高級みそを使えばいいってもんじゃない!「みそ汁のおいしさ」を決める“たった1つのこと”

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日本の食卓の定番、みそ汁。代表的な家庭料理だが、いざ「おいしく作ろう!」と思うと意外と難しいもの。みその選び方からおいしく作るポイントまで、これから料理を始める人へのアドバイスを料理家・樋口直哉が語る。※本稿は、樋口直哉『料理1日目 たったの10皿で「料理の基本」はマスターできる』(光文社)の一部を抜粋・編集したものです。

みそと相性の悪い

食材はない!

 みそはアミノ酸や有機酸、無機酸、塩類などを含んでいる調味料。ごはんにみそをのせて食べてみると、それだけでおいしいことがわかります。味のバランスがとれている調味料なので、濃度にさえ気をつければみそ汁はそもそも「まずくなりにくい」。そこにみそ汁のすごさがあります。

 みそと相性が悪い食材はないので、残っている野菜があればみそ汁に加えれば冷蔵庫の整理にも一役買います。

 ごはんとみそ汁があればとりあえず食事の体裁は整う(そこに漬物か納豆、目玉焼きなどがあれば言うことなし)ので、覚えておくと役に立つ料理です。

 スーパーに行くと多種多様なみそが並んでいますが、外見からそれぞれの特徴や味はわからないので、選ぶにはやはり前もって知っておく必要があります。

 こんなふうに料理の世界では前提となる知識がなければ〈選びようがない〉食材や調味料がたくさんあります。

「どのみそを買えばいいんですか?」

 と料理に詳しい人に質問すると

「好きなものでいいんです。好みで選びましょう」

 という答えが返ってきます。

 たしかにその通りですが、この答えには問題があります。好きなものを選ぶには基準となる味を知らなければ選びようがないからです。

「1kg1000円以上のみそがいい」

 という意見を聞いたこともありますが、食べ物は必ずしも高価格の商品が優れているわけではありません。価格を頼りにするのはブランド信仰と同じで、自分の基準を外に委ねること。自分の内側に基準を持てなければ結局は「なにがおいしいのかわからない」という状態に陥るので、その意見には賛同できません。

みそ選びで迷ったら

一番安い米みそを買おう

「最初に買うならどんなみそですか?」

 この質問の答えは「スーパーで手に入る一番安い米みそ」です。

 そもそもみそは材料によって、米みそ、麦みそ、豆みその3種類に分類されますが、最も一般的なのが米みそ。米麹を使って醸すみそで、最も汎用性が高く、料理本のレシピにただ「みそ」と書かれていれば米みそを指します。

 とはいっても、なにが米みそで、どれが麦みそかわからないかもしれません。調味料選びに迷ったら、パッケージに記載されている名称や原材料を確認するクセをつけましょう。米みそであれば名称の欄に「米みそ」とありますし、麦みそであればそう記載されています。

 米みその場合、原材料名には「大豆、米、食塩」とあり、品質維持のために酒精(醸造アルコール=わかりやすく説明すると甲類焼酎)が入る場合もあります。

 原材料表示が教えてくれることは他にもあります。例えばみそによっては「米、大豆、食塩」という並び順のものもありますが、食品表示では使用している原材料が多い順に並べるルールになっているので、米=米麹が多いということはこのみそが「甘口」ということを示します(甘酒=米麹を想像してもらえればわかりやすいと思います)。

 米麹が増えると原価が上がるので、やや高価なはずです。逆に大豆が多いのは「辛口」になります。

「一番安いみそでいい」と聞くと味は大丈夫かと思うでしょうが、スーパーで市販されている製品はどれも品質が保たれているので心配には及びません。米みそのシェアの半分近くを占めるのが、長野県を中心に生産される「信州みそ」。まずは一番安い信州みそを探してみてもいいでしょう。

 はじめに高いみそを買っても味の違いがわかりにくいので、まず安価なものを試し、その味を覚えたら次に少し高いみそを買って、味の比較をしましょう。最初に基準をつくっておけば「今度はこっちのみそにしよう」とか「変えなくてもいいや」という具合に判断できるようになるからです。

味付けのブレを防ぐには

はかるしかない

 みそを買ってきたら次は保存です。みそは常温で保存すると風味が落ちていくので、必ず冷蔵庫に保存する必要があります。保存期間はみその種類によって異なりますが、米みその場合の保存期間の目安は冷蔵庫であれば1年程度。

 それを過ぎても保存状態さえ良ければ意外と食べられますが、風味は変わっていくので、早く食べ切るに越したことはありません。

「好みの味」を知るには経験値を積み重ねることが必要です。友人の家や外食で食べたみそ汁の味が気に入ったら、使っているみそを教えてもらうのもいいでしょう。そんなふうに積み重ねてきた経験が「あなたの味」になります。料理レベルを上げていく、という行為は自分自身の味を探す旅でもあるのです。

 人によって好きなみそが異なるように、味の感じ方には個人差があります。薄味好きだったり、濃いめが好きだったりという具合に違いがあるので、適宜調整していく必要があるのはこのため。

 料理が上手にできない、という人はこの味付けでつまずくことが多いようです。今日は濃かった、昨日は薄かった、というふうに味付けがブレるのを防ぐにはやはりはかるしかありません。

 味付けは主に塩と糖分のバランスで決まります。糖分に比べると塩分はシビアで、少し増やしただけで濃くなり、減らしただけで薄くなりがちです。そこで下の表のように塩分濃度の目安を決めておけば好みにあわせて調整することができます。

同書より転載

 例えばぼくのから揚げのレシピは鶏もも肉1枚=260gに対して塩分濃度1%=濃口しょう油大さじ1(塩分量2.6g)を基準にしています。もしも、塩辛いと感じたらしょう油を控えればいいですし、薄ければ塩やしょう油を足せばいいのです。

おいしい料理のための

〈調味パーセント〉

 こんなふうに必要な塩分量や糖分量から調味料の使用量を導き出す考え方を〈調味パーセント〉と言います。割合で覚えておけば少しだけつくるときも大人数に料理を振る舞うときにもいつでもおいしい味付けができます。

同書より転載

 みそ汁に味をつけるにはどれくらいの量のみそを入れればいいのでしょうか。

同書より転載

 つくりたいみそ汁の塩分濃度を0.8%とすると、2人前300mlのみそ汁に必要な塩分量は

同書より転載

 となります。味付けのためには2.4gの塩を加えればいいので、次にパッケージの裏に記載されている食塩相当量を参考にしましょう。

調味料をはかるうちに

目秤で見当がつくように

 一般的な米みその場合は100g当たり12g前後が多いですが、そう書いてあれば米みそ10gには1.2gの塩が含まれているということ。必要な塩の量は2.4gなので、20gのみそを加えればいいという計算になります。

 この計算はあくまで目安なので、厳密に考える必要はありません。ただ、はかることを心がけると、次第に目秤(目で見ただけでだいたいの量をはかること)で量の見当がつくようになります。はかることはやはり、料理レベルを上げるかんたんな方法なのです。

『料理1日目 たったの10皿で「料理の基本」はマスターできる』 (樋口直哉、光文社)

 食材の質が担保された状態で「料理がおいしくない」と感じるのは「塩気が足りていない」という場合がほとんどです。

 ぼくのみそ汁のレシピの塩分量の基準は0.8%ですが、ある論文(『味噌の味』伊藤寛/醸協75巻・1980年11号/p881-884)には「味噌汁に好まれる食塩濃度は、淡色辛味噌で1.1~1.2%で、地方の農家出身者では1.2~1.3%と高く」という報告があります。

 人によって好まれる塩分量は違いますし、例えばみそ汁をごはんのおかずにするのであればやや濃いめにする、という具合に最終的な濃さは食べる人や環境によって調整する必要があるでしょう。