「カーシェアの普及 = 車離れ」はもう古い! 若者の“試乗消費”が生む購買の新潮流とは

若年層とカーシェアリング

 昨今、「車離れ」が話題に上がることが多い。特に若い世代で自動車への関心が低下し、所有しない傾向が強まっているとされる。その背景のひとつに、カーシェアサービスの普及がある。カーシェアリングの情報比較サイト「カーシェアリング比較360°」によれば、主要5社のステーション数は2025年4月から6月で3万541か所に達し、前年同期比で6.4%増加した。車両台数も6万6059台と7.3%増えており、市場は拡大傾向にある。

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 では、若年層は実際にカーシェアリングを利用しているのだろうか。パーク24のタイムズカー会員の年齢構成を見ると、20代以下が33.4%を占める。30代まで含めると、利用者の半数以上が若い世代にあたる。都市部では

・通勤

・買い物

・週末のレジャー

など、日常の移動手段として利用されるケースが多い一方、地方ではステーション数の制約から利用機会が限られることもある。この差は、カーシェア普及の地域的格差を浮き彫りにしている。

 さらに、下北沢自動車学校が実施した調査では、都内在住の普通自動車免許保有者18歳~24歳のうち、40.1%がカーシェアリングを利用していることが明らかになった。調査結果からは、若年層の間でカーシェアリングサービスの需要は一定程度存在することがうかがえる。加えて、若者は所有にこだわらず必要なときだけ車を使える利便性や、維持費を抑えながら移動手段を確保できる安心感を評価していることも見て取れる。

 しかし、こうしたデータだけでは若者の「車離れ」との関係を単純に結びつけることはできない。カーシェアリングはあくまで

「車に触れる機会を増やす手段」

であり、所有意欲を削ぐものではない可能性もある。都市部の若年層に限らず、生活圏や移動ニーズに応じてカーシェアの役割は多様であり、所有と利用のバランスを再考する契機となっているといえる。

若年層の購入意欲上昇

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カーシェアリングサービスでQOLの向上を実感(画像:下北沢自動車学校)

 下北沢自動車学校の調査を詳しく見ると、カーシェアリングサービスの利用が若年層の行動や意識に影響を与えていることがわかる。サービスを利用している若者の74.6%が、行動範囲が広がったと感じており、65.5%は生活の質が向上したと答えている。移動の自由度が増すことは、通学やアルバイト、趣味の活動など日常生活の選択肢の拡大にもつながる。

 2012(平成24)年にタイムズ24が個人プラン会員向けに行ったアンケートでは、将来的に車の購入意欲がある会員は51.4%に上った。そのうち17.7%は、カーシェアリングを始めた後に自分の車が欲しいと回答している。年代別に見ても、10代~20代では利用前に比べ36.3%上昇し、86.2%に達していることから、カーシェアリング体験が購買意欲に直接的な影響を与えていることがわかる。

 この傾向は個人の感覚の問題にとどまらず、自動車経済の観点でも興味深い。若者がカーシェアを通じて車の利便性や快適性を体験することで、購買の検討段階に入るプロセスが加速している。特に、都市部で車の保有が必ずしも生活の必須条件でない環境において、体験型の移動サービスは購入意欲の喚起につながる可能性が高い。

 このことから、カーシェアリングは若者の車離れを加速させるどころか、車の魅力を理解させる手段として機能しているといえる。将来的な購入につながる潜在需要を掘り起こす役割も果たしており、カーシェアリング体験が販売促進やマーケティング戦略の一環として注目される背景もここにある。

維持費負担と車離れ

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自動車は購入代と維持費がネック…?(画像:写真AC)

 カーシェアリングサービスが若者の車離れに全く関係ないわけではない。KINTOが2025年に実施したZ世代の車に対する意識比較調査では、東京都内在住の18歳~25歳、普通自動車免許を持つ309人に自動車を所有していない理由を尋ねたところ、19.4%がレンタカーやカーシェアで間に合うと回答している。この結果から、一部の若者はカーシェアを利用することで自動車購入の必要性を感じにくくなっていることが示唆される。

 一方で、車への関心が薄れたわけではない。将来的に車を欲しいと思うかという問いには、とても思うが36.6%、やや思うが32.7%に上り、約7割の若者が前向きに所有を検討している。また、運転が好きかという質問でも、29.1%がとても好き、38.8%がやや好きと答えており、多くの若者は運転体験にポジティブな印象を持っていることがうかがえる。

 それにもかかわらず、車離れが問題視される背景には経済的な要因が大きい。購入費用に加え、ガソリン代や駐車場代、保険料などの維持費が負担感を強め、若者が購入を躊躇する理由になっている。都市部では駐車場代が高額で、短時間しか運転しない場合でもコスト負担が重くのしかかる。地方では公共交通の利便性が低く、自家用車への依存度が高いが、維持費の問題で購入をためらうケースも多い。

 こうした状況下で、カーシェアリングは経済的ハードルを緩和する役割を担っている。所有することなく車を利用できる仕組みは、生活上の必要性や利便性を満たすだけでなく、将来的な購買意欲の形成にもつながる。利用体験を通して、車を持つことの価値や快適さを理解する機会を提供できる点が、カーシェアリングの重要性を示している。

カーシェアの体験価値

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カーシェアで自動車の魅力を体感(画像:写真AC)

 これまでの調査結果が示すとおり、若者世代は車を嫌っているわけでも、生活に必要がなくなったわけでもない。車のある生活が日常の移動を便利にし、行動範囲や生活の質を高めることは理解している。しかし、購入や保有にかかる経済的負担がネックとなり、所有を断念する人は少なくない。

 こうした背景の中で、カーシェアリングサービスは車離れと結びつけて語られることが多いが、実際には若者が所有せずとも車を生活に取り入れられる手段を提供している。固定観念としてあった「車は所有するもの」という考え方は変化しつつあり、カーシェアの普及はこの価値観の転換を後押ししている。

 さらに、カーシェアは単に車を使える利便性を提供するだけでなく、車の魅力を手軽に体験できる場としても機能している。乗り捨て利用やキャッシュレス決済など利便性を高める工夫は欠かせない。また、自動車メーカーと連携して試乗車的な役割を担えば、利用者の購買意欲を刺激する効果も期待できる。

 車は決して安価な買い物ではなく、単にデザインやスペックだけで購入を決める人は少数だ。だが、カーシェアを通じて車を実際に利用し、快適さや満足感を体験すれば、購入を前向きに検討する動機になる。こうした体験機会を提供する点で、カーシェアリングは若者の車離れを緩和する可能性を大いに持っているといえるだろう。