AIバブルで不安視される「リーマン・ショックの再来」… 7兆ドル投資の裏側で膨張する「複雑な証券化」という巨額の借金リスク

最近の株式相場が不安定な値動きを見せる中、市場には「いよいよ、AIバブルの崩壊か?」という危機感が漂い出した。

かつて米国で「サブプライム・ローン(低所得者向けの住宅ローン)」による住宅バブルの崩壊を予想し、それに対する空売りで巨額の利益を上げたことで有名になった(映画化もされた)投資家のマイケル・バリー(Micael Burry)氏が先頃、自らのXで最近のAIブームのバブル化やそれへの空売りを暗示するような発言をしたことも、市場関係者の危機感を煽っているようだ。

ここに見られるように、2000年代のサブプライム・ローン問題とそれが引き起こした2008年のリーマン・ショック(著名投資銀行の破綻を引き金とする世界的な金融危機)を現在のAIブーム(バブル)とダブらせて見る向きは日増しに強まっている。

サブプライム・ローン問題との共通項

両者に共通するのは、2000年代の住宅ブーム(バブル)も現在のAIブームも共に巨額の借金(debt)によって膨張してきたということだ。

特に最近のAIブームでは、その引き金となったChatGPTに代表される生成AI(チャットボット)の開発・運用に大量のGPU(AI半導体)やそれらを収納する巨大データセンターが必要とされ、その調達・建設コストなどがとてつもない金額に膨らんだ。

その象徴が今年1月、ホワイトハウスでトランプ大統領と共に発表された(OpenAI、ソフトバンク、オラクルらによる)スターゲイト計画だ。この計画では全米各地に巨大データセンターを建設するなど、AIインフラの整備に最大5000億ドル(75兆円以上)の資金が投じられると発表された。

サブプライム・ローン問題との共通項, 巨額の借金をごまかす複雑な証券化, 現在のAIブームは本物か、それとも投機か, 何かが狂っていることは確か, 「自己責任なので許される」という論理は通用するのか

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またグーグルやアマゾン、メタ、マイクロソフトなどビッグテック4社も今年通年で約4000億ドル(60兆円以上)を投じてデータセンターなどのAIインフラを整備し、来年はさらに投資金額が膨らむ見通しだ。

米マッキンゼーによれば、今のペースでいけば、2030年までにこれらAIインフラの整備に総額7兆ドル(1000兆円以上)もの資金が必要となってくるという。

問題はそれら巨額資金の大半が事実上の借金によって賄われることだ。

たとえばOpenAIやその取引先であるクラウド事業者のコアウィーブ(CoreWeave)などスタートアップ企業は言うに及ばず、最近では本来キャッシュフローに余裕があるはずのグーグルやメタ、アマゾン、マイクロソフトなどビッグテックすらAIインフラの建設を加速するために借金に頼るようになってきた。

巨額の借金をごまかす複雑な証券化

ニューヨークタイムズの報道によれば、これらビッグテックによる借金の多くは「資産担保証券(Asset Back Securities:ABS)など、いわゆる証券化の手法によって金融市場から調達されるという。

特にメタはルイジアナ州に設置する巨大データセンターの建設費など約300億ドル(4兆5000億円以上)を調達するために、「CMBS(商業用不動産担保証券)」や「SPV(特別目的事業体)」など、私達一般人には中々理解し難い複雑な資金調達スキームに依存している。

これによって巨額の借金をメタ本体から切り離し、そのキャッシュフローや利益、負債など財務状況を実際以上に良く見せることが主な目的らしい。

このように事実上の借金を不透明な資金調達スキームで偽装し、しかもそれによる成果、つまりチャットボットなどの生成AIが巨額投資に見合うだけの利益をもたらすかが怪しいことから、メタの株価は直近1か月で約15パーセントも下げた。

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また、これらの複雑・不透明な証券化によって資金を調達する慣行は実はメタに限定されず、(グーグル、アマゾン、マイクロソフトなども含む)いわゆるハイパースケーラー向けに建設されるデータセンター全体、つまり業界標準的に広がっているとされる。

これは、かつて2000年代に同じく複雑・不透明な「住宅ローンの証券化」によって巨大バブルを膨らませたサブプライム問題にダブって見える。

このため市場関係者の間には「現在のAIブーム(バブル)はサブプライム問題の再来ではないか」という懸念が生じた。そこから必然的に「今回のAIバブルも間もなく崩壊して、かつてのリーマン・ショックのような金融危機が再来するのではないか」という恐怖につながるのである。

現在のAIブームは本物か、それとも投機か

が、実際はどうなのだろうか?

この点については、(無責任なようだが)エコノミストや証券アナリストら金融専門家の間でも意見が割れている。

一部の悲観的な専門家は「現在のAIブーム(バブル)に投下される数兆ドル(数百兆円)もの資金はかつてのサブプライム・バブル時よりも数倍大きい(から、それが崩壊したときの衝撃・被害も数倍大きいはずだ)」と警鐘を鳴らす。

これに対し、一部の楽観的な専門家は「現在のAIブームは『コーディングの自働化』や『企業内の生産性向上』などROI(対投資効果)を生み出しており、かつてのサブプライム危機のような投機バブルではない」と反論する(「だから安心しろ」とまでは言っていないようだが)。

つまり現在のAIブームが今後、どういう方向に進み、最終的にどのような結果に落ち着くのかは専門家の間でも確たる結論に至っていないようだ。

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何かが狂っていることは確か

そうした中、ただ一つだけ確かなことがある。

それは「現在のAIブームはその経済的な規模において明らかに異常である」ということだ。あるいは、もっとハッキリ言えば「何かが間違っている」と言ってもいいかもしれない。

現在の生成AIブームとそれに投下される途方もない資金を正当化する主な理由は、いわゆる「AGI(汎用人工知能)」や「ASI(人工超知能)」などスーパーインテリジェンス(超知能)の実現と、その背景にある「スケール則」と呼ばれる経験則だ。

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ここでスケール則とは次のようなものだ:

(ChatGPTなど生成AIのベースとなる)大規模言語モデル(LLM)の規模やそのトレーニング(機械学習)に使われるデータ量、そのためのGPUなど計算資源を増やせば増やすほど、その性能もどんどん高まっていく。また、その過程でいわゆる「創発(emergence)」と呼ばれる不可思議な現象によって、本来AI研究者が想定していなかった「推論」など論理的思考力もLLMに養われていった。

このスケール則は最近、GPT-5などで若干頭打ちした感もあるが、OpenAIやアンソロピックをはじめ主力AI企業の経営者や技術者らは、心の底では「今後、LLMの開発に投入されるGPUなど計算資源を従来と桁違いに増加させればスケール則は息を吹き返し、その先にAGIなどの超知能が生まれる」と見ている節がある。

https://gendai.media/articles/-/158372?page=4

つまり「LLM」という従来の方式を踏襲したまま、そのスケールをどんどん拡大していけば、その先に「人類を凌ぐほどの超知能」が誕生する。これほどの言わば「世界の歴史に刻まれるような大発明」を目指している以上、「それなりに巨額の資金が必要とされるのは当然ではないか」という考え方だ。

「自己責任なので許される」という論理は通用するのか

が、それにしてもグーグルやアマゾンなどITビッグ4だけでも年間60兆円、いずれは業界全体で(日本やドイツのGDPをゆうに上回る)1000兆円ものAIインフラ投資が必要というのは、さすがに常軌を逸しているであろう。いくら人類を凌ぐほどの超知能を目指すとは言え、本当にそれ程の大金が必要なのか?

もちろんOpenAIをはじめAI企業側にしてみれば「我々は国費つまり税金ではなく、自力で調達してくるお金に頼っているのだから、外部の人達からあれこれケチをつけられる筋合いではない。仮に成功しようが、失敗しようが、我々の勝手(自己責任)でしょ?」と言いたくなるかもしれない。

が、そのような国家経済規模の超投資がバブル化し、今後万一崩壊することがあれば、かつてのリーマン・ショックのような世界的金融危機が再来し、巷に失業者が溢れるような事態にもなりかねない。となると、単なる(AI企業側の)自己責任論では済まされないはずだ。

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また巨額資金を投じて各地に建設されるデータセンターによって、地域社会の電力・水不足や水質汚染などの問題も懸念されており、その兆候は既に現れている。つまりLLMのような現在のAI開発は、経済的あるいは社会的にかなりの無理が生じている。

これらを勘案すれば、(前述のように)LLMのスケール則に陰りが見えた時点で、その延命にかけて天文学的な巨額資金を投じ、環境問題などの社会的コストを生じさせるよりも、むしろ(LLMなど)従来方式とは全く違う方式の研究開発を進め、それによってなるべくお金をかけず、環境コストなども出来る限り抑えて最終目標のAGIや超知能を実現する、というのが本来あるべき姿、あるいは辿るべき道かもしれない。