【銘柄】イオンの株価が2倍に。かつての優待株はなぜ成長株へ転生できたのか

【銘柄】イオンの株価が2倍に。かつての優待株はなぜ成長株へ転生できたのか
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<「優待だけが魅力」と言われたイオンの株価が今年に入って2倍に上昇。その背景には、改革による着実な業績改善と、NISA資金の流入、そして、ライバルの存在があった>
「イオンが上場来高値を更新」──半導体やAI関連株が主役のいまの日本株市場で、国内の小売の代表格であるイオン<8267>が話題をさらう日がやってくるとは、誰が想像したでしょうか?
2025年10月、イオンの株価は上場来高値を更新(分割修正後の実質ベース)。11月に入ってからも高値を更新しており、年初来安値からは約2倍の上昇となっています。

かつては「優待だけが魅力のファミリー株」として、家計と共にある存在だったイオン。しかし現在、明確な成長ストーリーを描く「成長株」として、株式市場で再評価されつつあります。その背景には単なる優待株では終わらない、企業改革のストーリーがありました。
株主優待は人気だが市場の評価は...
イオン株と聞いて個人投資家がまず思い浮かべるのは「オーナーズカード」。保有株に応じて買い物代金の一部がキャッシュバックされる、という株主優待の仕組みで、長らく主婦層を中心に人気を集めてきました。筆者も「イオン株ってどうなの?」とよく訊かれたものです。
株価云々よりも、日常生活で「お得」を手にできる点が重視され、特に2000年代から2010年代にかけては「生活に寄り添う株」の代表として語られることが多くありました。
しかし、株式市場の評価は異なりました。会社の中核である「GMS(総合スーパー)」事業は、広い売り場と人員を抱えるがゆえに収益性が低く「規模はあるが儲からない会社」というレッテルが貼られていたのです。
これを打破しようと、イオンではドラッグストアのウエルシアを傘下に収めるなど、金融やヘルスケアなどでも多角化や再編を行います。それでも、市場では「成長ストーリーとしては弱い」と見られていました。その将来性を確認できるまでは......。
転換点となったGMS事業の改革
イオンに対する株式市場の評価が変わったのは、GMS事業の収益性改善が数字で裏付けられたからです。2022年度(2023年2月期)に黒字へ転じ、2023年、2024年度と3期連続で利益を確保。かつて「売上は大きいが利益が薄い」と言われた構造から脱却しつつあります。
衣料品売り場は専門店型へ再編され、食品売り場では品揃えや売り場レイアウトの見直しが進みました。また、客が商品のバーコードをスキャンしてセルフ会計できる「レジゴー」の導入や、AI発注などDXによる効率化で、在庫と人員の最適化を実現。単なるコスト削減ではなく、利益を生み出す仕組みそのものを更新したのです。
株式市場は、この変化を一過性のものではなく持続性を伴う「構造改善」と捉え、イオン株の評価を引き上げました。
■「トップバリュ」が収益エンジンに
イオンの再浮上を語る上で外せないのが、プライベートブランド(PB)の「トップバリュ」です。
中間マージンを抑えた高品質・低価格に加え、ナショナルブランドよりも数ポイント高い粗利率が、会社の利益体質を改善。近年の物価高の環境下で「価格と品質の両立」を求める消費者心理を的確にとらえ、中間決算(2026年2月期)では、売上は前年比プラス11.7%の5907億円と成長を牽引しています。
さらに、ドラッグストアやディスカウントスーパーなどグループ内の販路を横断的に活かすことで規模効果を発揮。PB比率の上昇→収益性向上→さらなる投資&商品改善、というグループ内の好循環が回り始めたのです。
株価に火をつけた株式分割とライバル
そうした状況の中、今年9月の株式分割(1株→3株)により最低投資金額が引き下げられたことで、NISA経由での個人投資家の資金がイオン株に流入しました。
タイミングよく発表された中間決算では、売上高が前年比3.8%の増加だったのに対し、営業利益は前年比19.8%の伸び。アッと驚くほど収益性の向上が鮮明になりました。こうしてイオンは「優待狙いで保有する株」から「成長性を評価される株」へと明確に立ち位置を変えたのでした。
■セブン&アイとの対比も評価を後押し
さらに、ライバルであるセブン&アイ・ホールディングス<3382>との比較も、イオンの株価評価を押し上げました。
10月に発表された中間決算は両社とも増益でしたが、その内容は対照的です。セブン&アイは、海外コンビニにおけるガソリン単価の下落などで減収ながらも、改革やコスト面の影響で利益は増加。対してイオンは、GMSの大幅改善とPB拡販という自力成長が中心です。
市場は「何によって利益が生まれているか」を極めて重視します。その意味で、「利益の質」の違いからイオンに軍配が上がったのです。

高まる期待はどこまで続くか
現在、イオンの予想PER(株価収益率)は150倍を超えています(2025年11月12日時点)。小売業の平均(20〜30倍)を大きく超える水準は、未来への期待の裏返しでもあります。期待が裏切られれば、調整のリスクも避けられません。
それでも重要なのは、かつて「優待株」としか見られていなかったイオンが、成長を試される銘柄へと評価軸を変えた事実でしょう。いま、株式市場がイオンに問うのはただひとつ──「小売業を超えて、真の生活圏プラットフォーム企業へ進化できるか?」。
その答えは、これからの決算と現場に表れます。生活の中でその変化を体感しながら、中長期で見守る価値のある企業へ。イオンはその途上にあります。
[筆者]
岡田禎子(おかだ・さちこ)/個人投資家、ファイナンシャル・プランナー
証券会社、資産運用会社を経て、ファイナンシャル・プランナーとして独立。資産運用の観点から「投資は面白い」をモットーに、投資の素晴らしさ、楽しさを一人でも多くの人に伝えられるよう活動中。個人投資家としては20年以上の経験があり、特に個別株投資については特別な思い入れがある。さまざまなメディアに執筆するほか、セミナー講師も務める。日本証券アナリスト協会検定会員(CMA)、ファイナンシャル・プランナー(CFP)。
note:https://note.com/okapirecipe_555
岡田禎子(個人投資家、ファイナンシャル・プランナー)