日立【6501】株価、上場来高値更新のその後は? 決算快走の裏で進む「AI巨頭」エヌビディア、オープンAIとの協業戦略の狙いとは

日立【6501】株価、上場来高値更新のその後は? 決算快走の裏で進む「AI巨頭」エヌビディア、オープンAIとの協業戦略の狙いとは
決算で一時11%高 株主の8割は機関投資家
日立製作所の株価上昇が再加速しています。2024年末までの2年間でプラス194.2%(2.9倍)と大幅に値上がりしたものの、25年に入ってからは停滞していました。
しかし、同年10月に今期(26年3月期)の中間決算を公表すると、株価は急騰します。翌営業日に一時11.9%高となる5555円まで上昇し、上場来高値を更新しました。もっとも、その後は市場心理の悪化などから調整し、年初来の上昇率はプラス23.8%と、日経平均株価(同プラス24.9%)並みに落ち着いています。
【日立製作所の株価チャート(過去5年間)】
・株価:4875円(25年11月20日終値)

出所:TradingView
日立製作所はJPX総研が算出する「JPXプライム150指数」に採用されています。採用理由はPBR(株価純資産倍率)基準、つまり投資家の支持が高く、純資産に対してよく買われていることが評価された格好です。同社の株式は外国法人等や国内金融機関が8割超を握っており、国内外の機関投資家からも期待されている様子がうかがえます。
日立製作所は、なぜ投資家から支持されているのでしょうか。同社の実力に迫ります。
重電とITのハイブリッド企業 エヌビディアとの協業でAI強化
日立製作所は大手の総合電機メーカーです。総合電機は、三菱電機や富士電機のような重電系、日本電気(NEC)や富士通のようなIT系に大きく分かれますが、日立製作所はその双方に強みがあります。
重電型の主力が送配電事業です。市場シェアは高く、変圧器や開閉装置といった各種機器およびサービスで世界首位に位置します。特に高圧直流送電システムは、既設ベースでシェア50%超と、圧倒的な優位性を持ちます。
ITは金融機関や公官庁、交通や通信といったインフラ向けが中心です。システムの開発や保守といったサービスを、関連機器も含め包括的に提供します。
近年は24年3月に開始した米エヌビディアとの協業が話題です。同社の製品や技術を活用し、同年9月に鉄道向けAIシステム「エイチマックス」を開発しました。エイチマックスは鉄道以外の産業向けにも応用が進んでいます。25年6月には、エヌビディア主導のAIシステム開発プログラムに日系企業として初めて参画しました。
【セグメント情報(25年3月期、26年3月期のセグメント変更後)】

※DSS…デジタルシステム&サービス、CI…コネクティブインダストリーズ
※従来のGEM(グリーンエナジー&モビリティ)はエナジーとモビリティに分割、日立パワーソリューションズはCIに移管
※調整後EBITA…調整後営業利益(売上収益-売上原価-販管費)に買収に伴う無形資産等の償却費を足し戻したもの
出所:日立製作所 決算説明会資料
業績はおおむね良好です。日立製作所はリーマンショック時に巨額損失を計上して以来、構造改革に取り組んできました。事業の切り離しなどの影響から売り上げは停滞傾向ですが、利益は改善が進んでいます。

出所:日立製作所 決算短信より著者作成
事業再編に転換、投資を強化 エナジー事業に1.4兆円、M&Aも加速
日立製作所は、先述のとおり構造改革を進めてきました。事業の切り出しは現在も進行中で、24年には空調事業の売却を、25年11月には日立建機のグループ除外を決定しています。
一方、投資を強めている領域もあります。代表的なものがエナジー事業です。20年度~27年度で最大90億ドル(1ドル=155.5円で1兆3995億円)超のグローバル投資を推進しており、25年9月には米国で送配電機器の生産能力強化に向け10億ドル(同1555億円)の投資を表明しました。
さらに、同年10月には米商務省と覚書を締結します。内容には米国における送配電設備の強化や、小型原子炉の建設などが盛り込まれました。AIの普及からデータセンターは増設の傾向で、電力インフラの需要は高まっており、日立製作所の収益機会に結び付いています。
M&Aも積極的です。主なものが21年の米IT大手グローバルロジックの買収で、買収額は当時の為替(1ドル=108円)で9180億円にも上りました。買収後、グローバルロジックは大きく成長しており、単体の売り上げは25年3月期に3017億円に達しています。3年間で2.7倍の急拡大で、IT事業の成長をけん引しています。
また、24年に仏タレス社から鉄道信号システム事業を2822億円で買収したほか、25年1月にはエネルギー産業向け高圧モーターの米ジョリエットを取得しました。さらに、同年9月にはデータ・AIサービスの独シンバートの買収を決定しています。
このように、事業の売却を中心に進めてきた構造改革は、一転して新規の投資も目立ってきました。日立製作所の「選択と集中」が加速しています。
オープンAIとも協業を開始 注力のデータセンター事業は花開くか
日立製作所の「選択と集中」で注目したいのがデータセンター事業への取り組みです。同社は25年10月、AIの有力企業であるエヌビディアやオープンAIとの協業を相次いで発表しました。
エヌビディアとの協業はデータセンター向け電源です。エヌビディアは、次世代のAIデータセンター向けに直流電源インフラの構築を推進しています。従来の電源システムは想定する計算負荷が小規模で、負荷の大きいAI向けでは課題となっています。この解消を目指すのがエヌビディアの構想です。27年からの移行に向け開発を主導しており、日立製作所も実装を支援すると公表しました。
オープンAIとの提携もデータセンターに関するものです。AIデータセンターの拡大に向け、両社は覚書を締結しました。日立製作所は送配電インフラやデータセンター内の冷却設備やストレージ機器などの提供を、オープンAIはLLM(大規模言語モデル)の提供を検討することで合意します。
日立製作所のエナジー事業は、電力系統における送配電や高圧直流送電といった川上が中心で、データセンターのような電力の消費側となる川下は手薄です。データセンター事業が成長すれば、同社の新しい収益源となるかもしれません。
エナジー・IT好調で見通しを上方修正 為替は保守的
最後に足元の業績です。冒頭のとおり、上場来高値の更新のきっかけとなった今期(26年3月期)の中間決算を解説します。
今期の上期累計の業績は、調整後営業利益で前年同期比25.5%増となりました。第1四半期の同6.8%増から大きく伸びており、投資家に好感されたことが株価の上昇につながったと考えられます。送配電設備の更新や再生可能エネルギーへの接続需要が引き続き好調だったほか、国内ITもDX化やシステム刷新の需要が強く、増益を主導しました。
通期の見通しも上方修正されました。期首予想比で売上収益は2000億円、調整後営業利益は980億円、純利益は400億円の引き上げです。戦略投資の増額を見込むものの、業績の拡大でカバーするほか、トランプ関税影響の緩和を織り込みました。
【日立製作所の業績予想(26年3月期)】
・売上収益:10兆3000億円(+5.3%)
・調整後営業利益:1兆1030億円(+13.5%)
・調整後EBITA:1兆2100億円(+11.7%)
・純利益:7500億円(+21.8%)
※()は前期比
※調整後営業利益…売上収益から売上原価および販管費を減算したもの
※調整後EBITA…調整後営業利益に買収に伴う無形資産等の償却費を足し戻したもの
※同第2四半期時点における同社の予想
出所:日立製作所 決算短信
なお、上記の見通しは為替の前提がやや保守的です。対米ドルで145円の想定で、足元の155.5円前後より10円以上の円高水準で算出されています(25年11月19日17時)。日立製作所によると、1円の円安は調整後EBITAを8億円押し上げるとしています。円安が続けば、業績のさらなる上振れもあるでしょう。第3四半期決算は26年1月下旬~2月初旬に公表される予定です。
若山 卓也/金融ライター
証券会社で個人向け営業を経験し、その後ファイナンシャルプランナーとして独立。金融商品仲介業(IFA)および保険募集人に登録し、金融商品の販売も行う。2017年から金融系ライターとして活動。AFP、証券外務員一種、プライベートバンキング・コーディネーター。
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