高市首相「存立危機事態」発言への猛反発は”目くらまし”か…不動産暴落と工場閉鎖が示す、中国経済の苦境
高市発言の余波
「勝手に突っ込んできたその汚い首は一瞬のちゅうちょもなく斬ってやるしかない」
これは8日Xで中国の 薛剣・駐大阪総領事が高市早苗首相の国会での台湾有事を巡る発言を受け投稿されたものだ。※投稿はその後削除
今、日中関係が大きく揺れている。
高市首相の発言を受け、中国政府はさらに11月14日、中国国民に対して日本への渡航を当面控えるよう、注意喚起した。

発言撤回を求めた中国・孫衛東外務次官 Photo by Gettyimages
今年1~9月の訪日中国人旅行者数は合計749万人で、国、地域別で首位だ。中国政府の渡航自粛で旅行者数が減少すれば、日本の観光業界にとって打撃となることは間違いない。
経済制裁を使って日本の政策を変更させようとするのは中国政府の常套手段だが、「今回の措置には別の意図があるのではないか」と筆者は考えている。その意図とは、中国経済の不振を隠蔽することだ。
低迷続く中国経済
10月の経済統計から、中国経済の悪化が進んでいることが明らかになっている。
10月の鉱工業生産は前年比4.9%増と、9月(6.5%増)から減速し、昨年8月以来の低い伸びとなった。
特に深刻だったのは鉄鋼業だった。10月の粗鋼生産量は前年比12%減の7200万トンと、5ヵ月連続の減少となった。
製造業分野の労働者の就労環境は厳しくなる一方だ。
相次ぐ工場閉鎖と給料未払いに絶望した出稼ぎ労働者が故郷に帰り始めており、「3ヵ月早い帰郷ラッシュが起きている」との声が流れている。
10月の小売売上高も前年比2.9%増と、昨年8月以来の低い伸びだった。
底の見えない住宅価格の下落
鉱工業生産と小売売上高の不調の大本の原因は不動産不況にある。
ロイターは14日、「10月の新築住宅価格は前月比0.5%下落し、昨年10月以来1年ぶりの大幅な落ち込みとなった」と報じた。
気がかりなのは、住宅価格の底が見えないことだ。
専門家は「中国の住宅価格は今後も下がり続ける」と指摘する。住宅市場の在庫処理が一向に進んでいないからだ。
中国のシンクタンク「広開首席産業研究院(広開)」は6日、「(中国の2026~30年の動向について)在庫処理を進めている段階で、住宅価格は低水準となる。人口の高齢化も需要を弱める要因となる」との見解を示した。

不動産の下落がいまだ止まっていない Photo by Gettyimages
広開は「次の5年間の新築不動産販売面積(平均)は昨年から最大4割近く減る」と試算しているが、その減少幅がさらに大きくなる可能性は十分にある。
金融市場の機能不全
不況の長期化により金融市場も低迷している。
中国人民銀行(中央銀行)が13日に公表したデータによれば、10月の人民元建て融資が2200億元(約4兆7300億円)と、前月の1兆2900億元から急減した。
不動産市場の長期低迷や米中貿易摩擦による不確実性などから、中国の企業や家計が借り入れに慎重になっていることが浮き彫りになった形だ。
実態のない融資が増えていることも気になるところだ。

中国人民銀行 Photo by Gettyimages
ブルームバーグは12日「銀行が政府設定の目標をクリアするため、『貸してすぐ回収する』いわゆる見せかけ融資を大規模に展開している」と報じた。
バブル崩壊後の1990年代の日本を彷彿とさせる光景だ。
そんな中国が相も変わらず頼ろうとするのが、愛国主義、そして人工知能やロボットをはじめとしたハイテク産業だ。
しかし、経済の長期低迷の立て直しにつながらないばかりか、中国ウォッチャーたちからは習近平体制長期化の終わりを示唆するような指摘も出始めている。
後編記事『習近平体制長期化も、エリートはAIに職を奪われ始め、抗議活動は急増…そして中国はソ連と同じ「停滞の道」へ…』にて詳しく解説する。