法人役員「EVはサブカー」, EV後退局面の成長加速, 44%依存のロシア原油輸入構造

インド(画像:Pexels)

 マルチ・スズキ・インディアは、スズキ初のBEV「e VITARA(eビターラ)」を2025年夏ごろから発売すると発表している。一方で、インド市場におけるICE車の生産と販売は依然として好調だ。

 同社が発表した2024年度(2024年4月~2025年3月)の総販売台数は、国内販売と輸出を合わせて223万4246台。前年比4.6%の増加となった。これにより、2年連続で年間販売台数200万台を超える実績を達成している。

 インド国内販売では、過去最高の179万5259台を記録。前年を大きく上回る伸びとなった。乗用車市場で約5割のシェアを占める同社にとって、ICE車を検討するインドの消費者の多くがスズキを第一候補とするのは自然な流れだ。

 EVの関心が後退し、ICE車への回帰が進むなかで、今後もスズキ車の販売は堅調に推移すると見られる。

44%依存のロシア原油輸入構造

成長鈍化に悩むEV市場, スズキ現地法人役員「EVはサブカー」, EV後退局面の成長加速, 44%依存のロシア原油輸入構造

リポート「2025 Global Automotive Consumer Study Key Findings: Global Focus Markets」(画像:デロイト)

 背景にはインド特有のエネルギー事情もある。インドは現在、ロシア産原油の最大の輸入国となっている。インド商工省によれば、ロシア産原油が総輸入額に占める割合は、2021年には約2%だったが、2022年には13%に急増。2023年には32%、そして2024年7月には44%に達し、中国を抜いて世界一のロシア産原油輸入国となった。

 2024年には輸入量がやや減少し、シェアは35%に下がったものの、依然として高い水準にある。インドでICE車の人気が衰えない背景には、この

「安価なロシア産原油」

の存在も影響している可能性がある。

 今後、トランプ政権の誕生によりウクライナ情勢の停戦が進めば、原油供給の構図が変化する可能性もある。ただし、当面の間はインドのモータリゼーションにおいて、ガソリンエンジン車が主役の座を維持し続けるとみられる。