グンゼ【3002】株価が急騰した理由とは? 配当利回り5.9%、「100%超」還元が材料視、利益以上を分配する狙いとは

グンゼ【3002】株価が急騰した理由とは? 配当利回り5.9%、「100%超」還元が材料視、利益以上を分配する狙いとは
決算で急騰 株主還元の強化に熱視線
グンゼの株価は2025年5月に急騰します。25年3月期の本決算を発表すると、株価は前日比で一時19%高となる3125円まで上昇しました。営業利益の実績が前期比16.9%増と好調だったこと、また同時に株主還元方針が引き上げられたことが投資家の買いを誘ったと考えられます。
買いはその後も優勢で、現在は3600円台で取引されています。もっとも、株価は低迷が続いていたことから、中長期の上昇率は平均的です。グンゼ株価の5年騰落率はプラス80.4%、日経平均株価は同プラス74.8%と、大きな差はありません。
【グンゼの株価チャート(過去5年間)】
・株価:3630円(2025年7月22日終値)

出所:Tradingview
株主還元の積極化に伴い、今期(26年3月期)は配当金も高水準です。1株あたり予想配当金は前期比21円増配となる216円、配当利回りは5.95%にも達します。配当性向も大幅な引き上げで、同147.7ポイント上昇の250.5%の計画です。
【グンゼの予想配当利回り(2026年3月期)】
・予想配当金:216円
・予想配当利回り:5.95%
出所:グンゼ 決算短信
配当金に期待した投資なら、非課税で受け取れるNISAを活用してもよいかもしれません。グンゼの場合、足元の株価で600株まで購入できます。配当金が計画どおりなら、総受取配当金額は12万9600円となり、本来は課せられる約2万5920円の税金も生じません。
なぜグンゼは株主還元を大きく引き上げたのでしょうか。背景に迫りましょう。
肌着だけじゃない 主力は機能材料と医療材料、国内シェア有数
株主還元方針の前にまずは企業の概要を解説します。
グンゼは繊維やプラスチックの大手メーカーです。1896年に京都の何鹿(いかるが、現・京都府綾部市)郡で創業しました。繊維業が創業の地である何鹿郡の発展にかなうとの目的で、郡是製絲として誕生します。社名は1967年に現在のグンゼへ改めました。
グンゼは肌着メーカーとして有名で、売り上げの多くはアパレル事業が占めています。アパレル事業は「ザ グンゼ」や「ボディワイルド」、「アセドロン」などのブランドで主に肌着を製造・販売しています。また、「クラノスケ」などの小売りも事業範囲です。
もっとも、利益の柱は機能材料です。食品やトイレタリー製品向けの包装フィルムや、OA機器向けの転写ベルトやインク用ローラーカバー、半導体製造用のシートやフィルターなどを手掛けます。シュリンクラベル用フィルムは国内シェアの40%を握ります。
機能材料に次ぐ収益源は医療向け材料です。縫合糸や骨接合材、人工真皮などを製造または仕入れで販売します。生体吸収性材で競争力が高く、組織補強材は国内の90%、人工真皮は同40%のシェアを持ちます。近年は美容医療にも注力しており、レーザー機器なども販売しています。ほかに、スポーツクラブや商業施設の運営や不動産開発、工場やビル向けのエンジニアリングサービスも行っています。
【セグメント情報(25年3月期)】

出所:グンゼ 有価証券報告書
一方、不採算事業の整理も進めています。例えば、電子部品事業からは24年に撤退しました。海外子会社を中心にタッチパネルを製造していましたが、構造改革の一環で売却します。また、包装や印刷向け機械などのメカトロ事業も売却の方針です。
株主還元を大幅強化 ROE 8%まで利益以上を分配へ
冒頭のとおり、グンゼは株主還元方針を大幅に引き上げました。総還元性向は従来の100%から100%超へ、DOE(株主資本配当率)も2.2%以上から4.0%以上へと、目標を上方へ大きく修正します。
【株主還元方針の変更】
・総還元性向:100%超(従来は100%)
・DOE(株主資本配当率):4.0%以上(同2.2%以上)
出所:グンゼ 決算説明会資料
株主還元の積極化の背景にはROE(自己資本利益率)があります。グンゼは従来、ROEは「株主資本コスト以上」を目標に掲げ、数値目標は設定していませんでした。しかし、上記の引き上げに伴い、ROEは8%以上を目指す旨を明確にします。企業はROE 8%以上を目指すべきとの指摘(伊藤レポート)があり、東証においても上場企業の多くが同水準を下回ることを懸念する動きがあることから、この数値が意識されたものと考えられます。
ROEと株主還元の関係は自己資本で説明されます。ROEは自己資本を分母に算出される値であり、配当金や自社株買いは自己資本を減らします。つまり、株主還元は分母である自己資本の減少要因となるため、ROEの上昇要因となります。
もっとも、グンゼの株主還元はこれまでも比較的高い水準でした。最終赤字だった16年3月期を除き、24年3月期までの配当性向はおおむね40~90%台で推移しています。それでも、ROEは8%を下回る水準です。自己資本は純利益で増加するため、総還元性向が100%未満だと基本的に自己資本は増加することから、ROEを押し下げていると考えられます。

出所:グンゼ 決算短信より著者作成
そこで、総還元性向100%超の目標が効いてきます。利益を超えて株主に還元することで、自己資本は利益による増加を還元による減少が上回り、基本的に減少していく構図となります。これにより、ROEの低下が期待されます。
なお、株主還元は財務にストレスを与える要因です。この対策として、DEレシオ(負債資本倍率)は0.3倍程度、自己資本は1000 億円以上、自己資本比率は60%程度という目標も設け、財務健全性の維持にも努める計画です。
事業見直しで利益改善 今期は営業増益も、構造改革で純利益は半減
続いて業績を確認しておきましょう。
グンゼは16年3月期に純損失を経験します。アパレルの好調などから営業増益でしたが、為替変動による損失および電子部品事業の減損損失などから最終赤字となりました。
以降は、コロナ禍の影響を受けた21年3月期を除き、おおむね順調です。売り上げは横ばいながら、利益は増加傾向が見られます。構造改革で不採算事業の整理が進んだことから、利益率が改善している様子がうかがえます。

出所:グンゼ 決算短信より著者作成
今期(26年3月期)も増収および営業増益を見込みます。売上高は事業拡大に取り組むメディカルが、利益はOA市場向けのシェア拡大を見込む機能ソリューションがけん引する予想です。ただし、構造改革費の計上を予定することから、純利益は大きめの減益を計画します。第1四半期の決算は8月6日に公表される予定です。
【グンゼの業績予想(2026年3月期)】
・売上高:1400億円(+2.1%)
・営業利益:85億円(+7.3%)
・純利益:28億円(-55.4%)
※()は前期比
※2025年3月期時点における同社の予想
出所:グンゼ 決算短信
文/若山卓也(わかやまFPサービス)
若山 卓也/金融ライター/証券外務員1種
証券会社で個人向け営業を経験し、その後ファイナンシャルプランナーとして独立。金融商品仲介業(IFA)および保険募集人に登録し、金融商品の販売も行う。2017年から金融系ライターとして活動。AFP、証券外務員一種、プライベートバンキング・コーディネーター。