「荷物置き場まで要求が…」万博開幕で明らかになった大阪が抱える「深刻なひずみ」と「当事者の怒り」

開幕した大阪・関西万博
宿泊事業者の「怒り」
工事費、整備費や運営費などが予定を大幅に超過するなど、メディアによる厳しい追及が続くなか、大阪・関西万博が開幕し、10日あまりが経過した。
万博協会が発表した4月12日時点でのチケット実売は、目標の1400万枚を大幅に下回る970万人に留まる。そのうち640万枚以上は企業や団体の購入分ということもあり、厳しい現実を突きつけられた格好だ。
しかも、「並ばない万博」を標榜しているにもかかわらず、入場ゲートやパビリオンに大行列ができる様子が全国ネットに流されるなど“ハプニング”が続出している。毎日新聞社が行った世論調査では、「たぶん行かない」「行かない」という回答が87%を占めるなど、お膝元である関西や周辺県を除けば、関心も広がっていない。
一方で、着実に好影響が出始めている業種もある。万博開催の恩恵が最も多い業種の1つに宿泊業者が挙げられるだろう。平時と比較すると大阪市内のホテルは平時の1.4~2倍近くまで価格が膨れ上がっている。中には「5月まで予約で満席」というホテルもあり、価格上昇は顕著となっている。
大阪ミナミ近辺のホテル関係者が言う。
「インバウンド客が押し寄せ、大都市圏の宿泊料金は軒並み上昇していますが、大阪は比較的、値上げ幅を抑えられていた。万博やインバウンド需要増を見込んで、ホテル側が出店を進めてきたからです。ホテルの数はある程度、担保できていたのですが、それでも万博開催が迫るにつれて予約が伸びると、客室不足となって価格帯は上がりました。とはいえ、常識的な上昇幅に留まっています」
需要増を見越して出店を増やしていたのは主に高級路線の外資系ホテルだったが、万博期間はさらに値上げされ、国内の一般的な旅行者にとってはなかなか手が届かない価格設定となっている。だが、ホテル関係者が歓喜の声を上げているかといえば、決してそうではない。大阪市内のホテル従業員が嘆く。
「大阪府と市から『荷物の置き場所がないから』ホテルを使わせてくれ、という要望が何度も来ており、その対応に疲弊しきっています。ウチだけではなく他のホテルに対しても同じ話を聞きます。上長は、『いったい何様のつもりなんだ』と激怒していますよ。当然、万博ファーストに納得するホテルばかりではないですから…」
深刻な「温度差」

万博仕様にラッピングされた天王寺駅
旅客輸送を担う業界からは悲痛な声が聞こえている。万博会場への主なアクセスは大阪メトロ中央線とシャトルバス。埋立地にある会場にアクセスするトンネルは一本しかない。利用客はバスを優先する傾向が出ており、割を食いそうなのがタクシーやハイヤー業界だ。大阪市内のタクシー会社の幹部が怒りをあらわにする。
「そもそも、万博会場のタクシーの待機場所は50台分しかない。行きよりも、帰りの利用が多くなることは自明の理なのですが……。今後、暖かくなるにつれて利用増が見込まれるなか、改善されていくのか。特に海外から来るお客様にとって、万博会場周辺でタクシーが利用しづらくなっています」
ハイヤーの運転手はこうも話すのだった。
「万博を見越して企業利用が伸びると予測していましたが、微増でした。関西圏の企業の予約はありますが、それ以外の地域は正直、伸びていない。大阪とそれ以外の地域の温度差を感じてしまいます」
だが、万博に出展しているある企業の社員は希望を捨てていない。
「ネガティブな報道が目立ったので不安が大きかったですが、地元大阪の盛り上がりもあり、初速は悪くない。大阪以外の人にもこの熱が広がり、このまま全国的に伸びてくれることを願うばかりです」
万博協会が主張するように、小さな改善を繰り返すことで利便性が増し、現地の熱が全国に広がればいいのだが――。