住民アンケート、AIが分析して出した施策は… AI活用最前線【議会・行政編】

生成AIで作成した文案を基に答弁する相模原市の本村賢太郎市長(下)

 人工知能(AI)の活用が身の回りのさまざまな分野で進んでいる。議会答弁をAIに作成させているほか、住民のアンケートをAIが短時間でまとめることもできる。政治の世界にも確実にAI変革の波が押し寄せている。

 企業や自治体の中には、長時間にわたる単純な仕事や、膨大な量の書類を扱う作業をAIに代替させようとする取り組みが多く見られる。議会、行政の分野での取り組み例を紹介する。(共同通信=沢野林太郎)

【議会編】AIを議会答弁に本格導入(相模原市)

相模原市議会で、生成AIで文案を作成し答弁する本村賢太郎市長

 相模原市は2024年6月の議会から、市長答弁の文案作成に生成AIを本格的に導入した。AIに市議から通告された質問文を入力すると、瞬時に答弁の原案を作成。職員が加筆や修正をした上で、最終的に市長が文案を完成させる。市は職員の負担軽減や残業時間の削減につながると期待している。AIはNECが開発した。議会の質問数は約240に上り、このうち23問の答弁の原案づくりにAIを使った。

 生成AIを起動させ、議員の質問「市の情報通信技術(ICT)総合戦略と、予定されている条例の制定との関連について」を入力すると、AIはすぐに「ICTを効果的に活用する」「着実に進展している」などと答弁の原案をつくった。

 課長は「条例はこれから策定を検討する」との項目を入れて、AIに答弁の原案をつくり直すよう指示。職員はさらに事実関係を確認し文面を手直しする。何回かこの作業を繰り返し、原案を完成させた。職員が原案づくりにかける時間は1問当たり約30分から約10分に短縮できた。

生成AIで答弁を作成する相模原市の本村賢太郎市長(中央)ら

 AIは過去5年半分の市議の質問や市長の答弁、市長の記者会見の発言を学習し、それを基に答弁の原案を作成する。AIは学習データが少ない政策や抽象的な内容について文案作成を指示されると、指示を無視したり取り違えたりする。

 本村賢太郎市長は「人の目で確認した上で人のぬくもりや情熱、魂を感じられるような文章に仕上げている」と話した。

 答弁書を作成するには、過去の大量の答弁書を調べなければならないため、多くの時間がかかっていた。短時間で当該箇所が分かり答弁例が作成されることで作業量が削減された。しかし過去に例がない答弁や将来の政策については人間でなければ答えられない。

 議員が質問内容も同様にAIに生成させることも可能だ。AIが質問しAIが答弁する「AI議会」のような議会になってしまう可能性がある。そうすると「人」である議員や市長でしかできないことは何なのか。直接市民に悩みや相談事などの話を聞きに行き、解決すべき問題を明らかにし、将来を議論することだろう。

【行政編】AIで住民アンケート分析、コメ配布(東京都品川区)

コメを受け取る親子

 東京都品川区は2024年8月、小中学生がいる子育て世帯にコメの無償配布を始めた。区民アンケートの回答を生成AIで分析した結果を参考にした。小中学生1人につき2キロを、所得制限を設けずに配布した。学校給食のない夏休み期間中の家計を手助けする。2025年の夏は対象を高校生の子どもがいる世帯にも拡大した。

 区は区民アンケートを実施し、約10万人から回答を得た。計約650万字の自由記述欄の文章を生成AIで分析すると、「生活に直結する食の支援」に対する要望が多かった。人手で分析すると1週間以上かかるが、AIは1時間半で済ませたという。

 AI分析を基に担当課が具体的な支援策を考えた。区議会が補正予算を可決し、コメ10トンの購入費として約800万円の予算を確保した。

 2024年分の配布でコメを受け取った中学1年の女子生徒は「最近は物価が高いので助かる」と話した。森沢恭子区長は「AIなら区民の要望を効率良く、主観にとらわれずにまとめられる」と語った。

品川区の森沢恭子区長

 10万人分のアンケート結果を人の目ですべて読むのは膨大な時間がかかる。担当職員は、アンケート結果を精査するのに苦労していた。平等で公平にデータをまとめようとしても、政策として決めようとすると担当者の思い入れや自分の問題意識に偏ってしまうこともあるという。

 今回、AIがまとめた結果は「食」や「防災」に関する希望が多かった。区では、過去に災害があった地域に応援で派遣された職員の声を踏まえてコメの配布に決めたという。AIが出した客観的な結果と、人の知見がうまくマッチした形だ。