ゴールド(金)価格は天井どころかまだ上がる。ドル不安の受け皿として「金・銀が最強」である納得のワケ

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年初来の為替相場を振り返ると、主要通貨の中ではドルが最も弱く、ユーロが最も強かった。つまり、年初のユーロドル相場は1ドル=1.03ユーロだったが、9月末には1.17ユーロと、約14%上昇した。一方のドル円レートは、1ドル=157.5円から147円と約7%の上昇にとどまっている。ドル不安の受け皿に選ばれた通貨はユーロだったわけだ。
しかしそれ以上に買われているのが貴金属、具体的には金や銀、プラチナだ(図表1)。

図表1 ドル建て貴金属価格とユーロドル相場の変動率。1月時点の価格を100とした場合の変動率をグラフ化した。変動率でみると、プラチナは金よりも大きく相場変動している。
金1オンスの価格は、年初から9月末までに2700ドル弱から3900ドル程度と40%以上も上昇、4000ドル突破も時間の問題だ。日本でも、金1gの値段が2万円を超えたと大いに話題になった。金価格の急騰を受けて、相対的な割安感から銀やプラチナの価格も急騰している。
ドル不安は、アメリカのドナルド・トランプ大統領が4月に「相互関税」の名の下に導入した一連の関税政策の結果生じたものだ。アメリカ経済に対する不信感の高まりから、アメリカの国債が売られ、それを基に発効されているドルも売られた。この過程でユーロや円も買われたが、それ以上に貴金属が買われている事実をどう解釈すべきか。
この流れは、価値保存、つまり資産防衛の手段として、投資家が貴金属を買い求めた結果に他ならない。言い換えれば、資産防衛の手段として、米債やドルはその「価値」を下げているわけだ。
ここで考えるべきは、「貴金属はなぜ価値があると見做されるのか」だ。その理由をきちんと説明しようとすると、案外と難しいのだ。
貴金属に価値を見出す「金属主義」

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化学的には、金、銀、白金、パラジウム、ロジウム、イリジウム、ルテニウム、オスミウムの8つが貴金属と分類されている。貴金属の主な特徴は、希少性、安定性、加工性があることに尽きる。ではなぜ、その中でも「金や銀」が価値保存の手段として、特に好まれるのか。これは最早、一種の歴史的な「信仰」によるもの、としか説明できない。
金と銀のような貴金属に価値を見出す考え方は金属主義(メタリズム)と言われる。中世まではユーラシア大陸を中心に、相対的に豊富だった銀が決済の手段として使われ、金が貯蓄の手段として使われてきた。しかし金や銀は重く、実用性に乏しいことから、次第に銅銭や鉄銭が使われ、そして手形や為替と決済の手段が発展するようになる。
そうなると、金や銀は決済の手段から、価値保存の手段へと性格を変えていくことになる。戦前の本位貨幣制の下では、金や銀を保有している国こそが経済力の強い国だと見做された。戦前の覇権国イギリスの首都ロンドンには、世界中から金が流入した。戦後に覇権国の座を継承したアメリカのニューヨークには、今でも大量の地金が存在する。
金属主義は何処から生まれたのか、定かではない。ゾロアスター教に始まるとされる一神教(ユダヤ教、キリスト教、イスラム教)との関係は強いと考えられるが、明確には分からない。いずれにしても、金や銀といった貴金属が、歴史的にかつ世界的に価値保存の手段として尊ばれることが確かだからこそ、ドル不安の中で価値を上げている。
世界的に蒸発する通貨の価値

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ところで、貴金属だけではなく、米債に代わる有力国の国債や、それを基に発行されている通貨を買うことで、資産防衛を図ることも可能なはずだ。にもかかわらず、貴金属の価格が急騰しているということは、有力国の国債や通貨も(米債やドルほどではないにせよ)価値を下げていると考えられる。受け皿として不十分だというわけだ。
例えばユーロだが、この通貨は事実上、ドイツとフランスという、欧州連合(EU)の両翼の信用力※に依存するかたちで発行されている。
※正確に言えば、ユーロ圏20カ国が、その「経済規模」に応じて信用力、つまり国債を提供し、それを担保にユーロという通貨が発行されている。ゆえに、経済規模の大きいドイツとフランスの影響力が大きい
ただし、そのフランスの信用力が近年急速に低下しているという問題がある。フランスではこの2年足らずで首相が5人も交代する事態となっている。特に、10月6日に辞任したセバスチャン・ルコルニュ氏の在任期間は、わずか27日だった。近年のフランスはEUのルールを破り巨額の財政赤字を計上し続けている。財政再建が急務な情勢だが、国民が緊縮財政に反発していることがフランスの政治危機の背景にある。

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相次ぐ首相交代で財政再建が進まないと判断した大手格付け会社がフランス国債を格下げした結果、9月には既にフランスの長期金利がイタリアの長期金利を上回った。現状、ユーロはドル不安の受け皿としては役不足だと言わざるを得ない。
では「円」は、と気になるところだが、残念ながら日本国債(円)に対する評価はさらに低い。円が安全資産だと見做されていたのは、少なくともアベノミクス前までだろう。その頃までは日本国債を買い支えていたのは、銀行を通じた家計の預金だった。
アベノミクス後は日銀自身が日本国債を買い支える状況となり、国債と円の信用力は大いに低下するに至っている。
新たに自民党総裁になった高市早苗氏がアベノミクス路線を踏襲するとするなら、円は一段安を免れないと言ったところだろう。この点、注意してみていく必要がある。
つまり、金はまだまだ上がり続ける可能性が高い
ここまで読み進めてくれば、ドル不安が続く以上、そしてドルの受け皿が他にない以上、金や銀、プラチナといった貴金属にマネーが集中することは、ごく自然な流れだと分かる。価値保存の手段としては、株式や暗号資産もまたその対象となるが、人類史に鑑みれば、多くの人が価値を認める貴金属、それも金がドル不安の受け皿として最も堅強だろう。
アメリカが荒唐無稽な経済運営を続ける限り、ドル不安は止みようがない。そのため、世界の投資家は価値保存の手段を貴金属や不動産に集中させるのではないだろうか。
当然、定期的に「利食いの動き」(=売却)はあるだろうが、基本的に金価格は上昇が続くと考えていいだろう。金価格の上昇は、まさに時代の不安定さを反映するものと言える。
※寄稿は個人的見解であり、所属組織とは無関係です