全世界株式【2025最安は逆転勝ちでコレ】eMAXIS Slimに「オルカン値下げしますか」と聞いたら/新NISA応援

新NISAの投資信託で一番人気の「全世界株式」投資信託。見た目の信託報酬とは別にかかる手数料も含め、2025年の「コスト最安」が判明した。勝者は?【本記事はアエラ増刊「AERA Money 2025冬号」から抜粋しています】
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新NISAの定番人気は「全世界株式」のインデックス投資信託(以下、投信)だ。投信とは株式や債券など「金融商品の詰め合わせパック」。主要ネット証券では100円から買える。
インデックス投信は、対象の指数(インデックス)と同じ値動きをするように設計されている。
■ほったらかしOK
主要ネット証券5社の新NISA口座で人気なのが、全世界株式の指数(MSCI AWCI)と同じ値動きをするインデックス投信である。SBI証券投資情報部シニア・ファンドアナリストの川上雅人さんに聞いた。
「全世界株式の投信は、世界中の株式(47の国と地域、約2500銘柄)に分散投資できます。
強い国の強い株(時価総額の大きい企業の株式)を自動的に多く買う仕組みなので、今は米国株が65%前後入っています。2番目に多いのが日本株で5%前後。
どこの国の株に投資するかを選ぶ必要すらなく、ラクです」
全世界株式の投信は「ほったらかし投資」にぴったりで初心者にもかなりおすすめである。
全世界株式のインデックス投信を1万円分買うと、そのうち最大の480円分がエヌビディア、410円分がアップル。日本株ではトヨタ自動車が約20円といった具合だ(2025年9月30日現在、一般的な全世界株式投信の場合)。
対象の指数が同じインデックス投信ならコストが安いほうがいい。全世界株式のインデックス投信の中で運用コストが最安水準のものは、次の3本でほぼ決着している。
●「eMAXIS Slim 全世界株式(オール・カントリー)」(以下、オルカン)…運用/三菱UFJアセットマネジメント
●「はじめてのNISA・全世界株式インデックス(オール・カントリー)」(以下、はじめてのNISA)…運用/野村アセットマネジメント
●「楽天・プラス・オールカントリー株式インデックス・ファンド」(以下、楽天・プラス)…運用/楽天投信投資顧問

投信を運用することで金融機関が得ている儲けが「信託報酬」。プロに運用してもらう「お礼」のようなコストだ。
オルカン、はじめてのNISA、楽天・プラスの信託報酬はいずれも年率0.05%台と激安。具体的には、オルカンとはじめてのNISAが0.05775%(年率、税込み、上限/以下同)。楽天プラスは0.0561%。
オルカンの「eMAXIS Slim」シリーズでは純資産総額が増えるほど信託報酬を引き下げる方式を採用している。表の2025年10月21日現在の純資産総額(7兆9664億円)で計算すると、信託報酬は0.05755%。非常に細かい違いだが、本企画は「小数点以下の数字を競う3社」の話なので示した。
「投信の信託報酬は『ファンド運営に対する関係者への支払い+運用会社の取り分はこれぐらい』という年率を示したものです。
また、投信の運用コストは信託報酬だけではありません。株式の保管費用や監査費用などの『その他コスト』もプラスした『総経費率』がまず大切。
さらに総経費率に、株式を売り買いするときにかかった売買手数料、税金も加えた『合計』のコストも参考にしてください」
本記事では川上さんの言う「合計」を「トータルコスト」と呼ぶ。トータルコストは1年間の結果を開示した「運用報告書」を見ないとわからない。運用報告書は企業でいえば決算書のようなものだ。
■全世界株式の最安
さて、オルカン、はじめてのNISA、楽天・プラスの2025年度の運用報告書が出そろったので比較する。端的な結果はこちら。
【総経費率で最安は?】
●はじめてのNISA…0.070%
●楽天・プラス…0.075%
●オルカン…0.07736%
【トータルコストで最安は?】
●はじめてのNISA…0.080%
●オルカン…0.09236%
●楽天・プラス…0.118%
総経費率でもトータルコストでも、「はじめてのNISA・全世界株式インデックス(オール・カントリー)」が最安だった。
この投信を運用する野村アセットマネジメントのインデックスソリューション部マネージャー・池田奈央さんに取材した。

「株式の売買頻度の調整や先物取引の活用をはじめ、売買で生じるコストを圧縮するノウハウを駆使して対応いたしました」
はじめてのNISAの勝因は、その他コストの保管費用が0.009%と他2本より安く、トータルコストに加算される株式の売買手数料が2024年度の年率換算0.003%から0.002%に低下したことなど。
「株式の売買手数料や税金を低く抑えられたのは、安定した資金流入が続いたことによりマザーファンドの残高が拡大したためです。これにより日々の資金フローの影響が逓減され、売買回転率を抑えられました。売買取引を仲介するブローカーも適切に選ぶことができました」
一方の楽天・プラス。信託報酬は最安だが、総経費率では2番手、トータルコストでは株式の売買手数料や税金が他の2本よりも高くなった。なぜ?
「当ファンドに組み入れる『楽天・エマージング株式インデックス・マザーファンド』において、残高が一定程度まで拡大してきたことから、組み入れていたETFを順次、現物株式に切り替えたことで若干コストが高くなったと考えております」(楽天投信投資顧問代表取締役社長/東 眞之さん)
ここからは本誌の推測。運用開始2期目で、楽天・プラスの純資産総額は第1期交付運用報告書時点の1852億円から4232億円に急増した。2025年10月21日現在は5255億円である。
とんでもない人気なわけだが、それにより売買回転率がかさんだことも株式の税金などの増加につながったのではないか。
それでも、楽天・プラスのトータルコストは2024年度の0.141%(第1期は変則決算のため年率換算すると約0.2%)から0.118%に大幅低下。コスト削減努力は評価できる。
■オルカンはケタ違い
純資産総額約8兆円と全世界株式では最大規模のオルカン。総経費率は0.07736%、トータルコストは0.09236%だった。
その他コストの保管費用が他の2社より少し高いが、理由は?
「継続的に大規模な資金流入があることで、売買のつど1銘柄ごとに発生する費用等がかさんでいることが、保管費用(0.018%)の理由と考えられます。
先物取引の活用などで運用効率を高め、海外保管銀行の費用見直しを行うなど、運用・管理面でも引き続きコスト削減に取り組んでまいります」(三菱UFJアセットマネジメント商品開発部/犬伏 和さん)

オルカンは毎月のように1900億円規模の資金が流入しており(2024年10月~2025年9月の平均純流入額は1876億円/1カ月当たり)、ケタが違う。
オルカンの2024年度の保管費用は0.027%だった。2025年度は0.018%なので3割以上も下がっている。
気になる質問。オルカンが属する「eMAXIS Slim」シリーズでは業界最低水準の運用コストを目指すと宣言している。
今回の結果を受けて、信託報酬の引き下げはありますか?
「競合の信託報酬、総経費率等のコストを総合的に勘案し、現時点で引き下げは予定していません。
すべての運用コストは最終的にはトータルリターンに反映されます。本件でいうと他社ファンドと比較して差はほぼないと考えます」
そう。3本とも激安コストなので、比べるべきは「コストも加味した結果のリターン」だ。オルカンがコストを現状維持するのも当然だろう。
同じ全世界株式で、新NISAのつみたて投資枠対象の投信には信託報酬が0.5%台のものも(上の表参照)。
今回の3本のような激安水準であればコストの差は無視してもいいと思う。
取材・文/中島晶子(AERA編集部)、安住拓哉
川上雅人/SBI証券 投資情報部 シニア・ファンドアナリスト。慶應義塾大学卒業後、丸三証券(日本株アナリスト)、大手運用会社、国内証券会社を経て2022年から現職
池田奈央/野村アセットマネジメント インデックスソリューション部 マネージャー。投資信託の販売会社へのサポート業務を経て、現在は商品企画立案、リテール向け情報提供など。2019年より現職

編集/綾小路麗香、伊藤忍
『AERA Money 2025冬号』から抜粋
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