アップルCEO、「規制当局と引き続き議論をする」

アップルの東京オフィスで、日本のアプリ開発者と交流するアップルのCEO、ティム・クック氏。「アメミル」アプリの海外展開についての質問をしていた(提供:アップル)
アップルのCEO、ティム・クック氏は2025年9月23日から東京を訪れている。その動静は、自身や要人のXで追いかけることができる。
【写真を見る】日本の開発者と交流するAppleのティム・クックCEO
Number_iとともにセルフィーを撮影し、アップル銀座のリニューアルオープンが9月26日であることをXで発表し、さらに同社の空間コンピュータである「Apple Vision Pro」向けの限定コンテンツや、直営店でのワークショップの開催でファンを沸かせた。
また、iPhoneへのマイナンバーカード搭載を約束した岸田文雄・前首相、そして林芳正官房長官と平将明デジタル大臣と面会し、意見を交わした。
iPhoneとiPadが絶好調の日本市場において、アップルが最も懸念しているのが、日本で12月に施行される「スマホ新法」(スマートフォンソフトウェア競争促進法)だ。
OS機能の解放、アップル以外が運営するアプリストアの解禁など、既存のiPhoneが持つ価値、すなわちプライバシーとセキュリティとわかりやすさが保たれ、使いやすさが維持される状況を一変させる可能性をはらむ。
日本のアプリ開発者との交流を通じて、ティム・クック氏は、「守りたい」とその思いを語った。
日本は先進諸国の中でiPhoneシェアが最も高い
日本は先進諸国の中で、iPhoneのシェアが最も高い国だ。全世界で見ればiPhone向けのiOSのシェアは15%にとどまるが、日本では50%を超え、端末の販売比率は毎年の新型iPhone発売直後に70%になる。
なぜこれほどまでに日本でiPhoneが指示されているのか。ティム・クック氏は、「アプリ開発者がプラットフォームに参加してくれること」が重要な要因であると語った。
「最も人気があるプラットフォームであることと、最も才能ある開発者たちがそのプラットフォームに参加することの間には、共生関係があると思います。開発者が参加してくれるのは、私たちが人々が情熱を追求できるようにするため、多くのツールを提供しているということです」(ティム・クック氏)
アップルは毎年、WWDCと呼ばれる開発者会議を開き、新しいOSを発表し、そこでアプリ開発に利用できる「API」と呼ばれる機能を提案してきた。APIの数はすでに25万を数える。
Apple Intelligence発表以前から機械学習機能を利用可能にする「Core ML」などのAI関連のAPIを揃え、Vision Proが登場する以前から、ARアプリを実現するAPIを充実させてきた。
そうした開発に利用できる潤沢なツールと、開発者のアイデアで、優れたアプリが作られ、これを目当てにユーザーがiPhoneに集まってくる。
そんな構図を作り出したのが、アップルのスマホ時代における『発明』だった。
訪日でティム・クック氏が交流を持った開発者たち
今回、ティム・クック氏がApple Japan本社で交流を持った開発者は、多種多彩だった。

「アメミル」はリアルタイムの降雨情報をAR(拡張現実)とAIで表現するアプリ。5人のチームで開発している(提供:アメミル)
雨を可視化し未然に災害を防ぐ、気象予報士を多数含む5人のチームで開発されている『アメミル』。

アニメと連動するゲームアプリ「怪獣8号」。グラフィックスとサウンドにこだわり、日本国外のユーザーも多い(提供:怪獣8号)
アニメ放映と完全に連動し、iPhoneのグラフィックス能力を引き出したゲーム『怪獣8号』。

「LINEスタンプメーカー」は、Apple Intelligenceの画像生成モデルを活用し、デバイスの上で自由にAIを用いたスタンプ作りが楽しめる(提供:LINEヤフー)
Apple Intelligenceの画像生成AI機能を取り入れ、アイデア一つでステッカーを瞬時に作成、世界に販売できる『LINEスタンプメーカー』。
そして直感的な操作がクセになる、ひらめき計算パズルゲーム『KaruQ』。
巨大企業から少人数チームまで連動
LINEのような巨大企業や、アニメプロダクションと連動するプロジェクトもあれば、『アメミル』のような5人のチームによる開発者も存在していた。
『アメミル』は小さなチームではこれまで考えられなかった、AI機能やグラフィックス機能を実装する予定だ。
アップルが用意した開発ツールである「Foundation Models Framework」を活用し、対話型のインターフェイスを取り入れたり、ユーザーのスケジュールを組み合わせ、よりパーソナライズされた気象情報を提供するという。
さらに台風の3Dグラフィックス化に取り組むなど、やりたいことが目白押しだ。
KaruQの開発者Ryuji Kuwakiさんは、35年にわたりプログラムを書くゲーム開発者で、iPhone登場とともに独立し、現在までにひとりで、世界中でヒットするゲームを40本も作り出していた。
ティム・クック氏は、日本におけるApp Storeの成功について、次のような考えを述べた。
「App Storeの素晴らしさの一つは、個人や学生でもアプリを作れることです。自分の住みたい場所で自宅からアプリを作り、ボタン一つで何百万人ものユーザーに提供できます。
考えてみれば、ほんの数年前まではこれは不可能でした。今はそれが可能になり、アップルがそれを実現できるよう人々に力を与えたことを嬉しく思います。
もはや特定の場所に住んだり、朝9時から夕方5時までの仕事に縛られたりする必要はありません。自分自身のビジネスを作り、起業家になれるのです」
さらに、日本の開発者のApp Storeにおける収益が7兆円に上り、成熟した経済圏を作り出してきたことも強調した。
情熱が共生する場を守りたい

「LINEスタンプメーカー」の説明を受けるティム・クック氏。クリエイターをApple Intelligenceで支援するアプリに驚きを見せた(提供:アップル)
開発者と話すと、アップルがiPhoneとアプリ開発プラットフォームに投資を続けてきたからこそ、1人、5人、といった最小単位の開発者であっても、AI機能などの最新機能を用いて、世界の市場でのビジネスが可能となっている点を評価していた。
LINEヤフーのような大企業であっても、アイデアを形にするまでの時間を大幅に短縮できるメリットを享受していた。
この環境に、日本のスマホ新法は水を差そうとしている。これについて、ティム・クック氏は、冷静な語り口で、次のように述べた。
「私たちのブランドは、プライバシー、セキュリティ、使いやすさを象徴しています。それがアップルがビジネスを行っている理由でもあるからです。今後もその環境を維持していきたいと思います。
そのため、規制当局(公正取引委員会)と、最適な対応方法について、引き続き、議論をしていきます。規制当局が、私たちの懸念に耳を傾けてくれることを願っています」
App Storeは「開発者とアップルの情熱が共生する場」
そのうえで、App Storeがどのような場所であるかについて説いた。
「App Storeに集まる開発者の皆さんは、非常に才能があり、とても創造的です。芸術的でもあります。起業家精神を持ち、情熱を追求しています。出会った開発者の皆さんに、畏怖の念を抱いています。アップルのテクノロジーを使って、アプリをさらに進化させてほしいと思います」(ティム・クック氏)
開発者の成功に心躍る気分だ、ととても嬉しそうな表情を浮かべるティム・クック氏。しかしそうした環境を規制から守ることもまた、アップルが取り組まなければならない大きな課題だ。
iPhoneとApp Storeを「開発者とアップルの情熱が共生する場」と定義し、その発展と関わる人の成功をいかに守っていくか。規制当局との議論の末、どのような着地になるのか注目していきたい。