【社労士が解説】今日本で「静かな退職」が増えている その実態と「企業・労働者」双方のデメリットとは
不満につながりやすい「年代別平均給与」も深堀り

【社労士が解説】今日本で「静かな退職」が増えている その実態と「企業・労働者」双方のデメリットとは
終身雇用制度が崩れ、転職する人が増える昨今。一方で、会社への不満や仕事に対する価値観の変化などにより、会社を辞めない「静かな退職」を選択する人が増えています。
本記事では、最新のリリース結果をもとに「静かな退職」の実態とその理由について、社労士の立場から解説します。
静かな退職を選択するデメリットなども紹介しますので、これからの働き方やキャリアプランについて考えるときの参考にしてください。
※編集部注:外部配信先では図表などの画像を全部閲覧できない場合があります。その際はLIMO内でご確認ください。
「静かな退職」とは
静かな退職とは、「退職はしないが、与えられた仕事または最低限の仕事しかしない働き方」のことです。静かな退職という言葉は、2022年にアメリカで関心を高めた「Quiet Quitting」の日本語訳です。
自分の成長やキャリアアップ、給与アップに向けて仕事に取り組む人がいる一方、静かな退職を選択する人が増えていると言われています。
「静かな退職」をしている人の割合は約16%?
株式会社スコラ・コンサルトの調査(社員100名以上の企業に勤める管理職や一般社員を対象とした意識調査/2025年8月4日公表)によると、「割り当てられた業務以上のことはなるべくやらないようにしている」と回答した人は全体の約40%でした。

出所:株式会社スコラ・コンサルト「全国の一般社員・管理職2,106名へのアンケート調査 「静かな退職者」は全体の16.3%、性別・年代問わず均等に存在」
内訳は、「よく当てはまる」という回答が全体の7.9%、「まあ当てはまる」が32.9%です。
「よく当てはまる」または「まあ当てはまる」と回答した人の約40%は転職意向がないことから、調査対象の約16%(=40%×40%)が「静かな退職」をしていると言うこともできます。
「よく当てはまる」または「まあ当てはまる」と回答した人の割合を年代別に見ると次の通りです。

出所:株式会社スコラ・コンサルト「全国の一般社員・管理職2,106名へのアンケート調査 「静かな退職者」は全体の16.3%、性別・年代問わず均等に存在」もとに筆者作成
・20歳代:よく当てはまる10.9%・まあ当てはまる40.6%(合計51.5%)
・30歳代:よく当てはまる8.0%・まあ当てはまる38.0%(合計46.0%)
・40歳代:よく当てはまる7.6%・まあ当てはまる28.1%(合計35.7%)
・50歳代:よく当てはまる5.2%・まあ当てはまる25.6%(合計30.8%)
・全年代:よく当てはまる7.9%・まあ当てはまる32.9%(合計40.8%)
20歳代では全体の半数以上の人が該当しており、30歳代を含めて年代が若い人ほど「静かな退職」をしている可能性が高い状況です。
「静かな退職」が起こる理由
静かな退職を選択する理由は年代によって、また人によって異なりますが、前述の株式会社スコラ・コンサルトの調査によると、従業員のやる気が下がった理由は以下の通りです。
()内は複数回答で回答者の全体に占める割合です。

出所:株式会社スコラ・コンサルト「全国の一般社員・管理職2,106名へのアンケート調査 「静かな退職者」は全体の16.3%、性別・年代問わず均等に存在」
・頑張りに対する評価や報酬が見合わない(41.1%)
・会社の体質や企業風土に不満がある(40.0%)
・昇給・昇進がほとんど期待できない(38.7%)
・会社や職場の問題がなかなか改善されない(34.4%)
・業務量が多すぎた、ノルマやプレッシャーに疲れた(32.0%)
・上司に不満がある(31.2%)
上記理由などにより仕事に対する熱意を失い、転職または静かな退職を選択する人が一定数いると考えられます。また、会社に対する不満だけでなく、以下の仕事に対する価値観の変化なども一因と考えていいでしょう。
・ワークライフバランス、または家庭生活を優先した働き方を希望する人が増えている
・終身雇用制度が崩れつつあり、将来の雇用やキャリアに不安感が広がっている
・過労死やメンタルヘルス問題などに対する意識が高まった
・日本経済の低迷によって賃金上昇率が低下している
・若い世代に「タイパ」や「コスパ」を重視する考え方が広まっている など
ここまで、静かな退職が増えている状況やその理由、背景などについて解説しました。
次章では、会社への不満の1つである給与の状況と、静かな退職によるデメリットについて解説します。
年代別の平均年収はいくら?
前述の通り、従業員のやる気が下がった理由の第1位と第3位は給与に関することです。では、会社員の平均年収は実際にどれくらいでしょう。年代別に見ると次の通りです。

年代別の平均年収
・20歳以上24歳以下:男性279万円・女性253万円・男女計267万円
・25歳以上29歳以下:男性429万円・女性353万円・男女計394万円
・30歳以上34歳以下:男性492万円・女性345万円・男女計431万円
・35歳以上39歳以下:男性556万円・女性336万円・男女計466万円
・40歳以上44歳以下:男性612万円・女性343万円・男女計501万円
・45歳以上49歳以下:男性653万円・女性343万円・男女計521万円
・50歳以上54歳以下:男性689万円・女性330万円・男女計540万円
・55歳以上59歳以下:男性712万円・女性278万円・男女計545万円
・60歳以上64歳以下:男性573万円・女性222万円・男女計445万円
・全年齢平均:男性569万円・女性316万円・男女計460万円
男性と男女計の平均年収は50歳代後半まで右肩上がりであるのに対し、女性については30歳代後半以降低下傾向にあります。
結婚や出産による退職、労働時間制限などが影響していると考えられます。
男性については会社員の経験を積むことによって年収が確実に上昇しているとも言えますが、10年前と比較すると上昇率は10%未満で給与水準は低迷していると考えていいでしょう。
「静かな退職」のデメリット(企業、従業員)
静かな退職は、企業だけでなく従業員にとってもデメリットがあります。企業側の主なデメリットは次の通りです。
・組織内の連携が取れなくなり組織全体の生産性が低下したり、職場の雰囲気が悪くなる
・仕事を頑張る人、優秀な人の負担が重くなり不満が高まる
・顧客サービスの品質が低下する
・組織の後継者が育たなくなる
・生産性の低下などにより管理職の負担が大きくなる など
従業員にとっても次のデメリットが考えられます。
・自己の成長やスキルアップ、キャリアアップの機会を失う
・昇格や昇給ができずに経済的に豊かになれない
・職場内の人間関係が悪化する
・ストレスを感じたり自己評価が低下したりする
・キャリア・スキル不足によって転職が不利になる
・状況によっては解雇されるリスクもある など
まとめにかえて
静かな退職とは、「退職はしないが、与えられた仕事または最低限の仕事しかしない働き方」のことです。株式会社スコラ・コンサルトの調査では、調査対象者の約16%が該当していると考えられます。
静かな退職を選択する人が増えたのは、会社への不満だけでなく、ワークライフバランス重視の多様な働き方を求める人が増えたことなど、仕事に対する価値観の変化も一因と言えるでしょう。
静かな退職のデメリットも十分理解したうえで、働き方や将来のことを考えてみましょう。
参考資料
・株式会社スコラ・コンサルト「全国の一般社員・管理職2,106名へのアンケート調査 「静かな退職者」は全体の16.3%、性別・年代問わず均等に存在」
・国税庁「令和5年分 民間給与実態統計調査」
・国税庁「令和5年分民間給与実態統計調査結果について」