中国のニトリがひっそりと大量閉店していた…似鳥昭雄会長の想像を超えていた「中国市場の悲惨な現状」

各企業の中国事業は昨今、不動産バブル崩壊による景気の低迷もあり、以前のような旨みが得られなくなっている。

自動車分野では、三菱自動車が完全撤退を表明。日産、ホンダも工場の閉鎖や生産能力の削減を実施する。

小売り分野では、例えばニトリが中国大陸の店舗数を一気に減らしている。同社の2025年3月期の連結決算は、売上高こそ前期比4%増の9289億円だったものの、営業利益は同5.3%減の1176億円、純利益は同8.4%減の825億円だった。似鳥昭雄会長はこの減益の要因の一つとして、中国事業の低迷を挙げている。

企業をとりまく中国経済の現状を多摩大学特別招聘教授の真壁昭夫氏が解説する。

旨みなき中国ビジネス

最近、先進国企業の中国事業は重大な転換点を迎えている。

多くの海外企業が中国から撤退したり、合弁事業を解消したりする動きが目立っている。わが国企業の中でも、TOTOが中国にある2つの製造拠点の閉鎖を発表した。ここへきて、中国の不動産バブル崩壊の影響は住宅設備分野にも及んでいる。中国ビジネスにこれまでのメリットがなくなっているとみられる。

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photo by Gettyimages

その背景には、中国では生産年齢人口の減少により、労働賃金が上昇していることがある。

バブル崩壊により、経済全体にデフレ圧力は高まっている。新エネルギー車の購入補助金によりEVの販売は堅調のようだが、市場の競争は一段と激化している。BYDや浙江吉利(ジーリー)は値下げを繰り返し、シャオミなども新規参入している。過度な値下げにより企業の収益性は悪化しており、国務院が競争激化の監督を強めなければならなくなった。

また、中国当局は反スパイ法違反で海外企業の社員を拘束したり、出国禁止にしたりしている。2023年には、企業調査会社のミンツグループやコンサルティングファームのベイン・アンド・カンパニーといった米国企業の事務所が強制捜査の対象となり、ミンツの従業員は身柄を拘束された。拘束された側が泣き寝入りせざるを得ないケースは多く、米国政府も中国で活動する自国企業に注意喚起を行っている。

チャイナリスクを軽減するため、製造拠点を中国からアジア新興国にシフトする動きは増えるだろう。中国市場で一定のシェアを維持しながら、中長期的に個人消費の増加期待が高い米国やインドでの売り上げ増加を目指す企業も増えると考えられる。テスラは、早くもインドでショールームを開設した。企業の脱中国は、わが国企業の戦略転換のきっかけとなるはずだ。

ドイツを甦らせた過去も

ここ数年で、中国の合弁事業を見直し、一部の拠点を閉鎖する主要先進国や韓国の企業が増えた。

売上高48兆円超のトヨタ自動車ですら、一時、販売減少に悩まされるほど中国の需要は落ち込んだ。中国の化粧品需要増加のため中国事業を拡大した資生堂も、2024年には同事業低迷が鮮明化し、一部の店舗や事務所の閉鎖に踏み切った。

これは、世界経済における中国の地位が変化していることを意味する。

1978年の改革開放以降、中国政府は経済特区を設定した。海外企業の直接投資を誘致し、主に鉄鋼や石油化学の分野で国内企業への技術移転を加速させた。

2000年代、工業化は進展し、農村部から沿海部に大量に労働力(農民工)が供給され、“世界の工場”としての地位を確立した。そうした変化に目をつけ、主要先進国の自動車メーカーはこぞって中国で合弁事業を設立し、シェアの拡大に取り組んだ。

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中国戦略で目立ったのがドイツ勢だった。

独フォルクスワーゲングループの一員であるメルセデス・ベンツは、メルケル元首相のトップセールスも相まって中国で地歩を築いた。自動車メーカーの進出により、総合化学メーカーのBASFや鉄鋼メーカーのティッセンクルップなど関連企業の中国進出も加速した。ドイツ企業の対中進出は一時、“欧州の病人”と呼ばれたドイツ経済の持ち直しに寄与した。

しかし、そうした状況はいつまでも続かない。

中国から撤退する企業が増加

2013年以降、中国の生産年齢人口は減少し労働コストは上昇し始めた。2016年以降はIT先端分野での米中対立の先鋭化により、インドやベトナムなどに生産拠点を移す多国籍企業も増加。不動産バブル崩壊で2021年頃から足許まで不動産価格は下落基調だ。

デフレ圧力は高まり、企業業績は悪化している。中国の世界の工場としての地位は低下し、過剰生産能力のリストラに取り組む企業は増加傾向にある。

自動車分野では、フォルクスワーゲンが今年7月、2008年に設立した南京工場(国有自動車大手の上海汽車集団と合弁工場)の生産を停止したことを認め、今年後半には閉鎖する方針だという。

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米GMも今年2月、国有・上海汽車集団と合弁で運営していた遼寧省の工場を閉鎖。2024年にはメルセデス・ベンツがBYDとの合弁を解消している。

欧州ステランティスと国有自動車大手、広州汽車集団の合弁事業(広汽FCA)も破産した。広汽FCAは工場などを5回公売にかけたが入札はなかったという。中国企業にとっても、価格競争の激化による粗利率の低下は深刻だ。

わが国の自動車メーカーも事業の見直しが相次ぐ。三菱自動車は7月23日に中国事業からの完全撤退を発表。日産は最新鋭の武漢工場を2025年度中に閉鎖する方針を固めており、すでにホンダは広州エンジン工場の生産能力を半減させている。

石油化学分野では、三井化学が合弁事業を相手側の中国企業に売却。日本製鉄は宝山鋼鉄との自動車用鋼板の合弁事業を解消した。技術移転の加速により、中国企業は多国籍企業のライバルになり始めた。合弁を続けると競争力の源泉を中国側に吸い取られるリスクも増す。

ニトリもひっそりと大量閉店

さらに個人向けのモノやサービスの分野では、アパレルメーカーのバロックジャパンリミテッドが今年4月、中国合弁2社の全株式を売却した。ポーラ・オルビスホールディングスも5月にオルビス北京の解散を発表している。

家具のニトリも積極展開してきた中国事業を縮小した。1月17日には106店舗あったが、6月末時点で83店舗にまで減少している。わずか半年で23店舗も閉店した。5月に実施された同社の決算説明会では、不況にある中国で大型店舗を出店したことが減益の一因になったと似鳥昭雄会長は述べ、自身の判断の誤りに反省の色を見せていた。

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中国のニトリ/photo by Gettyimages

2024年には、100均ショップで知られるダイソーも上海市内の店舗を閉鎖し、三越伊勢丹ホールディングスも27年続いた上海梅龍鎮伊勢丹を閉店した。

お茶の文化が根付いていた中国にコーヒーを持ち込み、ドル箱市場に育てた米スターバックスの撤退観測も浮上している。

近年、スターバックスは低価格戦略でシェアを伸ばすミーシュエ、ラッキンコーヒーなどに追い抜かれ、店舗数で中国3位に転落した。スターバックスは否定しているものの、主要投資家の間では同社が中国事業の売却に追い込まれるとの見方が増えている。

つづく記事〈「もう中国とはサヨナラしたい」が企業の本音か…拘束リスクが高いのに儲からない「中国ビジネスの悪夢」〉では、グローバル企業が次々逃げ出す中国の現状をさらに解説する。