NTT【9432】株価150円台が常態化も15期連続増配を計画、2期ぶり増益見込みの上振れ可能性の理由とは

NTT【9432】株価150円台が常態化も15期連続増配を計画、2期ぶり増益見込みの上振れ可能性の理由とは
株価の値上がりから一転の下落トレンド 5年では1.5倍
NTTの株価が低迷しています。コロナショック以降はほぼ右肩上がりに上昇し、2024年1月には192.9円の高値を付けました。しかし、同年5月に当期(25年3月期)の減益見通しを公表したところ、株価は下落に転じます。同年8月には、日本市場の急落で142.5円まで売られました。
以降はおおむね150円前後の取引が続きます。25年4月にはトランプ関税で135.2円の安値をつけたものの、同年5月には一時、24年7月以来となる160円台を回復しました。現在は再び150円台前半まで値を下げています。株価の5年騰落率はプラス55.3%と、日経平均株価(同プラス80.8%)に劣後する水準です。
【NTTの株価チャート(過去5年間)】
・株価:152.9円(2025年7月1日終値)

出所:Tradingview
株価が停滞する一方で、配当利回りは高水準です。今期(26年3月期)は1株あたり5.3円の配当金を予定しており、配当利回りは3.47%となります。これは、東証プライム市場の加重平均(同2.42%、25年6月)より1%ポイント超上回ります。前期比より0.1円多く、予想どおりなら増配は15期連続です。
【NTTの予想配当利回り(2026年3月期)】
・予想配当金:5.3円
・予想配当利回り:3.47%
出所:NTT 決算短信
株価の小さいNTTは、NISAで買いやすい銘柄の1つです。同社は23年7月の株式分割で必要な投資額が従来の25分の1となりました。NISAでは成長投資枠で株式に投資できますが、その投資可能額は年240万円に限られます。NTTなら足元の株価水準で1万5600株まで買うことができ、年間投資可能額の99%を埋められます。配当金も非課税で受け取ることができ、計画どおりなら計8万2680円を受け取れる計算です。
とはいえ、先述のとおりNTTは株価に停滞が見られます。今後はどのように推移するのでしょうか。事業の概要と業績から探ってみましょう。
ドコモ中核の通信グループ、「NTT」が正式社名に 売上はシステムが最大
NTTは1985年に日本電信電話株式会社として設立されました。前身である日本電信電話公社(電電公社)が1952年に発足し、民営化に伴い誕生します。東証には1987年に上場し、一時は時価総額が世界最大となりました。NTTという名称は従来、同社の通称という扱いでしたが、25年7月に正式な社名となりました。NTT法を根拠法に持つ特殊法人で、同法に基づき政府が株式の3分の1以上を保有します。
NTTは国内で最大級の企業であり、グループ企業の数は1000社を超えます。中核子会社はNTTドコモで、25年3月期はグループの純利益の7割を同社が占めました。その他のグループ企業には、地域通信を手掛けるNTT東日本およびNTT西日本、国内外でシステムの開発を手掛けるNTTデータグループなどがあります。
また、マネックス証券やドコモ・ファイナンス(旧オリックス・クレジット)など、有力な金融企業も傘下に持ちます。25年5月には、住信SBIネット銀行の公開買い付けを開始するなど、近年は金融領域でも存在感が増しています。
【セグメント情報(2025年3月期)】

※NTTドコモビジネス…旧・NTTコミュニケーションズ
出所:NTT 決算短信
サービス別の売り上げでは、システムインテグレーションが最大です。システムの開発や保守といったサービスを一貫して提供する事業で、デジタル化などを背景に需要が伸びました。音声やデータ通信が停滞するなか、NTTの最大の収入源となっています。

出所:NTT 有価証券報告書より著者作成
「アイオン」実用化へ投資集中 EBITDAで4兆円めざす
NTTが注力するのが、次世代の通信サービス構想である「IOWN(アイオン)」です。超低遅延かつ大容量・低消費電力を目指す構想で、通信の光技術での完結を目指す「オールフォトニクス・ネットワーク(APN)」など3つの要素で構成されています。
第1世代にあたるアイオン1.0では、遅延を従来の200分の1に抑制し、すでに23年3月から提供が開始されています。アイオン3.0では容量の125倍、アイオン4.0では電力効率の100倍を目標としており、それぞれ28年と32年までの開発を目指しています。
アイオンの実現に向け、投資も集中させます。NTTは28年3月期までの5年間で、アイオンをはじめとした成長分野(※)に約8兆円、既存分野(※)と合わせ約12兆円を投じる計画です。
※成長分野…アイオン、デジタル・データセンター、電力・エネルギー、スマートライフ、不動産、AI・ロボットなど
※既存分野…NTTドコモのコンシューマ通信事業、NTT東日本、NTT西日本
上記の投資に加え、キャッシュ創出力の強化に取り組みます。連結EBITDA(利払い前・税引前・償却前利益)を23年3月期比で20%増加(うち成長分野は同40%増加)させ、28年3月期に約4兆円の達成を目指します。

出所:NTT 決算説明会資料および中期経営計画資料より著者作成
足元で減益、コストが重荷 今期はデータセンター売却で増益を計画
続いて業績を確認しましょう。
NTTは24年3月期に過去最高業績を達成しました。総合ICTやグローバル・ソリューションが好調だったほか、未稼働の通信設備といったノンコア資産の売却益が利益を押し上げました。
翌25年3月期は、引き続き増収となったものの、利益は大きめの減少です。営業利益は前期比14.2%減、純利益は同21.8%減となりました。減益は、前期のノンコア資産の売却益のはく落のほか、総合ICTで顧客基盤の強化やネットワーク品質向上に伴って発生したコストが主因です。営業利益は会社の見通しも下回っており、連結で約1600億円の下振れ、うち総合ICTが約1500億円の下振れとなりました。

出所:NTT 決算短信より著者作成
なお、今期(26年3月期)は増益を予想します。主力の総合ICTは、コスト増の継続などから減益を見込みますが、グローバル・ソリューションでデータセンターの売却益を計上することなどにより、全体では前期比7.3%の営業増益となる計画です。また、売り上げは全セグメントで増加を見込みます。
【NTTの業績予想(2026年3月期)】
・営業収益:14兆1900億円(+3.5%)
・営業利益:1兆7700億円(+7.3%)
・純利益:1兆400億円(+4.0%)
※()は前期比
※2025年3月期時点における同社の予想
出所:NTT 決算短信
なお、上記の予想にNTTデータグループの完全子会社化の影響は反映されていません。 NTTデータグループは、25年3月末で保有比率57.76%の連結子会社でしたが、NTTによる完全子会社化を目的としたTOBが同年6月に成立しました。これにより、NTTデータグループの利益の流出はなくなる見通しであり、連結の純利益は上振れの可能性があることには留意しましょう。
文/若山卓也(わかやまFPサービス)
若山 卓也/金融ライター/証券外務員1種
証券会社で個人向け営業を経験し、その後ファイナンシャルプランナーとして独立。金融商品仲介業(IFA)および保険募集人に登録し、金融商品の販売も行う。2017年から金融系ライターとして活動。AFP、証券外務員一種、プライベートバンキング・コーディネーター。