やよい軒がコメ高騰でも「おかわり無料」続ける訳

やよい軒(写真:筆者撮影)
2025年の新米シーズンに突入したが、コメの高値が依然続いている。大盛サービスや無料おかわりを休止する飲食店が少なくない中、いまだに「ご飯おかわり無料」を掲げ続ける定食チェーンがある。やよい軒だ。
【写真】やよい軒のおかわり自由を支える「ロボット」はこんな感じ
コメ不足が深刻化する中で、なぜこのサービスを維持できるのか。
おかずを主役にするご飯を提供
とある平日の午後、ロードサイドにあるやよい軒を訪れて「チキン南蛮定食」を注文してみた。タルタルソースたっぷりのチキン南蛮をご飯と一緒にかっこんでいくと、すぐにお椀はからっぽになった。店内の「おかわり処」のコーナーへ向かう。やよい軒のご飯おかわりの特徴はこのセルフ方式にある。

やよい軒の「チキン南蛮定食」(写真:筆者撮影)
ライスロボの規定位置にお椀をセット。盛りたいご飯を一口、小盛、並盛、中盛の4種類から選び、ボタンを押すとご飯がぽとりと落ちる。
ご飯の味はあっさりとしていてのどごしがいい。次から次におかわりしたくなる不思議な味だ。運営会社プレナスのコーポレートコミュニケーション室の担当者によると、おかずをおいしく食べられるようなご飯の味に設計されているという。

やよい軒の「ごはんおかわりロボ」(写真:筆者撮影)
まず、気候や湿度に応じて60種類以上の銘柄から調達。この調達したコメをブレンドしたうえで、玄米と同じような栄養を持つ「金芽米」へ精米している。
さらに、精米したコメは工場から各店舗の発注に合わせて毎日発送している。精米したてのコメはもっちりとして甘味が強い。リードタイムを短縮することで新鮮さを実現している。
店舗ではコメの炊き方もマニュアル化されている。水に浸す時間なども定められているそうだ。
さらに、コメのおいしさを引き出すために大きなガス式の炊飯器を使う。直火で炊くため、短時間で均一に熱が通り、ご飯がふっくらと仕上がるのが特徴だ。1日のうちに何度も炊く必要はあるが、その分炊き立てに近い状態をキープすることができる。

ガス式の炊飯器で炊いたご飯(写真:筆者撮影)
おかわり無料の歴史
やよい軒の代名詞と言えるご飯おかわり無料のサービスはいつから始まったのだろうか。
その歴史は前進の「めしや丼」の時代に遡る。「めしや丼」は、やよい軒と同じく定食を中心に提供していたチェーン店だ。2006年にブランドイメージを刷新するために「やよい軒」に名前を変えた。
ただし、おかわり無料のサービスが始まった時期は不明。「社内に詳細な記録は残っていませんが、一部の店舗から始まりました。お客様に好評だったので全店に拡大したようです」と担当者は話す。「めしや丼」が「やよい軒」にリニューアルしたときに、「おかわり無料」は定着していた。
一般的に、おかわり無料を展開する飲食店はテーブルオーダー式のところが多いが、やよい軒ではご飯を自分の好みに合わせてよそうことができる。
この体験は「やよい軒=ごはんおかわり無料」の印象をユーザーに残し、「お腹いっぱい定食を食べたい」と思うリピーターの獲得に成功した。
かつて「おかわり有料化」で反発も
しかし、「ご飯おかわり無料」のイメージがマイナスに働いたこともある。
2019年にやよい軒は東京・千葉・栃木・茨城の12店舗で試験的におかわりを有料化する。
白米のおかわりの価格は30円。有料化のテストを行った理由は、ご飯のおかわりをする人としない人で不公平感があるという声が上がったためだという。
予定どおり1カ月で有料化のテストは終了したが、SNSを中心に賛否が巻き起こった。その後、ご飯のおかわり無料は継続している。このときの判断について担当者は理由を明かさなかったが、「おかわり無料」はユーザーにとって重要な魅力であり、ブランドイメージを支える要素のひとつと判断したと推測できる。
それはコロナ禍のやよい軒の対応からも紐解ける。感染症予防の観点から従来どおりのサービスを継続できないことがわかると、第1回目の緊急事態が明けた2020年6月に全店で「ごはんおかわりロボ」の導入を発表。
ビュッフェやバイキングなど一時的に休止して様子見をする飲食店が多いなか、感染症対策のために投資をして「ご飯おかわり無料」を継続した。

無料サービスの「だし」(写真:筆者撮影)
2020年9月には「だし」の無料サービスを開始。無料の漬物とご飯を組み合わせて「シメのだしお茶漬け」という新しい楽しみ方を提案するようになった。つまり、おかわりの有料化ではなく、おかわりの促進に舵を切ったと言えるだろう。
2020年12月には「【だし茶漬用】ミニサバ小鉢」や「【だし茶漬用】ほぐし鮭小鉢」をサイドメニュー化。「ご飯をもう少し食べたいけど、少しおかずが足りない」と思う客の需要を満たしながら客単価の向上にも活かしている。

小鉢もサイドメニューに(写真:筆者撮影)
また、やよい軒の運営元であるプレナスは2021年から国内に農場を開設し、スマート農業にも取り組む。企業ブランドの中心に「コメ」を置く動きを加速させている。
おかわり継続をどうやって続けている?
農林水産省のデータによると、全国のスーパーのコメの平均価格は1年で2倍以上に高騰した。ご飯のおかわりを実施するやよい軒は、どのようにしてサービスを継続しているのだろうか。担当者は「人件費や原材料価格も上昇していますし、情勢を見ながら総合的に商品価格の改訂を行っています」と話す。
たしかに、やよい軒は段階的に価格の引き上げを行っている。それにもかかわらず、客数は減少していない。既存店売上高も前年度を上回るペースを維持している。その理由の1つはメインの顧客層にとって魅力的な製品を開発できているからだろう。
2025年は「辛うま麺とから揚げの定食」などコアユーザー層が好むコッテリとした期間限定のメニューを販売した。このメニューは2025年上半期の季節限定メニューの販売数ランキングで2位を獲得している。
また、担当者が「幅広いお客様に来ていただけるような商品施策も打っていますし、席配置なども工夫しています」と話すように、新規顧客層の開拓にも積極的だ。
2024年はアニメ「呪術廻戦」とのコラボを実施。「ネギたっぷり牛タン定食」を食べるとオリジナルのクリアファイルがもらえるキャンペーンを行い、女性客や若年層の来店へとつなげた。
セルフ型の店舗やスイーツの提供も
やよい軒はエリアに合わせた新たな施策もテストしている。2023年12月にブランドのロゴを変更した後、ロードサイドの一部店舗をセルフ型へ改装した。
筆者の訪れたやよい軒もセルフ型の店舗だった。入り口の機械で受付をして席を取り、席に置いてあるタッチパネルで注文すると配膳ロボが定食を運んできた。
また、店舗の雰囲気も大きく変わっていた。以前はテーブルとイスの席が多く定食屋のような活気があった。しかし、改装後は半個室のような1人席や2人席が増え、さらにドリンクバーも設置されていた。ホール内を動き回るスタッフはいなかったため、ネットカフェのような落ち着いた雰囲気に変化していた。

やよい軒の1人席(写真:筆者撮影)
「郊外では居心地のよさを感じていただいたり、長時間店舗を利用して色々なメニューをご購入いただけるような作りをテスト的に行っています。エリアのロケーションごとに店舗モデルを作ろうとしています」(担当者)
やよい軒らしいボリューム満点のスイーツ
さらに、ロードサイドにある一部の店舗ではスイーツメニューの販売もしている。筆者の訪れた店舗でも扱っていたので「和風黒蜜きなこワッフル」を注文してみた。

一部店舗限定の「和風黒蜜きなこワッフル」(写真:筆者撮影)
注文してから約10分後、やよい軒らしいボリューム満点のスイーツが運ばれてきた。配膳ロボが届けた皿には、ワッフルできな粉をサンドしたもの、あんこをサンドしたもの、かりんとう饅頭と抹茶アイスが盛られていた。実際に食べてみるとコッテリとした甘味の強さにうなった。
「ご飯を食べた後にそのまま帰っていただくのではなく、もう少しゆっくりしていただこうと思って試験的に実施しているんですよ。まだテストマーケティング中です」と担当者は話す。
「お腹いっぱいになりたい」と思うユーザーの希望を叶え続けるやよい軒。郊外店舗のカフェ化などで新しい需要を掘り起こそうとしているが、今後はどのような店舗やメニューが登場するのだろうか。