「エヌビディア3兄弟」に惑わされてはいけない、日経平均の5万円超え。“スター選手型”指数の宿命とは?

2025年10月27日、東京の証券会社の店頭。

  • 日経平均株価は高市早苗政権が10月に誕生して以来、最高値圏内の5万円前後を推移している。
  • この高騰に大きく寄与したのが、高株価組であるスター企業、いわゆる”エヌビディア3兄弟”だ。
  • その一方、TOPIXも伸びているはいるが、日経平均と比較してかなり控えめ。その理由について深堀りしていく。

日本の株式市場では、毎日のように「今日の"日経平均株価"は~」というニュースが流れている。しかし、実際に専門家や機関投資家が日本株を分析するとき、より重視される指標として挙げられるのは、"TOPIX(東証株価指数)"だ。両者とも「日本株の代表指数」として語られるが、仕組みや動き方は異なる。

では、2つの指数のうち、どちらを見ればよいのか? こうした疑問を抱く投資家は多く、筆者も株式投資を始めたばかりの方から質問を受けることがある。

特に今年10月には、両指数の違いが一段と鮮明になった。日経平均株価が大きく上昇した一方、TOPIXは相対的に落ち着いた動きにとどまり、2つの指数の“見え方”のギャップが大きくなった(図表1)。

図表1:日経平均株価とTOPIX

出所:Bloomberg

なぜそのような現象が起こったのか。その中心にいたのが、いわゆる”エヌビディア3兄弟”と呼ばれる日本株である。

エヌビディア3兄弟とは、AIブームの追い風を受けて株価が急上昇したソフトバンクグループ、東京エレクトロン、アドバンテストの3社を指す。いずれもエヌビディアと強い関係を持ち、生成AI関連のニュースが出るたびに株価が動く銘柄である。

  • ソフトバンクグループ:エヌビディアなどのAI関連企業に投資する巨大テック投資企業
  • 東京エレクトロン:エヌビディア製チップを作るための装置を供給
  • アドバンテスト:エヌビディア製チップを最終検査するテスト装置のトップ企業

2024年以降、これら3社の株価が大きく上昇し、日経平均の上昇を主導した。このころから、エヌビディア3兄弟という呼称が使われ始めたようだ。

以下では、このエヌビディア3兄弟を事例として、日経平均とTOPIXの基本的な違いについて整理してみよう。

日経平均株価は、“スター選手型”指数

日経平均株価とは、東証上場企業のうち225銘柄を対象に、"株価"の平均で算出される指数である。ここで留意したいのは、”時価総額”ではなく"株価”であるという点だ。つまり、これは一般的に「株価加重平均型」と言われる指数で、最大の特徴は"株価の高い銘柄ほど指数に強く影響する"ことにある。

たとえば、株価5万円の銘柄が1%動くと、株価5000円の銘柄が1%動くよりも10倍、日経平均を動かす。だが、企業の大きさ(時価総額)は関係がない。実際の指数計算にあたっては調整係数等が使われるものの、“高株価組がスター選手として目立つ”構造には変わらない。

ここに、エヌビディア3兄弟の特性が重なった。ソフトバンクグループや東京エレクトロン、アドバンテストの株価は数万円台と高く、AIブームに関連するニュースが出るたびに大きく動く。それを受けて、日経平均の変動も大きくなる。今年10月のニュースでは「日経平均が力強く上昇」と報じられたこともあったが、実際には3銘柄の寄与が大きい。残りの222銘柄の動きは控えめだ(図表2)。

図表2:日経平均株価・エヌビディア3兄弟とその他222銘柄

出所:Bloomberg(※注 分解は筆者の試算による)

TOPIXは、市場全体を映す“総合力型”指数

一方、TOPIXは東証プライム市場に上場するすべての銘柄(約1670銘柄)を対象とし、"時価総額"に応じて指数を算出する。こちらは、いわゆる「時価総額加重型」で、"会社の規模が大きいほど指数に影響し、小さいほど影響は小さい"。この仕組みのため、特定の銘柄だけが急騰しても、TOPIX全体を大きく揺らしにくいのだ。

日本の投資家ならば、S&P500やオルカン型のファンドに、資産を集中している人も多いだろう。これらがベンチマークする指数(オルカン型の場合、MSCI ACWI)も「時価総額加重型」となる。

実際、株価加重平均型の日経平均株価は、上位10銘柄だけで40%強のウェイトを占める。その一方、時価総額加重型であるTOPIXの場合は、上位10銘柄だけで20%強に過ぎない。エヌビディア3兄弟についても、日経平均ではウェイト上位ベスト4に3社全てがランクインするが、TOPIXではベスト10の中にソフトバンクグループが含まれるだけである。

図表2と同様に、TOPIXをエヌビディア3兄弟とその他に分解して比較すると、TOPIX全体の動きと“その他”の動きはあまり変わらない。つまり、3兄弟の寄与度は日経平均ほど大きくないのだ(図表3)。

図表3:TOPIX・エヌビディア3兄弟とその他

出所:Bloomberg(※注 分解は筆者の試算による)

この点こそ、TOPIXが“日本株全体の姿”を知るのに向いていると言われる理由である。年金基金やプロの運用会社がTOPIXを基準にするのも、こうした安定性ゆえであろう。

投資初心者はどう使い分ければよいか?

日経平均とTOPIXが違う理由は、「何が指数を動かすか」の違いにある。

  • 今どんなテーマや人気銘柄で相場が動いているかを知りたい → 日経平均
  • 日本株全体が強いか弱いかを知りたい → TOPIX

筆者の好きな野球で例えれば、

  • 日経平均は、例えば二刀流の大谷翔平選手のようなスターを取り上げる番組
  • TOPIXは、スターだけでなくチーム全体の動向を取り上げる番組

スターの活躍は派手でニュースでも取り上げられやすい。だが、チーム全体の強さや今度の有望株などを知りたい場合には、TOPIXのほうが向いている面があると言えよう。

エヌビディア3兄弟が日経平均を大きく動かしたことが注目される一方で、TOPIXをみれば、AIブームの影響を受けて、エヌビディア3兄弟以外にも株価が堅調な企業があることに気づく。2つの指数を見比べることで、市場の“話題”と“実態”の両方をつかむことができる。

2つの指数の特徴を理解し、相場の“スポットライト”と“舞台全体の底力”の両方を見ていくことが、日本株への投資を考えるうえで重要ではないか。

※注:本稿のデータはすべて11月21日時点まで