アメリカ人は"株価の暴落"を恐れているが、イェール大学教授は「その必要はない」と語る

1987年10月19日月曜日の株価暴落を伝える新聞の見出し。

  • イェール大学の経済学者ウィリアム・ゴーツマン氏は、投資家は基本的に市場暴落を心配しすぎていると語る。
  • 同氏の調査によると、大きな上昇のあとの暴落は稀で、ほとんどが短期間で終わる。
  • ゴーツマン氏は市場に対する不安があるとしても、よりよいリターンを得るために長期投資を続けるよう助言する。

イェール大学の経済学者であるウィリアム・ゴーツマン氏は、株式市場の暴落が投資家に与える恐怖を、身をもって体験してきた。自身で1987年、2000年、2008年、そして2020年と、これまで少なくとも4回の暴落を経験した。

「2008年の暴落では、それまでの貯蓄が50%も減るのをこの目で見た」と、同氏は9月初めにBusiness Insiderに語った。

当時、株式市場に資金を投じていた多くのアメリカ人が、同様の損失を被った。こうした体験がトラウマとなり、投資家は次の暴落がすぐそこに待ち受けているのではないかという妄想に取り憑かれることがある。

そして、今がまさにそのような状況だ。ゴーツマン氏の調査によると、急激な下落の恐怖が投資家のあいだに広く浸透している。2000年以降のどの時点においても、ゴーツマン氏の調査に対する回答者は平均して、今後6カ月以内に暴落が起こる確率を10%から20%のあいだと答えてきた。

1929年10月下旬のウォール街の大暴落後、ニューヨークのウォール街に集まった群衆。

「調査の結果は、投資家たちは株式市場とは関係のないことにまで反応している可能性があることを示している」とゴーツマン氏は説明する。「たとえば近くで大きな地震があれば、暴落の確率が高くなると考える傾向がある」

現在は、市場バブルとその破裂の懸念が高まっているようだ。その背景には、AI関連株がここ数年で86%の急騰を見せ、S&P500のシラーCAPE比率が史上3番目の高水準を維持していることがある。

これらの懸念は理解こそできるものの、データとは矛盾しているとゴーツマン氏は語る。彼の調査によると、大きな上昇のあとの株価暴落はそもそも頻繁に起こることではなく、起こったとしても長くは続かない。

2016年の論文でゴーツマン氏は、1880年代以降の全世界を対象に、1年間または3年間で市場が100%以上上昇したケースを調査した。そのようなケースにおいて、その後1年または5年の期間で株価が少なくとも50%下落したのは、割合にして1%に満たなかった。実際のところ、26%のケースでは市場がさらに100%上昇した。

2008年10月10日、取引開始前に新聞を読むシカゴ商品取引所のS&P500株価指数先物ピットのトレーダー。

ある意味、ゴーツマン氏の調査は範囲が狭く、すべての下落シナリオを考慮に入れていない。たとえば、ドットコム・バブル崩壊後の2000年から2002年の2年間でS&P500が約49%下落したケースは含まれていない。ピークから5年がたった2005年時点での市場の下落は約18%だったからだ。それでもなお、投資家が最大の損失から回復するのに何年もかかったため、ドットコム・バブルの崩壊は一般的に史上最も破壊的だった暴落のひとつとみなされている。

また、暴落は景気後退と同時に起こりがちで、失業した人々は流動性の必要に迫られて底値近くで株式を売却せざるをえないという事実も考慮していない。

しかし、長期的な展望があり、投資を続けられる人にとっては、ゴーツマン氏のメッセージはシンプルだ。市場が暴落したとしても、5年間もちこたえることさえできれば、富の大部分が失われる可能性は極めて低い。

「暴落後の5年を我慢すれば、状況は好転する。私が伝えたいのはそれだ」とゴーツマン氏は言い、こう続けた。「ただし、『私たちは小さな大学基金で、職員全員の給与を基金に依存しているため、5年も待つわけにはいかない』と言う人もいるだろう」

最近は投資家の恐怖心が高まっていて、人々が市場から遠ざかり、将来のリターンを得る機会が失われつつあると、ゴーツマン氏は心配している。

「最近では、インターネットやテレビを見るたびに、恐ろしいことが目に入り、誰もがつねにショックを受けている」と、同氏は語る。

「したがって私が懸念するのは、人々がただでさえ恐ろしい出来事を必要以上に恐れるようになれば、株式市場の暴落も必要以上に恐れるようになり、株式市場に投資すらしなくなるかもしれないということだ」と指摘し、こう続けた。「人々は『明日には株式市場の底が抜けて貯蓄がなくなるかもしれないから、しばらく様子を見ることにしよう』と言い始めるかもしれない」

株式市場の暴落で多くの人が損失を被り、かつては手の届く範囲にあった贅沢品が、再び多くの人にとって手の届かないものとなった。

しかしゴーツマン氏自身は、冷静に投資を続けることの利点を知っている。

自身で経験した4回の暴落のすべてにおいて、資金を市場に残し、最終的には急激な下落に続く急騰と長期の強気相場から恩恵を受けた。

2020年を振り返り、「あの春は本当に不安だった」と、同氏は語る。「それでもじっと我慢して、『株式市場に関しては、長期データが示すことに従おう』と自分に言い聞かせた」

※本記事は取材対象者の知識と経験に基づいて投資の選定ポイントをまとめたものですが、事例として取り上げたいかなる金融商品の売買をも勧めるものではありません。本記事に記載した情報や意見によって読者に発生した損害や損失については、筆者、発行媒体は一切責任を負いません。投資における最終決定はご自身の判断で行ってください。