「クマとの遭遇」は東京や大阪でも!命を守る“クマよけ”無料スマホアプリと最新AI&ドローン対策

クマ出没圏拡大時代にどう備える?モバイルアプリで可能なクマよけ対策, 今年8月まででクマ出没1万6016件!過去最速ペース, これは日本だけの現象ではない, Webで確認できる各国のクマ出没マップ, 海外で使えるスマホ用クマ対策アプリ, 日本で利用できる、有効なクマ対策アプリ「BowBear」, ドローンやAIを活用した自治体の取り組みも進んでいる

写真はイメージです Photo:123RF

クマとの遭遇が「もしも」ではなく「いつか」の問題になりつつある昨今。2025年、日本のクマ出没数は過去最高を更新する勢いだ。東京や大阪でもクマの出没が目撃されているが、あなたは備えているだろうか?ワイドショーで解説されるような対策はもちろん、実はスマートフォンひとつで命を守れる可能性がある。知られざるクマよけアプリの実力と、AI・ドローンを駆使した最新技術まで、今すぐ知っておくべきクマ対策を紹介する。(テクノロジーライター 大谷和利)

クマ出没圏拡大時代にどう備える?モバイルアプリで可能なクマよけ対策

 今やテレビのワイドショーでも、クマに遭遇したらどう被害を避けるかの解説が行われる時代である。いざというとき、あなたはどうするだろうか?実はあまり知られていないが、iOSにもAndroidにもクマよけのためのアプリがあり、出没地がわかるだけでなく、遭遇を避けるための機能が備わっている。

 実は、クマ出没圏の拡大は日本に限った話ではなく、他国でも報告されている。今回は、そんなクマにまつわる傾向と対策をまとめてみた。

今年8月まででクマ出没1万6016件!過去最速ペース

 日本における年間を通じたクマの出没数は、2023年が統計上のピークで2万4348件。2024年はやや減少したが、それでも2万513件だった。ところが今年は8月までの数字ですでに1万6016件となっており、過去2年の同期間の数字(それぞれ1万705件と1万3778件)を上回ることから、通年で過去最高となることはほぼ確実と考えられる(※1)。

 人身被害についても深刻だ。件数、人数、死亡者数を見てみると、2023年でそれぞれ198件、219人、6人、2024年には82件、85人、3人だったのに対して、2025年は8月までに99件、108人、5人となっており、件数に対する死亡者数が多い傾向にある(※2)。

 しかもこれらの数字は、クマが生息していない九州・沖縄の8県が除外されているのは当然として、北海道が含まれていない。理由としては、他都府県に比べて面積が広大なため統一的な報告体制の整備が難しいことや、過度な警戒・風評被害を招かないための配慮が考えられる。しかし、北海道のクマ出没数はそこそこ大きな数になることは想像に難くなく、北海道を加えれば上記の数字はさらに増加するに違いない。また、都府県によって集計方法が「警察通報ベース」「市町村聞き取り」「現地調査報告」などと異なるため、それによる誤差も勘案する必要がある。だとしても、今年の出没数と被害が異様に多いことは確かだ。

※1 環境省の「クマ出没情報速報値」

※2 同「クマ類による人身被害について[速報値]」

これは日本だけの現象ではない

 出没数が増えた要因としては、すでにニュースなどでも報道されている通り、ブナやナラの実の凶作がエサ不足を招き、その結果、食べ物を探して市街地に侵入するという因果関係が指摘されている。加えて、暖冬や季節進行の乱れによる冬眠時期や活動タイミングのズレも挙げられている。

 これは日本に限ったことではない。たとえば、元々自然に囲まれたアメリカのコロラド州でも、果実やドングリが不作となった地域では例年以上の出没数が報告されている(※3)。また、リトアニアでも首都圏近郊での出没事例が同国の国営放送などによって報じられた(※4)ほか、スウェーデンでは増えたクマの個体数を背景に狩猟枠が拡大されている(※5)。後者のスウェーデンの例では、一時絶滅寸前に追い込まれたヒグマの保全政策が成功したために生息域が広がり、遭遇リスクも増大したということで、共存策と保全のバランスが議論となった。人間の側にも郊外住宅地の拡大による都市と森林の近接化や、放棄された果樹園やクマの餌となるゴミの放置など、解決すべき問題があるといえる。

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例年以上の熊出没を報じるコロラド州の公園&野生動物局のレポート(以下、画像はすべて筆者がキャプチャしたもの)

 一方で、カナダのブリティッシュコロンビア州の例(※6)では、年ごとに出没数の変動が大きく、継続的な増加傾向は見られていない。食料事情が出没数増減の最も大きな要因である点は他国と同様だが、カナダの場合には自然が豊かな分、食料事情が年によって異なるだけで、継続的な悪化にはつながっていないと考えられる。

※3 CPW reports an above average number of bear conflicts and sightings in 2024, offers regional insights from area wildlife managers

※4 The saga continues: Vilnius bear spotted in the forests near Pabradė

※5 Sweden to kill 20% of its brown bears in annual hunt

※6 Predator statistics: Black bear

Webで確認できる各国のクマ出没マップ

 日本のワイドショーなどでは、クマ鈴などを身につけてこちらの存在を知らせ、クマが接近しない状況を作り出すといった対策が紹介されている。また、都道府県によってはクマ出没マップ(実際の名称はそれぞれ異なる)を作成して公開しているので、それを参照して危険と思われる場所には近づかないという対応もある。こちらに防災士ライターの方がまとめたリンク集があるので、必要に応じて確認していただければと思う。

 海外でも、以下のようなクマ出没マップがWebで公開されている例がある。

・北米:Keep Bear WildというWebサービスで、衛星追跡されたクマのデータを可視化。ただし、研究・保全用途が主目的。

・米国フロリダ州:Black Bear SightingsというWebアプリで、市民から寄せられた黒クマの目撃情報を地図上に表示。

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スマートフォンの専用アプリを通じた市民からの投稿による黒熊の目撃情報が表示される、Black Bear Sightings。フロリダ州だけで、過去5年間にこれだけの目撃例があることに驚かされる

海外で使えるスマホ用クマ対策アプリ

 だが、最も効果的と思われるのはスマートフォン用のモバイルアプリを活用することだ。モバイルアプリのメリットは、常時携行できることに加え、GPS機能を利用して既存の出没スポットに近づいたことがマップ上でわかる点にある。アプリによっては出没スポットに近づくと警告音を鳴らせるというものもある。

・ルーマニアなど:RO-BEARというモバイルアプリで、ユーザーがクマとの遭遇を報告して地図上に表示できる。

・スウェーデン、ノルウェーなど:Skandobsというモバイルアプリで、クマ以外にもオオヤマネコ、イタチ、狼などの大型捕食動物の目撃を報告でき、地方自然保護当局などと連携している。

・北米地域:Wild Trackerというモバイルアプリで、クマを含む野生動物の目撃を記録して自治体・野生動物管理部門と連携している。

・米国など:Repawtsというモバイルアプリで、クマを含む野生動物の目撃報告、リアルタイムアラート、地図表示などが行える。

 この中で自治体や管理組織と連携しているものがあるのは、一般市民による報告には誤認や重複が含まれることも少なくないため、専門家が現地確認や精査を行う必要があるからだ。

日本で利用できる、有効なクマ対策アプリ「BowBear」

 日本でもクマよけアプリがいくつかリリースされているが、そのほとんどがクマ鈴の代わりに鈴音や雷鳴などの音を鳴らすものだったり、アプリ内課金しないとマップ利用ができなかったりする。その中で、音を発生させるだけでなく、地方自治体の公式クマ出没情報とユーザーによる目撃投稿情報をマップ上に表示できるのが、「BowBear」(iOS版、Android版)というモバイルアプリだ。筆者が調べた限りでは、地方自治体の公式情報とユーザーの目撃情報の両方をマップ表示でき、完全無料で利用できるのはこれだけだった。

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国産の「BowBear」アプリ。実際に畑の被害低減に効果があった猟犬の咆哮サウンドの再生に加えて、自治体およびユーザーからの目撃情報に基づく熊出没スポットを確認できる

 さらに、クマ出没スポットの表示スタイルも、自治体の公式情報は赤、自分の投稿情報は黄色の「マイスポット」、そして他のユーザーによる投稿情報は同じく黄色だが「未確認スポット」として区別できる点が秀逸だ。

 実際にBowBearを自分のiPhoneにインストールして起動すると、米国ポートランド市のマップが表示されたのには少々驚いたが、これは、海外の公的機関の情報には対応していないもののユーザー投稿が可能なため、わずかながら同市やロシアでの目撃例も掲載されていたからのようだ。

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BowBearアプリのマップ表示画面。各地のクマ出没状況が一目でわかる

 アプリ内の説明によると、開発元企業の代表の祖父が北海道で猟師をされていたそうで、数年前に猟師を引退したときに、クマが人や農作物を襲う問題解決に取り組んでいたとのこと。しかし製品化の道半ばで脳梗塞により他界してしまい、その遺志をついで完成させたものがBowBearなのだそうだ。収録されている音は実際に狩りをしているときの銃声と猟犬の咆哮であり、開発中にこの音源を畑などで流したところ、被害がかなり減少したという実績に基づいて採用されている。

 もちろん、開発元も注意しているように、このアプリがあればクマとの遭遇を完全に防げるということではない。それでも、少なくともその危険性をかなり減らせると思われるので、不安のある方はぜひともインストールして活用していただきたい。筆者はクマの出没地域には住んでいないものの、旅先で遭遇しないとも限らないので、インストールして備えだけは行っている。

ドローンやAIを活用した自治体の取り組みも進んでいる

 モバイルアプリは主にユーザー側の対策だが、自治体や企業でもテクノロジーを活用したクマ対策が進められている。

 たとえば富山県富山市では、クマの出没が多い地域で、AI搭載のカメラと市の防災行政無線を連携させたシステムの実証実験中だ(参考)。これはクマやその他の害獣の出没予想ルートに設置されたAIカメラが出没を検知すると、自動で防災無線を通じて「付近でクマ出没、注意を」と住民に放送するもので、メール/LINEに対する通知も可能な設計になっている。

 また北海道の羅臼町では、ヒグマ出没時の対応として、ドローンを活用した捜索および出没予想エリアに設置されたセンサーカメラ+AIによる検知通知システムが導入された(参考)。これにより、ヒグマが出没した際に、山間部で人が近づきづらい現場でも、ドローンや遠隔センサーで情報を早期に取得・共有することができ、住民や作業者のリスクを軽減できるとしている。

 さらに三重県では、夜間でもクマを見逃さない赤外線カメラ+AI画像解析+警報装置(=大音量スピーカー&ライト)を設置し、クマ出没を即時に警告する実証実験中だ(参考)。このシステムによって、「人手による見回り」の負担軽減と、クマとの偶発的遭遇を減らすことが期待されている。

 この他にも、民間企業の取り組みとして、気象予測で培ったデータ解析技術を応用し、植生、地形、気候などの環境データと、自治体による過去のクマ出没情報を組み合わせた機械学習モデルを構築した日本気象株式会社のような例もある(参考)。これにより、クマが出没しそうな場所を事前に予測して、危険が潜んでいそうな場所などの情報提供が可能になったとしている。

クマ出没圏拡大時代にどう備える?モバイルアプリで可能なクマよけ対策, 今年8月まででクマ出没1万6016件!過去最速ペース, これは日本だけの現象ではない, Webで確認できる各国のクマ出没マップ, 海外で使えるスマホ用クマ対策アプリ, 日本で利用できる、有効なクマ対策アプリ「BowBear」, ドローンやAIを活用した自治体の取り組みも進んでいる

本州全域のクマとの遭遇リスクを、250mメッシュの高解像度でカバーした「クマ遭遇リスクマップ」

 今後は、行政と民間のデータ統合を前提に、生態系保全とのバランスも考慮しつつ野生動物との新たな共生のあり方を見出していくことが求められる。しかし当面はモバイルアプリを活用して、自ら被害に遭わないように努力する状況が続きそうだ。