米経済に表れ始めたトランプ効果

UBSによると、自動車を除くコア品目の価格上昇率(月次ベース)は過去3年で最も大きかった

トランプ関税による混迷が小売価格にも影響を及ぼし始めている。連邦政府の調査によれば、移民への取り締まり強化は雇用の伸びの重しとなり始めている。ドナルド・トランプ米大統領が就任からの6カ月で巻き起こしている旋風は、米経済に表れ始めているといえる。

ただその影響はまだ米経済の失速には至っていない。多くの指標によると経済は市場や政府当局が懸念していたよりもはるかにうまくトランプ大統領の貿易戦争を切り抜けている。ウォール・ストリート・ジャーナル(WSJ)の調査では、エコノミストらは現在のリセッション(景気後退)のリスクは数カ月前よりも低下しているとみていることが示された。

だがトランプ氏の政策がハードデータにほとんど影響を残さなかった長い期間は終わりつつあるようだ。

15日発表の6月の消費者物価指数(CPI)は前年同月比2.7%の上昇と、市場予想と一致した。ただ家具や衣料品といった主要な輸入品目の価格は大幅に上昇し、関税に関連した物価上昇の潜在的な兆候がみられた。多くのエコノミストらはこうした傾向が今後数カ月続くと予想している。

UBSによると、自動車を除くコア品目の価格上昇率(月次ベース)は過去3年で最も大きかった。リセッションや関税引き下げがない限り、2027年末まで総合インフレ率が4月の2.3%まで下がることはないとUBSのアナリストらはみている。

15日の米株式市場は引き続き過去最高値付近で推移した。米債券市場では利回りが上昇し、30年債利回りは5月以来初めて5%を上回った。

亀裂は労働市場でも顕在化し始めている。不法就労者に関するデータは信頼性が低いが、不法移民への依存度が大きい産業で雇用の伸びが鈍化したようだ。外国生まれの労働者は3月以降、大幅に減少した。最近の移民は労働省による月次の戸別調査への参加に一層、消極的になっているとみられる。

確かに、米国民は依然として消費を続けており、企業は雇用を創出し続けている。15日には米大手銀行の一部が予想を上回る四半期決算を発表した。

ただ、問題はこうした状況が続くのか、そして続かない場合、世界最大の経済大国がいつまで前進を続けられるのかだ。

トランプ大統領が輸入される銅に対する高関税を発表した後、銅価格は過去最高値を付けた

イエール大学予算研究所によると、13日時点で米国の実効関税率は平均20.6%と、1910年以降で最高の水準に達した。

輸入業者の前倒しの在庫積み増しや長い輸送時間、トランプ氏の気まぐれな交渉戦略により、関税の完全な影響は数カ月先にならないと感じられないかもしれない。だが同研究所は関税の影響で一世帯当たり年間2800ドル相当(約41万6900円)の負担が生じると試算している。

すでに鉄鋼やアルミニウムなど重要な経済的投入物のコストは急上昇している。トランプ氏が8月1日から輸入される銅に対し50%の関税を課すと発表した後、銅価格は過去最高値を付け、データセンターや住宅、半導体関連のコストが上昇することが確実となっている。

マサチューセッツ大学アマースト校の経済学教授、イザベラ・ウェーバー氏は、関税水準に関する確実性が高まれば、より多くの企業に市場シェアを失うことなく価格を引き上げる口実を与える可能性があると指摘。「この力学が実際に働き始めれば、自己強化的なものになりかねない」と述べた。

関税が価格に一段とはっきりと表れ始めたとしても、全体的なインフレにつながるとは限らない。15日発表のCPI統計によると、サービス価格の上昇率は鈍化しており、特に住居費で顕著だった。航空運賃とホテル料金も低調だった。これは一部の家計が余暇の旅行を控えている兆候かもしれない。こうしたデータから、米連邦準備制度理事会(FRB)は需要の低迷が関税のインフレへの波及を抑えると判断し、利下げを再開できると結論付ける可能性がある。

6月の米CPIは前年同月比2.7%の上昇と、市場予想と一致した

ホワイトハウスの当局者らは、輸入業者が最終的に関税を消費者に転嫁するという一般的な見方に反論している。15日のCPI発表後、トランプ氏はソーシャルメディアへの投稿で、インフレ率は「非常に低い」と述べ、再びFRBに利下げを求めた。

米シンクタンク、タックス・ファウンデーションのシニアエコノミスト、アラン・コール氏は、最近可決された共和党の大型減税・歳出法案について、企業が新規投資を費用計上できるようにするなど、一部の面で成長を支える可能性があるとの考えを示した。

「政策のどこかで非効率な部分があっても、経済は(全体的なパフォーマンスを)維持する能力は十分にある」と同氏は述べた。

大手銀行やクレジットカード会社は低所得層の消費に弱さの兆候が見られると最近報告しており、近年の傾向が続いている。しかし、富裕層が過去最高値を更新する株式市場の恩恵を受け、全体的な消費を支えている経済を減速させるには、それだけでは不十分かもしれない。 JPモルガンのジェレミー・バーナム最高財務責任者(CFO)は15日の決算に関する電話会見で、「顧客に弱さの兆候を見いだすのに苦労している」とし、「消費者は基本的に問題がないように見える」と述べた。