JR西・東海は絶好調なのに…JR東だけが“物足りない決算”となった事情

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JR東日本の2025年度中間決算は、営業収益こそ増収となったが、営業・経常利益は微減にとどまった。JR西・東海が大幅な増収増益を達成する中、物足りない結果となった事情とは。(鉄道ジャーナリスト 枝久保達也)
物足りない数字となった
2025年度の中間決算
JR東日本は10月30日、2025年度中間決算を発表した。営業収益は前年同期比4.9%増の1兆4630億円ながら、営業利益は同1.8%減の2315億円、経常利益は同2.7%減の1989億円。純利益こそ投資用有価証券の売却益で同5.3%増の1472億円だったが、全体としては増収減益の内容となった。
JR西日本の中間決算は営業収益が同7.4%増、営業利益が同17.3%増、JR東海は営業収益が同12.4%増、営業利益が24.3%増となる大幅な増収増益だったことをふまえると、物足りない数字と言わざるを得ない。
どこに差があったのか。JR東日本の営業収益をセグメント別に見ると「運輸」が同4.9%増の9989億円、「不動産・ホテル」が同4.1%増の2156億円、「流通・サービス」が同5.8%増の2010億円、クレジットカード・Suicaなど「その他」が同4.4%増の474億円だった。
運輸セグメントを比較すると、JR西日本は同6.4%の増収、JR東海は同13.7%の増収で、大阪・関西万博の後押しがあったとはいえ、差が目立つ。
営業利益は運輸が同0.6%増の1432億円、不動産・ホテルが同17.0%減の478億円、流通・サービスが同12.5%増の312億円、その他が同26.6%増の89億円だ。同様に運輸セグメントを比較すると、JR西日本は同18.0%、JR東海の運輸セグメントは同25.5%の大幅な増益となっており、利益を伸ばせなかったJR東日本と差がついた形だ。
今後の収益源として注力している不動産・ホテルは増収減益となった。エキナカ店舗の好調、前年度に子会社化したイギリス自動販売機運営会社「Decorum Vending」の平年度化で増収増益となった流通・サービスでは支え切れず、営業利益は減益となった。
修繕費の大幅な増加が
鉄道事業の足かせに
改めて鉄道事業にフォーカスすると、新幹線の運輸収入が同5.5%増の3020億円、在来線定期が同1.6%増の2088億円、在来線定期外が同4.6%増の4049億円だった。単体の営業収益は前年比1251億円増(4.8%増)の1兆756億円ながら、営業費が同516億円増(6.2%増)の8817億円だった。
東海道・山陽新幹線と比べて回復が遅かった新幹線の復調は明るいニュースであるが、増収が増益につながっていないのは厳しい。鉄道は固定費の比率が高く、本来であれば増収は増益、減収は減益に直結するが、営業費の増加が鉄道の増益を上回った格好だ。
主要因はコロナ禍で先送りしていた修繕の再開で、物価高の影響もあり修繕費が同135億円(11.6%増)となった。だが、これは一時的なものであり、中期的には平準化していく。同社は2027年度までに鉄道事業のオペレーションコストを2019年度比で1000億円削減することを目指しており、現時点で達成が見込めるとしている。
コスト削減に関係して今回、明らかになったのは次世代改札の方向性と狙いだ。同社は昨年12月に発表した「Suica Renaissance」で、「改札はタッチするという当たり前を超える」として、タッチせずに改札を通過できる「ウォークスルー改札」、改札機がない駅での「位置情報等を活用した改札」の実現を目指すとしていた。
ここではサービス向上の観点を中心に語られていたが今回、これら次世代改札の導入で、駅の完全チケットレス、キャッシュレスを今後10年以内に実現し、オペレーションコストを100億~150億円程度削減するとの方向性が示された。また、出改札機器の削減などで生み出したスペースを有効活用して増収につなげたいとしている。
同社は2026年度末以降、磁気乗車券をQRコード乗車券に置き換えると発表しているが、果たして10年以内に完全チケットレスが実現するのか。どのようなロードマップを描いているのか、改めて担当者に取材を申し込み、深掘りしたいと思う。
増収効果は運賃改定分だけ?
「固め」想定だが成長の余地も
増収面では、2026年3月14日の実施を予定している運賃改定が中心となる。改定により年間820億円の増収効果を見込んでおり、これは2025年度業績予想と、グループ経営ビジョン「勇翔2034」で掲げた2027年度数値目標の差に等しい。
これは改定分以外の増収に期待しないことを意味するが、実際には「固め」の想定と見たほうがいいだろう。9月に発表したモビリティ中長期成長戦略「PRIDE & INTEGRITY」では、2031年度に営業収益を2024年度比で2000億円以上の増加を目指すとしており、羽田空港アクセス線など中期的な取り組みにより成長を目指していく。
運賃・料金についてはさらなる柔軟化を目指し、他社とも連携しつつ、引き続き国へ要望していく意向だ。現在、運賃は認可制、在来線特急料金は届出制だが、新幹線については特急料金が必須なため、自由席特急料金を運賃の一部とみなし認可制としている。これを届出制にし、行政の審議・判断を経ることなく変更可能にしたいとの内容だ。
また、現行の総括原価方式では、鉄道事業が「赤字」にならない限り、運賃値上げが認められない。つまり、収支が悪化しても利益を食いつぶすまでは対応できない仕組みであり、必要な投資が遅れる懸念がある。インフレ傾向が本格化する中、柔軟に対応できる仕組みの導入を要望している。
大規模開発が順調に進むかが
「大胆な数値目標」達成のカギ
生活ソリューション部門では、新たな事業の柱と位置付ける不動産・ホテル事業が、前述の通り、増収減益となった。高輪ゲートウェイシティ開業によるオフィス賃貸収入やホテルなどの売上増が増収に寄与した一方、不動産販売の減収減益、施設新規開業による費用増の影響で前年比17.0%の減益となった。
不動産販売とは一般的にイメージされる住宅などの分譲ではなく、社有地や取得した用地を開発し、その一部をJR東日本グループが関与する不動産ファンドに売却。その利益を新たな投資に振り向ける不動産の回転型ビジネスだ。
現状は既存物件の売却がひと通りすすみ、次なる開発に向けた“種まき”の段階だ。2027年度までに1000億円規模の投資という数値目標を達成し、「回転」が軌道に乗れば大きな利益が期待できる。
また、今年度末には高輪ゲートウェイの全面開業、大井町トラックスの開業が控えている。両施設ともオフィス、テナントのリーシングは順調とのことで、今後は大きな収益源となることが期待される。むしろ問題は、工費の増大や人手不足により工事が停滞または事業そのものを見直す動きが、都内各地で相次いでいることだ。
同社は2031年度の営業収益を、2025年度業績予想から1兆円積み増して4兆円増とする大胆な数値目標を掲げているが、エンジンとなるのが不動産セグメントだ。今後の大規模開発が順調に進むかが、目標達成のカギとなってくるだろう。

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冒頭に「物足りない数字」と書いたが、事業環境は好転している。今回の決算では4月に発表した通期業績予想を上方修正するとともに、中間配当・期末配当を増額すると発表した。
営業収益は期首予想比350億円増の3兆580億円、営業利益は同180億円増の4050億円の増収増益としている。中でも運輸は営業収益が同300億円増、営業利益が同150億円増となり、増収増益のほとんどを占めている。
これを2024年度と比較すると営業収益は全体で5.9%増、うち運輸は4.4%増、不動産・ホテルは13.6%増、営業利益は全体で7.5%増、うち運輸は9.0%増、不動産・ホテルは3.0%増となり、中間決算とは印象が全く変わってくる。
JR東日本は曲がり角を迎える鉄道業界でも、特に変化の渦中にある鉄道事業者だ。目先の数字で業績を判断するのではなく、中長期的視点で見極める必要がある。
ワンマン・ドライバレス運転の拡大や、前述のチケットレス化など鉄道のオペレーションコスト削減は予定通り進むのか。これは技術開発の面だけでなく、法制度や社会受容の問題も絡むだけに一筋縄では行かない。新線建設や不動産開発の遅延リスクもある。2030年代を見据えた高い目標に本当に到達するのか、各施策の進捗度に注目しながら追っていきたい。