「アドバイスが全く響かない人」と「すぐ行動が変わる人」たった1つの“決定的な違い”とは?

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話が伝わらない原因は、こちらの伝え方ではなく「相手が聞く準備をしていない」からかもしれない。各界で成果を出すコンサルタントとして知られる高橋輝行氏は、まず初めに“相手の思考のスイッチをONにする”という発想を提示する。その具体的な方法とは?※本稿は、高橋輝行『結果を出すコンサルだけが知っている 「伝わらない」がなくなる話し方の順番』(あさ出版)の一部を抜粋・編集したものです。

思考のスイッチがOFFの人が

なかなかうまくいかない理由

 以前、ある社長の出資の相談に乗った時のことです。

社長「腕のいいシェフに出会って、自分の店を持ちたいと言われたので、出資することにしました。高橋さんはどう思いますか?」

高橋「社長は、その店をどのように運営していくかイメージをお持ちですか?」

社長「外食業界のことは分からないので、全てシェフに任せるつもりです」

高橋「もしシェフが居なくなったら、お店はどうやって経営するのですか?」

社長「その時は、別のシェフを見つけて任せますよ」

高橋(んー、ずいぶん楽観的だな。この先大丈夫だろうか…)

 後日知人から聞きましたが、レストランを出店してからずっと赤字が続いたため、社長はシェフをクビにして別のシェフを雇ったそうですが、赤字は改善されず1年足らずでレストランを閉店したそうです。

 自分では考えず、誰かに任せきりにしている。このような状態を「思考のスイッチがOFFになっている」状態と言います。

 思考のスイッチがOFFになっている人は、自分で考えるのではなく答えを欲しがり、答えを出せる人に依存する傾向があります。

相手の思考の解像度が低いと

提案しても聞いてもらえない

 このような人に提案やアドバイスをしても、「自分事」として捉えられず、思考の解像度を上げることができません。このままでは、せっかく提案をしても聞き入れてもらえません。相手に「やりたいこと」がなければ、こちらが何を言っても響かないのです。

 先の例のほかにも、テストの前日に一夜漬けで対策をする学生(私も中高生時代はこちらの部類でした)や、指示待ちの社員、広告代理店やコンサルタントに仕事を丸投げするクライアント、経験の枠内で答えを出そうとする上司などは、思考のスイッチがOFFになっていると言えます。

 このような状態から相手を抜け出させるには、まず相手の思考のスイッチをONにする話し方から始めます。

 相手の思考の解像度を上げるためには、相手の頭脳が「考えたい状態になっている」=「やりたいこと」がある状態になっているのが大前提です。

「やりたいこと」がない、もしくはボンヤリしている相手に対して、提案やアドバイスを何度繰り返しても、「自分事」として聞き入れてもらうことができません。「なぜそれをやる必要があるのか」が分かって初めて、相手は話を聞こうという態勢になってくれます。

 そのために、相手との会話の中から「やりたいこと」を引き出し、思考を始めるキッカケをつくることが必要なのです。

「伝わる」話し方をするためには、会話の主役である相手に、「やりたいこと」を自ら発見してもらわなければならないのです。

 実は、私も学生時代には友人と遊び呆け、「やりたいこと」を考えたことはありませんでした。

 しかし、大学進学を考える時期になり、友人から「大学で何する?」と聞かれて初めて、やりたいことがない自分に不安を感じました。

「やりたいことを見つけないとダメな人生になる!」

 どこからともなく、自分を戒める声が聞こえてきました。焦った私は、答えを求めて書店に駆け込みました。アテもなく本棚を眺めながらウロウロしていると、真っ赤な表紙の1冊が目に留まりました。

 アインシュタインが書いた、『物理学はいかに創られたか』という本でした。

「やりたいこと」を見つけて

人生のターニングポイントに

 当時の私は、物理と数学が最も苦手でしたが、なぜかこの本に興味を惹かれて読んでみると、初めの数ページで物理学の面白さに引き込まれました。心の底から感動しながら、「物理なんか役に立たない」と毛嫌いしていた自分を後悔しました。

 そして、文系進学予定だった私は思い切って理系進学へ切り替えました。

 担任の先生からは「お前の成績では絶対ムリ」と言われ、友人からも「お前の頭じゃ不可能」と言われました。悔しかったですが、そう言われて当然の学力でした。

 しかし、人生で初めて心からやりたいと思えることを見つけた私の心は、周囲から何を言われてもブレることは一切ありませんでした。

 この状態になってからは普段の授業にも身が入り、教師が話していることを能動的に聞くようになりました。「やりたいこと」に向かって頭を動かすことで、何でも貪欲に聞いていこうという態勢に入ったのです。

 浪人はしましたが、目指していた物理学科に進学することができました。

 これは受験勉強に限ったことではありません。人は、「聞きたいこと」や「知りたいこと」「話したいこと」があって初めて、自発的に考え、相手の話を聞けるようになるのです。

 心を動かすスイッチが入ると、自ら「やりたいこと」を考え始め、思考の解像度を上げる一歩を踏み出します。

 そして、「どうすれば実現できるだろう?」「次に何をすればいいだろう?」といった問いが自然と湧き上がり、人に相談や協力を仰ぐようになります。

同書より転載

相手の心を動かすスイッチを入れる

「最もシンプルな方法」とは?

 大学で物理学科に進学した私は、その後大学院へ進みました。できたばかりの研究室で、先生も若くエネルギーに満ちあふれていました。

 大学院1年の夏に、先生から「アメリカの大学との共同研究の話があるが、君はやってみたいか?」と聞かれました。私は「やりたいです!」と即答しました。

 先生は、私が研究室に入る時に「君は何をしたい?」と、やりたいことを聞いてくれました。私が世界の研究者と一緒に仕事がしたくて、「数年後に海外へ行きたいです」と言っていたことを、先生は覚えていてくださいました。

「かなりハードな研究になると思うけれど、やり切る自信はあるか?」と、先生は私のやる気を確認しました。

 私の意思は固く、「はい!向こうの研究者といい仕事をしてきます!」と言って海外へ飛び立ちました。

 海外での共同研究は想像以上にハードでしたが、自分の人生にとってかけがえのない経験となり、先生には心から感謝しています。あの時、自分のやりたいことを聞いてくれなければ、海外へ行くことも、世界の研究者と一緒に仕事をすることもなかったと思います。

「やりたいことは何か?」と素直に相手のやりたいことを聞き、意思を確認する話し方は、相手の心を動かすスイッチを入れる最もシンプルな方法です。

 ここからは、相手に「やりたいこと」を聞いても、なかなか出てこない人のための話し方について見ていきましょう。

相手の「やりたいこと」を

見つけ出す3つの方法

心を動かすスイッチ1:感動エピソードを引き出す

 人には「感動する」という素晴らしい感性が備わっています。感動する=心を動かすスイッチであることから、相手の感動エピソードを引き出し、「やりたいこと」を見つけ出します。

 社食事業会社の社長から、新規事業について相談された時のことです。

「新しい事業をしたいのですが、何をしていいか思いつきません」

 私はアイデアを提案する前に、社長が感動するポイントを見つけようと、「社長が今までに最も感動した体験は何でしょうか?」と聞くと、「社食でアツアツのご飯を、美味しそうに食べるお客様に感動しました」と答えました。社長もご飯(お米)が大好きで、ご飯で喜んでくれると幸せな気持ちになるそうです。

 社長の感動ポイントをつかんだ私は、「社食以上の美味しいご飯を考えてみてはどうでしょう?」と提案すると共感してもらえました。

 さらにイメージをハッキリさせるため、「例えば『できたてご飯のおにぎり屋』とか…」と提案したら、社長は笑顔でこう言いました。

「ぜひ、やってみたいです!」

 その後、社長との話し合いを重ね、「土鍋の炊き立てご飯のおにぎり屋」を新規事業として出店することになりました。

 相手がやりたいことになかなか気づけない時には、相手が感動したエピソードを引き出し、それをヒントに「やりたいこと」を「提案」する話し方をすることで、相手の「やりたいこと」の言語化を支援しましょう。

人は問題が見えてくると

解決しようと考える

心を動かすスイッチ2:問題に感じていることを引き出す

 人は「このままではダメだ」と問題を認識すると、解決しようとする気持ちが自然と生まれます。

 この解決したい気持ち=心を動かすスイッチを入れることで「やりたいこと」を見つけ出します。

 ある会社の役員から、社員の離職について相談された時のことです。

「中堅社員の離職率が上がって困っています」

 その理由を聞くと、予算達成と部下の育成の両立で疲弊していると話しました。

 私は、部下の育成に手間取っている社員が多い現状を推測し、

「部下の育成スキルが、社員ごとにバラバラではないでしょうか?」

 と聞きました。

 すると役員は「その通りです!」と言いました。

 そこで私は、

「社員が、同じ方法で部下を育成できるのが理想ではありませんか?」

 と目指すべき理想の姿を推測すると、役員も同意見でした。

「であれば、部下の育成方法の体系化が課題ではないでしょうか?」

 と私が提案すると、役員は少し考えてから次のように言いました。

「薄々気づいていましたが、やはりそれでしたか!」

 その役員は社長に提言し、部下の育成方法の体系化に取り組みました。

 問題意識の高い相手には、現状と理想を推測し、課題を特定する話し方をすることで、相手の「やりたいこと」の言語化を支援しましょう。

夢と現状のギャップを

埋める「提案」をする

心を動かすスイッチ3:叶えたい夢を引き出す

 人は「夢」があると、そこに近づきたい気持ちが起こります。

 この「夢」を叶えたい気持ち=心を動かすスイッチを入れて、「やりたいこと」を見つけ出します。

 ある介護用品をつくる起業家から相談を受けた時のことです。

「色々な会社に製品を提案していますが、売れずに悩んでいます…」

 目先の売り上げを上げることに追われていると感じた私は、

「そもそも、起業して叶えたい夢はありましたか?」

 と問いかけました。

 すると、それまで沈んでいた表情が明るくなり、

「足が悪くて困っていた母のような人を助けたいと思って起業しました」

 と答えました。

 それから次のような会話をしました。

『結果を出すコンサルだけが知っている 「伝わらない」がなくなる話し方の順番』 (高橋輝行 あさ出版)

高橋「提案先の会社は、夢を叶えるのにベストな相手でしょうか?」

起業家「いいえ、売り上げ欲しさに大手企業へ提案していました」

高橋「あなたの夢に共感してくれる相手へ提案しませんか?」

起業家「実は、先日展示会で意気投合した中小企業の社長がいます」

 その社長の母親も、足に同じような障害を抱えていたそうです。

 2人は協業し、製品を販売したところ、瞬く間に売り上げは伸びていきました。

 夢を持つ相手には、目指していた夢を引き出し、現状とのギャップを埋める「提案」をする話し方で、相手の「やりたいこと」の言語化を支援しましょう。