ピムコ、「米国売り」論を退け米国債投資で大きな成果-正念場乗り切る

(ブルームバーグ): 米パシフィック・インベストメント・マネジメント(PIMCO)は今年4月から5月にかけて、悪材料に見舞われた。保有する5-10年物の米国債とモーゲージ債が大きく下落した。

  きっかけは、まずトランプ米大統領の「解放の日」関税、続いて広がった「米国売り」論の波だった。

  顧客資産2兆2000億ドル(約341兆円)を託されているピムコの投資委員会は、カリフォルニア州ニューポートビーチとロンドンの拠点に集まり、損失状況の評価に追われた。

  数週間にわたり、日曜日も含めて、最高投資責任者(CIO)のダニエル・アイバシン氏を中心に、長時間にわたり情報収集や顧客との連絡、利回り急上昇を受けた対応策の議論を続けた。

  低調な成績が続く中、今回の局面は同社にとって一つの正念場となった。ピムコは結局、米国債の保有を維持しただけでなく、売りが広がる局面で積み増し、モーゲージ債も買い増した。この判断により、同社は今年の米国債券運用会社で先頭に躍り出ることになった。

ピムコ、米アクティブ債券ファンド大手10本でトップリターン

  米国債市場が2020年以来の好調な年となる中、アクティブ運用の債券ファンドとして最大の規模を誇るピムコ・インカム・ファンド(運用資産2130億ドル)は10.4%のリターンを上げた。ブルームバーグ米債券総合指数をベンチマークとする競合ファンドのいずれよりも好成績で、少なくとも過去10年で最高のリターンとなる。470億ドルを運用するピムコ・トータル・リターン・ファンドも9.1%の上昇と僅差で続いた。

  インカム・ファンドは、モーニングスター・ダイレクトのデータによると、約300本の同カテゴリーのファンドの中で今年の上位3%に入っており、2017年以降トップ10%から外れていた状況から一転した。

  ピムコの上級幹部は、4月2日にトランプ氏が包括的な関税措置を打ち出したことが転機になったと指摘する。これをきっかけに、米国債市場はここ数年で最も不安定な局面の一つに突入した。

  その週、たまたまアイバシン氏ら上級ポートフォリオマネジャーがロンドンで顧客との面談を重ねており、海外投資家の反応を即座に把握することができた。現地で頻繁に協議し、世界各地の同僚ともタイムゾーンをまたいで電話会議を行った。

  週末までに、ピムコは5-10年物米国債に強気姿勢を維持する方針を決めた。トランプ氏が公約していた関税の影響で、一定の景気減速が生じると見込んで1月から続けていたスタンスだった。

  コア戦略のCIOで、4月上旬の協議に本拠のニューポートビーチから参加したモヒト・ミタル氏は「成長への影響がマイナスとなることは非常に明確だった。消費者と企業の双方に対して、不確実性を大きく高めるからだ」と述べた。

  もっとも、事態がすぐにピムコの思惑通りに進んだわけではなかった。翌週には米国債利回りが急上昇。貿易戦争の激化により、米国債の重要な買い手である海外投資家が米国債を敬遠するとの懸念が一因だった。

  利回りがピークに達したのは5月22日だった。ムーディーズ・レーティングが米国の最上位信用格付けを剥奪(はくだつ)し、米国の債務への懸念が高まった数日後、10年物米国債利回りは数カ月ぶりの高水準となり4.6%を上回った。

米10年債利回り、関税ショックによる売りから持ち直す

  債券を含むあらゆる市場にとって不安定な時期だった。モーニングスター・ダイレクトによると、4月にはピムコ・インカム・ファンドから20億ドルの資金が流出し、23年10月以来初の純流出となった。ブルームバーグの指数によれば、5月には、米国の債券市場全体が0.7%下落し、今年最悪の月となった。

  この期間、ピムコの投資委員会は通常の週3回ではなく毎日協議を重ねた。海外投資家が本当に米国債を売り始めているのかを見極めるため、顧客動向のモニタリングも強化した。

  ミタル氏は「投資家が必ずしも米国債を一斉に売却しようとしているわけではないということに気付いた」と言う。むしろ、「ヘッジ付きで米資産を購入しようとする関心がやや高まっている」ことが見られたという。

  こうした見立てが、利回りが大きく変動する局面で5-10年物の米国債を積み増す判断に自信を与えた。ボラティリティーの高まりで割安となったモーゲージ債への投資比率も引き上げた。

  同時に、30年ゾーンの超長期債については一貫して弱気見通しを維持。超長期債がアンダーパフォームしたため、この戦略も奏功した。

  ピムコはその後、こうしたポジションの一部を縮小し、2026年により良好なリターンが見込めると判断する他の海外債券市場に資金を振り向けているが、変動時に5-10年物米国債への投資を継続する判断は、今年の好成績を支える柱となった。

Pimco Income Tops Large Rivals Across Multiyear Spans

  今年、堅調な成績を上げたのはピムコだけではない。ブルームバーグが12月2日までにまとめたデータによると、運用資産10億ドル以上でブルームバーグ債券総合指数に連動するアクティブ運用の債券ファンド175本のうち、90本が今年の市場全体のリターン(7%強)に少なくとも並んだ。

  それでも、ピムコは規模の大きいファンドの中で、ポジションのタイミングと組み合わせが際立って優れていた。

  ミタル氏によると、同社は現在、より良い投資機会が米国以外の地域にあるとみている。過去1-2カ月で米国の金利エクスポージャーを減らし、日本、オーストラリア、英国で増やしたという。

原題:Pimco Rejected ‘Sell America’ Talk and Won Big With US Bond Bet(抜粋)

--取材協力:Ye Xie、Andrew Harrer、Ezra Fieser.

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