初期計画では資金不足に!大規模修繕直後に長期修繕計画を見直した郊外の大型マンションが、築22年目の今受ける評価

「ニューロシティ自治会」主催の住民交流会。近隣中学校吹奏楽部による演奏会に多くの住民が集まる(2024年10月) 写真提供:ニューロシティ管理組合

東京郊外の日野市にある6棟707戸からなる「ニューロシティ」は、2015年に実施した1回目大規模修繕の直後から「次の50年」を見据え、長期修繕計画の見直しに着手した。修繕積立金を「段階増額積立方式」から「均等積立方式」に変更、戸当たりにして月額平均約9000円の値上げに踏み切る。築22年目の現在も良好な管理は維持されており、再販時の評価にもつながっているようだ。新旧の理事にこれまでの経緯を聞いた。

大規模修繕完了直後に「長期修繕計画」再検討開始

 2003年8月竣工の大規模マンション「ニューロシティ」が、1回目の大規模修繕を実施したのは、今から10年前の15年3月だった。12年に理事会の外部組織として専門委員会を設立し、翌13年7月に綿密な建物調査を実施。大規模修繕では、外壁塗装やシーリング工事などの補修に重点を置いて修繕を行った。一方で、予定していた屋上防水など一部急を要しない工事を見送ってコストを抑えた結果、費用は何とか当初の計画内に収まった。

 だが、無事に修繕が完了した16年3月の時点で、すでに理事たちの目は次の課題に向けられていた。

「今の計画のままでは、いずれ資金不足に陥る……」

 第12期で副理事長、14期で理事長を務めた中島篤史氏が中心となり、すぐに新たな長期修繕計画についての検討が行われた。このタイミングで再検討を始めた最大の理由は、竣工時に販売会社から提案を受けた「一時金併用の段階増額を前提とした長期修繕計画」では、恐らく今後の大規模修繕は乗り切れないだろうという危機感にあった。

 管理組合では、大規模修繕工事の総括の後、長期修繕検討専門委員会を設置。そこから半年で計画を練り上げていく。専門委員会にはコンサルタントとしてさくら事務所も加わり、20年先、30年先の修繕工事がどのようなものになるかなどの助言を受けながら進んでいった。

 マンションも築10年を超えると、次第に外壁塗装やシーリング工事、ルーフバルコニー防水工事といった大がかりな修繕の必要が生じ、その分費用も増していく。ニューロシティの専門委員会は、大規模修繕を12年周期とした場合に36年後の53年(第50期)に行われる第4回大規模修繕までを1クールとして、真に必要な修繕項目とコストを洗い出した。

 そして、予想通り大きな課題として浮かび上がったのが、修繕積立金だった。当時の修繕積立金は月額平方メートル単価112円だったが、そのままでは2回目の大規模修繕を行う予定の28年(第25期)で1億8000万円程度の不足が生じ、3回目に至る頃にはさらに大きな赤字となる。それを一時金で補おうとすれば、多くの住民の日常生活に影響を及ぼすのが容易に想像できた。一時金併用型の「段階増額積立方式」には、それほどのリスクがある。

2003年8月竣工、富士山を近くに感じられる多摩川沿いの住宅地に立つ地上15階、707戸の大規模物件。近隣ではひと際目立つランドマーク的存在だ Photo by Ryoichi Shimizu

不安を払拭する手作りの資料が積立金の大幅増に貢献

1回目の大規模修繕工事から10年がたつが、外廊下の壁や床は美観を保っている Photo by Ryoichi Shimizu

 修繕積立金の増額は免れない状況を前に、「段階増額積立方式」から「均等積立方式」への移行が検討された。通常、「段階増額積立方式」を採用する管理組合では、5年程度での積立金値上げが想定されている。値上げの度に総会で区分所有者に合意を求める場合、合意が得られなければ長期修繕計画が頓挫することも考えられる。

 その点、「均等積立方式」であれば、50年、60年にわたる長期修繕計画においても修繕費用総額から予算を作りやすく、また、将来を見据えた先手での修繕も実行しやすい。

 17年10月に行った住民アンケートでは、急変緩和方式(*注)27.2%に対して、65.8%の住民が「均等積立方式」を希望しているという結果が推進の理由となった。

「均等積立方式」への移行を前提に算出された修繕積立金は、月額平方メートル単価210円。これなら築50年まで値上げも一時金の徴収も不要となり、将来大幅に負担が増えるリスクが抑えられる。

 とはいえ、戸当たり月額平均9000円ほどの値上げである。反対意見が出るのは十分予想できた。そこで管理組合では、住民の「納得感」をキーワードに、配布資料や説明会用の資料を徹底的に作り込んだ。

「自分も住民の一人として、説明会で何を聞きたいかを考えた上で、一つ一つ疑問を潰していくやり方で資料の作成を進めました」(中島氏)

 長期修繕計画の見直しには、国土交通省のガイドラインにのっとったものであることを強調し、長期修繕計画の必要性、修繕積立金の積立状況と今後の見込み、210円という金額の根拠まで、具体的な数字を基に、逐一積み上げていった。

 同時に、積立金不足で修繕が滞れば将来どうなるか、マンションの資産価値がどんどん下がっていいのかと、住民たちの心に訴えかけたという。万全の準備をした上で、全住民に対し、計3回の説明会を実施した。

「住民説明会でプレゼンをした後は、拍手をいただいた会もありましたが、月額の負担増を考えると住民の皆さんも苦渋の賛成だったと思います。ニューロシティは永住志向が高く、当時は現役ビジネスパーソン世代も多かったため、長期的な観点で資産価値を維持したいという気持ちが、このような結果として表れたのだと思います」(中島氏)

*注 修繕積立金額を2段階に分けて増額し、住民負担を軽減する方式

「引き継がれる住環境」を後押しするコミュニティー形成

冬の風物詩となったイベント「イルミネーション」。多摩川に面した棟の共用部分をカラー照明でライトアップ 写真提供:ニューロシティ管理組合

 ニューロシティでは現在、28年に予定されている2回目の大規模修繕に向けての検討が始まっている。建築資材や人件費などの高騰を受け、築20年を超えるマンションの多くが修繕積立金の大幅な見直しを余儀なくされている中、ニューロシティは次回修繕を予算内で乗り切れる見通しだ。

 ただし、ここ数年の工事費高騰は17年時点の想定を大きく上回っており、2回目以降の大規模修繕時期見直しも視野に入れている。これまでは12年周期で考えてきたが、前回の大規模修繕の振り返りを通じ、コンサルタントから15年以上のスパンで考えることも可能という意見もあって、検討している最中だという。

 このように、マンションの資産価値維持に真摯な姿勢で向き合い続ける理事会をサポートしているのが、同マンションの自治会だ。季節行事を中心に、年間で数多くのイベントを開催し、コミュニティー形成に尽力してきた。理事会と専門委員会を区分所有者と橋渡しし、大規模修繕に当たっての合意形成に一役買っている。

 マンション管理の目的は、管理組合が自発的に活動し、住民自らが誇りを持って住み続けられる環境づくりにほかならない。

「最近入居された方に聞いたところ、修繕積立金が他と比べて少し高いと説明を受けたが、しっかりした管理体制やコミュニティーが魅力的だったから購入を決めたとのことでした」(22期理事長・久保良生氏)

 ニューロシティで生まれ育った世代が、別の住戸を購入して親元を独立しているケースもあるというのは、管理体制やコミュニティーの質の高さを物語る。現在、管理状況の客観的評価を受けるべく、マンション管理適正評価制度への登録も検討中だ。

現管理体制の布石を打った新旧理事。左から、畑山省司元理事長、日下晋一現副理事長、会沢隆之介前理事長、久保良生現理事長、大江昭平現副理事長、中島篤史元理事長 Photo by Ryoichi Shimizu