ガソリン車廃止「カローラ」一部改良の狙いは?

国内「カローラ」は全7モデル, なぜ、大半のモデルをHEVに集約したのか?, 2年連続「年間販売ナンバーワン」を目指して, 期待は大幅改良を施した「カローラクロス」

トヨタの基幹モデルのひとつ「カローラ」シリーズに変化が起きている(写真:トヨタ自動車)

トヨタ自動車は、2025年5月に「カローラ」シリーズの多くのモデルに一部改良を実施した。

【写真】こんなにあった!? 日本国内で販売される「カローラ」シリーズ

注目点は、主要モデルがHEV(ハイブリッド)に一本化され、ガソリンエンジン車を用意するのは、「カローラ アクシオ」と「カローラ フィールダー」「GRカローラ」の3モデルだけとなったことだ。

現在のカローラを取り巻く環境と立ち位置を確認してみよう。

国内「カローラ」は全7モデル

2025年5月、カローラ・シリーズ各モデルの一部改良が相次いで発表された。

5月9日にセダンの「カローラ」、ワゴンの「カローラ ツーリング」、ハッチバックの「カローラ スポーツ」の3モデル、そして5月23日にSUVの「カローラ クロス」で実施。

国内「カローラ」は全7モデル, なぜ、大半のモデルをHEVに集約したのか?, 2年連続「年間販売ナンバーワン」を目指して, 期待は大幅改良を施した「カローラクロス」

一部改良を実施した「カローラ」の基本形、セダン(写真:トヨタ自動車)

改良の内容は、それぞれのモデルで異なっているが、ひとつ共通の部分がある。それが「カーボンニュートラルの実現に向けて、HEV(ハイブリッド)に一本化」というものだ。

スポーティな走りを売りにしていたカローラ スポーツも、「カローラ クロス」に追加された「GR SPORT」グレードも、すべてHEVとなったのだ。

国内「カローラ」は全7モデル, なぜ、大半のモデルをHEVに集約したのか?, 2年連続「年間販売ナンバーワン」を目指して, 期待は大幅改良を施した「カローラクロス」

新たに追加された「カローラ クロス GR SPORT」(写真:トヨタ自動車)

ちなみに現在、日本国内で販売されるカローラは、全部で7モデルもある。

今回の一部改良となったカローラ(セダン)、カローラ ツーリング、カローラ スポーツ、カローラ クロスの4モデルに加えて、法人ユーザーを主なターゲットとした5ナンバーサイズのカローラ アクシオ、カローラ フィールダー、カローラ スポーツの走りを磨いたGRカローラの3モデルがある。

カローラ アクシオ、カローラ フィールダー、GRカローラの3モデルは一部改良がなかったこともあり、パワートレインは従来のままだ。

カローラ アクシオとカローラ フィールダーは、HEVとエンジン車の2種類があって、エンジン車にはMT(マニュアルトランスミッション)も用意されている。

国内「カローラ」は全7モデル, なぜ、大半のモデルをHEVに集約したのか?, 2年連続「年間販売ナンバーワン」を目指して, 期待は大幅改良を施した「カローラクロス」

法人を主なターゲットとして継続生産されてきた「カローラ アクシオ」(写真:トヨタ自動車)

そして本気のスポーツカーであるGRカローラは当然、エンジン車であり、ATとMTが用意されている。

なぜ、大半のモデルをHEVに集約したのか?

では、どうしてトヨタはカローラの多くのモデルで、エンジン車を廃止したのだろうか。そして、なぜ、3モデルにエンジン車を残したのか。

まず、特別なスポーツカーであるGRカローラをHEVにしなかったのは、当然のことだろう。そもそもGRカローラは、2025年3月に発売されたばかりなのだ。発売直後にHEV化されることはありえない。

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最高出力は304PSを誇る「GRカローラ」は特別なモデルで価格も600万円に迫る(写真:トヨタ自動車)

では、他のモデルには、どんな理由があるのだろうか。

最もわかりやすい理由は、販売実績だろう。トヨタの持つ2025年の販売データを見ると。それは一目瞭然だった。

GRカローラを除くすべてのモデルで、エンジン車よりもHEVのほうが数多く売れているのだ。

カローラ・シリーズで最もたくさん売れている「カローラ クロス」に注目すると、2025年1~5月の販売総数2万8450台のうち、エンジン車は3630台しかなかった。割合でいえば、わずか13%である。

カローラ スポーツであっても、販売総数6700台のうち、エンジン車は1170台しかなく、その割合は17%ほど。

国内「カローラ」は全7モデル, なぜ、大半のモデルをHEVに集約したのか?, 2年連続「年間販売ナンバーワン」を目指して, 期待は大幅改良を施した「カローラクロス」

その名の通り、走りの良さを強調する「カローラ スポーツ」(写真:トヨタ自動車)

エンジン車の販売が全体の2割を切っているため、「エンジン車は必要ない」と判断されたのだろう。

一方、エンジン車が残ったカローラ アクシオとカローラ フィールダーでは、事情が異なる。

カローラ アクシオの1~5月の販売総数2220台のうちエンジン車は980台で、44%ほどを占める。カローラ フィールダーは販売総数3910台中1670台で、43%だ。

半数近くがエンジン車となれば、むやみやたらと廃止することはできないだろう。

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貴重な5ナンバーステーションワゴンとしてニーズのあった「カローラ フィールダー」(写真:トヨタ自動車)

この2モデルでエンジン車が売れている理由には、安価なエンジン車を求めるユーザーが多いことがある。また、MT車を求める高齢者が存在するのも、理由のひとつだろう。また、価格にシビアな法人が購入するケースも多い。

カローラ・シリーズの一部改良ラッシュは、ある意味で販売の現状にあわせた調整的な側面があるだろう。ニーズのないところをカットし、その浮いた分を売れているところに充てる、というわけだ。

現行のカローラの発売は、2018年のカローラ スポーツに始まり、2019年にカローラ(セダン)とカローラ ツーリング、そして2021年にカローラ クロスと続いてきた。

最初のカローラ スポーツのデビューからは、8年目を迎えており、モデル末期という状況だ。そのモデル末期を迎えるカローラ・シリーズの販売に、最後の勢いをつけるというのが、今回の一部改良の狙いだろう。

国内「カローラ」は全7モデル, なぜ、大半のモデルをHEVに集約したのか?, 2年連続「年間販売ナンバーワン」を目指して, 期待は大幅改良を施した「カローラクロス」

今回の一部改良では安全装備の充実も図られた(写真:トヨタ自動車)

なお、先代モデルの継続生産であったカローラ アクシオとカローラ フィールダーは、2025年10月に生産終了となることが、2月に発表されている。

現行型は2012年のデビューだから、実に13年ものロングセラーとなったのだ。

2年連続「年間販売ナンバーワン」を目指して

販売に拍車をかけるとはいっても、実のところ現行世代のカローラは、すでにビジネス的に大きな成功を収めている。

振り返ってみれば、カローラは1966年登場の初代が1969年に首位となってから2001年まで、33年間連続での国内乗用車登録連続ナンバーワンという偉大な記録を打ち立てた。

2002年こそホンダ「フィット」にその座を譲ってしまうが、2003年には1位を奪取し、2007年までナンバーワンの座を守り続けた。

ところが、2008年以降はベスト10内にとどまるものの、ベスト3にさえ届かない時代が続く。このころのナンバーワンは、3代目「プリウス」だ。

国内「カローラ」は全7モデル, なぜ、大半のモデルをHEVに集約したのか?, 2年連続「年間販売ナンバーワン」を目指して, 期待は大幅改良を施した「カローラクロス」

いまも見かけることの多い3代目プリウスは大ヒットモデルであった(写真:トヨタ自動車)

ようやくベスト3にまで返り咲いたのが、現行世代が登場する2020年のこと。ここまで13年もかかってしまったのだ。

しかし、現行世代のカローラ・シリーズは健闘し、2022年には2位、そして2024年には、念願の年間ナンバーワンの座を取りもどしている。

この1位奪還が、現行カローラの大きな手柄というのは間違いない。ただし、2025年に入ってカローラの販売には、陰りが見えてきていた。

乗用車の月間販売ランキングを見てみると、2025年の1~5月は「ヤリス」が首位となり、カローラは2位の位置に甘んじている。

このままでは2024年からの2年連続のナンバー1は、相当に難しいという状況となっていたのだ。そういう意味で、5月の一部改良は、年の後半に向けての重要なテコ入れとなる。

期待は大幅改良を施した「カローラクロス」

2025年後半の販売向上のカギを握るのが、カローラ・シリーズの販売の半数近くを占めるSUVのカローラ クロスだ。

フロントまわりのデザイン一新と、新グレード「GR SPORT」の導入は、今回のシリーズをとおした一部改良の中でも最大のものとなる。

国内「カローラ」は全7モデル, なぜ、大半のモデルをHEVに集約したのか?, 2年連続「年間販売ナンバーワン」を目指して, 期待は大幅改良を施した「カローラクロス」

路面にウインカーを映し出す「シグナルロードプロジェクション」(写真:トヨタ自動車)

また、国内初採用となる、ターンランプと同期して路面に走行方向を矢印で表示する「シグナルロードプロジェクション」や、トヨタ初採用の「SNOW EXTRAモード」など、新たな機能の追加もされた。

気合の入った一部改良の内容は、それだけカローラ クロスの販売伸長に、トヨタとしても力を入れている証拠となるだろう。

2年連続のベストセラーが実現し、“強いカローラ”の復活となるのか。それとも、ナンバーワンの座を再び明け渡してしまうのか。2025年後半は、カローラにとって勝負のときとなる。