日本たばこ産業(JT)【2914】株価堅調、9年ぶり上場来高値を更新、配当金も上方修正 懸案カナダ訴訟が解決、米4位買収で今後は

日本たばこ産業(JT)【2914】株価堅調、9年ぶり上場来高値を更新、配当金も上方修正 懸案カナダ訴訟が解決、米4位買収で今後は
9年ぶり高値 業績と配当金の上方修正で買い集中
日本たばこ産業(JT)の株価が再び高値を更新しています。2024年6月の高値4622円のあとは下落トレンドとなっていました。同年8月の日本株市場の急落では一時3453円まで、25年4月のトランプ関税ショックでは一時3761円まで売られます。
以降は反発を迎えます。特に25年7月末に今期(25年12月期)の中間決算を公表すると、株価は急騰しました。通期の業績予想を上方修正したことから、買いが集まったと考えられます。8月には上場来高値となる4886円まで上昇しました。4800円台は、16年3月以来およそ9年ぶりです。
【日本たばこ産業の株価チャート(過去5年間)】
・株価:4764円(2025年9月22日終値)

出所:Tradingview
中間決算では予想配当金も上方修正しました。直近の予想(25年2月公表)で194円としていた1株あたり配当金は208円に増額します。今期は増配しない予定でしたが、一転して前期比14円増へ引き上げます。増配は23年12月期以来2期ぶり、配当利回りは4.37%です。
【日本たばこ産業の予想配当利回り(25年12月期)】
・予想配当金:208円
・予想配当利回り:4.37%
出所:日本たばこ産業 決算短信
日本たばこ産業は最近、大きな動きが2つありました。カナダ訴訟の和解と、米国への本格進出です。それぞれ要点を押さえましょう。
カナダ訴訟が和解、総額3.6兆円を支払いへ なぜ株価は上がった?
まずはカナダ訴訟です。日本たばこ産業は、カナダでたばこ被害に関連する集団訴訟を抱えていました。グループのカナダ子会社と、別の現地たばこ会社2社の計3社が訴えられたものです。
この和解案が25年3月に合意に至りました。被告たばこ会社3社が和解金として総額325億カナダドル(3兆5600億円)を支払うことで決着します。関連する損失の計上から、日本たばこ産業は直近の24年12月期に前期比51.9%減の大幅な営業減益となりました。
しかし、冒頭のとおり日本たばこ産業の株価はおおむね順調です。なぜ投資家は同社株式へ資金を向け続けているのでしょうか。
実は、当該訴訟は1998年から続く長期の案件で、有価証券報告書にも記載され続けてきました。相場には相当織り込まれていたと考えられます。むしろ、今回の動きで不透明感が払拭されたことはプラス要因といえるでしょう。
また、支払い計画が比較的緩やかだったことも幸いでした。和解案は、頭金として一定額を支払ったあと、3社の総額に至るまで分割でカナダ子会社の純利益70~85%を支払う内容です。見込まれる弁済期間は20~30年と長く、時間的なゆとりから資金繰りの懸念が後退します。
さらに、実力ベースでは増益が続いていることも追い風です。先述のとおり、一般的な会計原則上の営業利益は大きく減少したものの、一時的な費用を除いた調整後営業利益(※)は増加傾向で、特殊要因を除けば順調といえます。
※調整後営業利益…営業利益から買収で生じた無形資産にかかる償却費および調整項目(のれんの減損損失、リストラクチャリング収益および費用など)を控除したもの

出所:日本たばこ産業 決算短信より著者作成
これらの要因から、日本たばこ産業は訴訟における和解金の支払いは多額であるものの、解決への方向性が定まったことで株価は堅調に推移していると考えられます。
ついに米国へ本格進出、現地4位を大型買収 先行の英BATは苦戦
続いて米国への進出を解説します。日本たばこ産業は24年8月、たばこで米国4位のベクターの買収を公表しました。買収は10月に完了し、完全子会社としています。
日本たばこ産業は積極的なM&Aで知られますが、米国向けは限定的でした。99年と16年には、それぞれ米RJRナビスコと米ナチュラル・アメリカン・スピリットから事業の一部を譲り受けますが、対象はいずれも米国外のたばこ事業でした。15年に電子たばこの米ロジックを買収したものの、米国内では大型の買収がない状態が続いていました。
【日本たばこ産業の主な大型買収】
・米RJRナビスコ米国外たばこ事業:9440億円(1999年)
・英ギャラハー:1兆7200億円(2007年)
・米ナチュラル・アメリカン・スピリットの米国外たばこ事業:5914億円(2016年)
・米ベクター:3446億円(2024年)
※金額は当時の為替レート
出所:日本たばこ産業 有価証券報告書
そうした状況下から日本たばこ産業は満を持して米国へ本格進出します。米国市場は世界最大の中国に次ぐ規模で、その中国は現地の国営企業が独占しています。米国は、外資の進出余地がある地域では最大の市場といえます。
そして、日本たばこ産業は販売数量で世界3位(中国除く)ながら、地域は欧州およびアジアが中心です。手薄な米国を補完することで地域ポートフォリオを拡充し、売り上げの底上げを目指します。
とはいえ、米国は簡単な市場ではありません。「マールボロ」や「ニューポート」、「ラッキーストライク」など、競合ブランドは強力です。また、規制の強化や製品の多様化などから、市場は複雑化しています。英ブリティッシュ・アメリカン・タバコ(BAT)も、17年の米レイノルズ・アメリカン買収で米国に再進出しましたが、23年に現地事業で巨額な減損を実施し、全体でも営業損失に転落しました。
日本たばこ産業の米国事業は成功するのでしょうか。今後の展開が注目されます。
たばこ事業が好調、今期は大幅増益を予想 下期は鈍化の見込み
最後に今期(25年12月期)の見通しを押さえましょう。
今期は増収増益の計画です。値上げ効果や米ベクターが通期で寄与する影響などから、売上収益および為替一定ベースの調整後営業利益は増加を見込みます。また、前期に計上したカナダ訴訟関連の損失がはく落するため、営業利益および純利益は大幅な増益の予想です。
【日本たばこ産業の業績予想(25年12月期)】
・売上収益:3兆3440億円(+6.2%)
・為替一定ベースの調整後営業利益:8620億円(+14.6%)
・営業利益:7390億円(+128.5%)
・純利益:4940億円(+175.6%)
※()は前期比
※同第2四半期時点における同社の予想
※調整後営業利益…営業利益から買収で生じた無形資産にかかる償却費および調整項目(のれんの減損損失、リストラクチャリング収益および費用など)を控除したもの
出所:日本たばこ産業 決算短信
今期は中間決算まで公表されています。売上収益は前年同期比で10.5%増、営業利益は同10.9%増と堅調でした。円高影響や、子会社だった鳥居薬品の譲渡関連の損失はあったものの、加熱式を中心にたばこ販売が伸び、全体でカバーしました。また、為替一定ベースの調整後営業利益も同24.7%増と好調でした。
冒頭のとおり、今期の通期業績予想は中間決算で上方修正されています。進捗率は売上収益が51.9%、為替一定ベースの調整後営業利益が65.6%、営業利益が64.9%と、修正後でも取り組みは順調です。
なお、第4四半期以降はベクター連結による販売量の押し上げが一巡します。この影響もあり、たばこ事業の下期は上期比で鈍化を想定しますが、為替のマイナス影響は期首計画より小さくなる見込みです。好業績は続くのでしょうか。第3四半期決算は10月末に公表される予定です。
若山 卓也/金融ライター
証券会社で個人向け営業を経験し、その後ファイナンシャルプランナーとして独立。金融商品仲介業(IFA)および保険募集人に登録し、金融商品の販売も行う。2017年から金融系ライターとして活動。AFP、証券外務員一種、プライベートバンキング・コーディネーター。
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