荏原製作所【6361】株価5年で5.4倍に躍進、バブルの高値を更新 4期連続過去最高益の今後を左右する「3つの柱」とは

35年ぶり上場来高値を突破 配当利回り2%, ポンプと半導体装置が2枚看板 海外比率6割も関税影響は軽微, 業績は順風満帆、4期連続で過去最高 半導体装置が好伸, 中計前倒しで達成 次は「3本の柱」へ集中投資、売り上げ1.5倍以上へ

荏原製作所【6361】株価5年で5.4倍に躍進、バブルの高値を更新 4期連続過去最高益の今後を左右する「3つの柱」とは

35年ぶり上場来高値を突破 配当利回り2%

荏原製作所の株価が強く上昇しています。2024年2月に当時(23年12月期)の本決算を公表すると株価は急伸。同年3月には約35年ぶりに当時の上場来高値(2580円、1989年6月)を更新しました。

現在も高値圏を維持しています。同年8月の日本株急落と、25年4月のトランプ関税ショックでは大きく下落したものの、いずれも比較的早く反発したことから、株価チャートは2つの谷を形成しました。同年7月には、現在の上場来高値である2869.5円まで値上がりします。足元の株価で、5年騰落率は442.28%(5.4倍)にも達します。

【荏原製作所の株価チャート(過去5年間)】

・株価:2712.5円(2025年7月4日終値)

35年ぶり上場来高値を突破 配当利回り2%, ポンプと半導体装置が2枚看板 海外比率6割も関税影響は軽微, 業績は順風満帆、4期連続で過去最高 半導体装置が好伸, 中計前倒しで達成 次は「3本の柱」へ集中投資、売り上げ1.5倍以上へ

出所:Tradingview

株価の上昇で配当利回りは低下傾向ですが、まだ2%前後を維持しています。今期(25年12月期)の予想配当金は1株あたり56円、予想配当利回りは2.06%です。NISAなら成長投資枠で800株まで買うことができ、総受取配当金は4万4800円となります。本来は約8960円の税金が生じますが、NISAなら非課税で配当金を受け取れます。

【荏原製作所の予想配当利回り(2025年12月期)】

・予想配当金:56円

・予想配当利回り:2.06%

出所:荏原製作所 決算短信

なぜ荏原製作所は株価が高騰しているのでしょうか。背景には拡大した業績があるとみられます。同社は近年、高い成長が続いており、投資家の期待が集まっているようです。

投資家が期待する荏原製作所の業績とは、どのような内容なのでしょうか。今後の見通しとともに解説します。

ポンプと半導体装置が2枚看板 海外比率6割も関税影響は軽微

まずは企業の概要を押さえましょう。

荏原製作所は産業機械メーカーの大手です。創業は1912年、当時の画期的な発明だった「ゐのくち渦巻ポンプ」の製造を目的に、ゐのくち式機械事務所として誕生しました。その他の製品も制作する目的から、社名は1920年に現在の荏原製作所へと改めます。

ポンプは現在も同社の象徴的な製品です。ビルやマンションなどに用いられる標準ポンプは国内シェア首位、特定用途のカスタムポンプでも世界トップクラスのシェアを持ちます。標準ポンプは広範な設備で、カスタムポンプは水インフラや石油・ガスといったエネルギーの領域などで用いられています。

もう1つの看板商品が半導体の製造装置です。真空環境を作り出すドライ真空ポンプや、CMP装置(半導体ウェハーの平坦化工程を担う研磨装置)は、いずれも世界シェア2位となっています。生成AIなどから半導体は需要が増加しており、その製造装置は荏原製作所の中核事業となっています。

【セグメント情報(2024年12月期)】

35年ぶり上場来高値を突破 配当利回り2%, ポンプと半導体装置が2枚看板 海外比率6割も関税影響は軽微, 業績は順風満帆、4期連続で過去最高 半導体装置が好伸, 中計前倒しで達成 次は「3本の柱」へ集中投資、売り上げ1.5倍以上へ

出所:荏原製作所 有価証券報告書

世界シェアの高さから、売り上げの多くは海外に由来します。24年12月期は売上収益の66%を海外が占めました。中国などのアジア向けが多く、関税の影響が懸念される北米も14.3%を占めます。なお、米国向けは主に現地の拠点で製造していること、半導体向けの追加関税は免除されていることから、現時点では関税の影響は限定的としています。

【地域別の売上収益(2024年12月期)】

・日本:2907億円

・中国:1902億円

・アジアその他:1292億円

・北米:1237億円

・その他:1329億円

出所:荏原製作所 有価証券報告書

業績は順風満帆、4期連続で過去最高 半導体装置が好伸

続いて業績の推移を解説します。

荏原製作所の業績は順調です。国際会計基準へ移行してからは、すべての期で増収増益を達成しています。

特に21年12月期からは成長が加速します。売り上げは15.5%増、営業利益は1.6倍に増加し、それぞれ過去最高を更新しました。最高業績の更新は、24年12月期で4期連続に達します。

35年ぶり上場来高値を突破 配当利回り2%, ポンプと半導体装置が2枚看板 海外比率6割も関税影響は軽微, 業績は順風満帆、4期連続で過去最高 半導体装置が好伸, 中計前倒しで達成 次は「3本の柱」へ集中投資、売り上げ1.5倍以上へ

出所:荏原製作所 決算短信より著者作成

業績をけん引しているのは精密・電子です。同セグメントはコンポーネント(真空ポンプなど)やCMP装置といった半導体製造装置が売り上げの大半を占めています。半導体企業の設備投資がおおむね高水準で推移したほか、足元はAIの需要も追い風で売り上げも利益も拡大しました。

35年ぶり上場来高値を突破 配当利回り2%, ポンプと半導体装置が2枚看板 海外比率6割も関税影響は軽微, 業績は順風満帆、4期連続で過去最高 半導体装置が好伸, 中計前倒しで達成 次は「3本の柱」へ集中投資、売り上げ1.5倍以上へ

出所:荏原製作所 ファクトブック

今期(25年12月期)も増収増益を予想します。精密・電子は、生成AI関連の需要が継続するほか、期首の受注残も豊富なことから、引き続き業績のけん引役となる見込みです。また建築・産業も、前期計上の減損のはく落を主因に増益を見込みます。

【荏原製作所の業績予想(2025年12月期)】

・売上収益:9000億円(+3.8%)

・営業利益:1015億円(+3.6%)

・純利益:724億円(+1.4%)

※()は前期比

※同第1四半期時点における同社の予想

出所:荏原製作所 決算短信

今期は第1四半期まで決算が公表されています。売上収益は前年同四半期比で9.7%増、営業利益は同17.1%増となり、第1四半期としては過去最高となりました。受注高も、精密・電子セグメントを中心に伸び、同じく過去最高を更新します。

業績進捗率は売上収益が23.6%、営業利益が22.3%と目安の25%をやや下回りますが、おおむね計画どおりとしています。売上収益はエネルギーを除き立ち上がりがやや遅いとした一方で、営業利益は計画を上回っていると説明しました。

中計前倒しで達成 次は「3本の柱」へ集中投資、売り上げ1.5倍以上へ

今期(25年12月期)は中期経営計画の最終年度でもあります。設定した主な財務目標は、資本効率性や収益性を維持しつつ、売り上げの拡大を図るものでした。先述のとおり、荏原製作所は順調に業績を伸ばしていることから、掲げた目標の多くを前期までに達成しています。

【中期経営計画の主な財務目標】

35年ぶり上場来高値を突破 配当利回り2%, ポンプと半導体装置が2枚看板 海外比率6割も関税影響は軽微, 業績は順風満帆、4期連続で過去最高 半導体装置が好伸, 中計前倒しで達成 次は「3本の柱」へ集中投資、売り上げ1.5倍以上へ

※ROIC…投下資本利益率

※ROE…自己資本利益率

出所:荏原製作所 決算説明会資料

荏原製作所は、新しい中期経営計画を26年2月に公表する予定ですが、それに先立ち大まかな経営方針を明らかにしています。主に事業ポートフォリオの改革に言及するもので、5つのセグメントのうち「精密・電子」と「エネルギー」、「建築・産業」の3つを収益の柱に据えると明かしました。35年3月期の売り上げは、24年12月期(8666億円)の1.5倍から2倍を目標に、その90%を3つの柱が占める想定です。

当面は3つの柱に投資を集中させます。精密・電子は、半導体市場の成長を前提に生産能力を拡大させる方針です。エネルギーは、化石燃料の領域でアフターサービスを強化するほか、カーボンニュートラル領域や液化天然ガスへの取り組みを強めます。

建築・産業は、3つの柱では相対的に効率性や収益性が低いという認識です。同じく事業拡大には取り組みつつも、同時に付加価値の最大化を目指します。また、事業ポートフォリオ改革全体の方法として、今後はM&Aも積極的に活用するとしました。

荏原製作所は、同社がベンチマークとして注視する同業他社よりも、営業利益率やROEにかい離があるとの認識です。その原因の1つは、売り上げの規模にあると分析します。荏原製作所の8666億円に対し、当該ベンチマーク企業は2兆5000億円であり、固定費から見た効率性に差がついているとの考えです。

荏原製作所は、3つの柱を中心に売り上げを伸ばし、収益性や効率性の向上を目指します。

文/若山卓也(わかやまFPサービス)

若山 卓也/金融ライター/証券外務員1種

証券会社で個人向け営業を経験し、その後ファイナンシャルプランナーとして独立。金融商品仲介業(IFA)および保険募集人に登録し、金融商品の販売も行う。2017年から金融系ライターとして活動。AFP、証券外務員一種、プライベートバンキング・コーディネーター。